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ドイツ遠征記

押忍。早稲田準支部の田中です。7月9日から13日までドイツ空道セミナー、ヨーロッパ交流戦に参加させていただきました。

7月9日

午後4時半ごろ成田空港に到着。平安先輩と合流しました。そのとき平安先輩に自分が無差別級にエントリーされていることを初めて知らされました(実際には一階級上の250で出場しました)。
じつはこの遠征前に諸事情あって怪我をしていたり、風邪で体調を崩していた自分は今回の遠征に大きな不安を抱いており、この知らせを聞いて出発前からさらに後悔の念が強くなりました。しかし、今回の遠征は自分と平安先輩だけでドイツまでたどり着かなければならず、落ち込んでいる時間はありませんでした。事務局長から頂いた乗り換えマニュアルを何度も確認しながら空港で手続きを進め、無事に香港行きの飛行機に乗ることができました。
飛行機の中で格闘家として非常に尊敬していた平安先輩と様々な話をすることができ、自分自身の考えを深めるいい機会になりました。香港に到着後、また何度も乗り換えマニュアルをカバンから取り出しながら特に問題もなくフランクフルト行きの飛行機に乗ることができました。この飛行機の冷房が効きすぎていたようで、風邪気味の自分にとっては十時間以上辛抱し続けなければなりませんでした。

7月10日

映画を見ながら時間が過ぎるのをひたすら待っていると、なんとかフランクフルトにつくことができました。
入管のきれいなお姉さんに旅の目的、宿泊先、期間、空道のルール、などかなり細かく英語で聞かれたのでかなり時間がかかりました。しかし、最後になぜそんなに質問するのか、と聞くと、暇だったのと面白そうだったから、と笑顔で答えられました。海外ではこのようなちょっとした交流も新鮮で楽しく感じられます。

空港からタクシーを捕まえて、ホテルの地図を見せました。このタクシーは相当なスピードで走っていたので、周りの車を次々と追い越し、すぐに都心から離れた長閑な場所にある宿舎につくことができました(日本と単位が違うかもしれませんが平均150くらい出ていました)。宿舎では事務局長が朝早くから自分たちを待っていてくださり、スムーズに自分たちの部屋に入ることができました。

ようやく現地にしっかりとたどり着けるかという不安から解放されました。朝食を食べる際に先に到着されていた東先生たち、UAEからいらっしゃった今松さんと合流し、やはり自分が年齢的に一番下っ端なので粗相がないように過ごさないといけないと再確認しました。
外国宿舎の朝食にでてきたいろんな種類のハムはどれもおいしかったのですが、体調不良に加えてドイツについた途端試合というものをさらに強く意識し始め、あまり食欲がわきませんでした。仮眠を取り、昼食を取りにマインツという町にタクシーで向かいました。中華やベトナム、タイ料理などやたらと守備範囲の広いアジア料理屋で食事をしましたが、ここでもあまり食べることができませんでした。その際に炭酸入りミネラルウォーターを出されました。ドイツではこのような水が普通なのか、と初めは抵抗感を持っていましたが、滞在中に何度も飲んでいるうちに普通の水よりもおいしく感じられるようになりました。

食事を終えてホテルにもどり、午後のセミナーに向けて荷物の準備をしました。セミナー、試合の会場となる体育館はホテルから近く早めについていたブルガリアの塾生二人の車に同乗させてもらいました。彼らはうち一人は日本ではほとんど見ることないくらいの体のサイズで相撲取りのようでしたが、愛嬌があるので威圧感はそれほどありませんでした。琴欧州はやはりブルガリアでも有名だといっていました。
セミナーの会場では次第に人が集まってきており最終的には30人くらいになりました。

セミナーではまず基本稽古、インストラクターによる技の指導、ルール説明という流れで行われました。自分は基本の際に初級〜中級者たちの指導を手伝いましたが、日本でもクラスを指導するという経験がなかったので正直戸惑うところが多かったです。
見たところほかの競技の経験者なども混ざっていてレベルはばらばらでした。技の指導に入ると暑さと疲れなどによって集中力を切らしている人が増えてきているように感じたので、指導を通じて、できるだけ様々な人とコミュニケーションをとるように心がけました。このときになぜかルクセンブルクの支部の人たちと特に仲がよくなりました。ルール説明のときは自分自身もかなり集中力が下がっていたので反省しなければなりません。

何とかセミナーを終えるとドイツ支部長のトーマスとともに街に食事に行きレストランに入りました。屋外の席に座りましたがドイツの夜は八時九時くらいになっても日本の夕方くらいの明るさなのでかなり驚きました。なにやら店の中が盛り上がっているので聞いてみるとサッカーワールドカップの三位決定戦でドイツの試合が行われていました。来る前に決勝までドイツが勝ちあがっていたら現地で非常に貴重な体験をできると期待していましたが、三位決定戦は得点シーン以外それほど盛り上がっていないように感じました。やはり優勝できなかったのが残念だったのでしょうか。

この店の料理はジャガイモ、肉、魚などがふんだんに使われており非常に自分の口に合いそうでしが、やはりあまりのどを通りませんでした。タワーと呼ばれるドイツ独特のビールのピッチャーは壮観でしたがこちらも試合前なので一口も飲みませんでした。
トーマスと話していると彼が相当な格闘技ファンであることが判明してかなり話が弾みました。彼はセミナーの際も率先して会場作りを行い、その後も観光などの際もかなり気を使わせたと思いますが、いやな顔ひとつせず対応してくれて非常にしっかりしたナイスガイでした。
食事の途中、試合を明日に控えるトーマス、今松さん、自分、平安先輩は早めに宿舎に戻り休むことになりました。ホテルではレストランスペースにスペイン、フランスなどの塾生が集まりサッカーを見て大いに盛り上がっており、自分たちも一緒に試合を見ることになりました。これはドイツ滞在中を通してもそうだったのですがサッカー日本代表の本田選手の活躍に関してはかなり話をする機会がありました(次に評価が高かったのは川島選手でした)。サッカーを見終えると明日に備えてシャワーを浴びて早く寝ることにしました。

7月11日

いよいよ試合当日を迎えました。
基本的に空いた時間は休むように努めていたので体調はかなり回復していましが、やはり試合前の緊張のせいかそれほど朝食は食べられませんでした。昨日と同じようにブルガリアの人の車に乗せてもらい会場に向かいました。

昨日と比べると参加者は減っていましたが、フランスチームなどアップの段階で非常にいい動きをしていたので、それを見て気が引き締まりました。試合前に昨日仲良くなったルクセンブルクの塾生から、試合が終わったら道着に漢字で名前書いてくれ、と頼まれたので負けたらかっこつかないなという気持ちがさらに強まりました。
イギリスチームが遅刻したということで、試合順が変わり最初は今松さん、平安先輩、トーマスのセコンドにつきました。
平安先輩は初戦、二回戦を危なげなく勝ち上がり、今松さんも始めての試合ということでしたが果敢に前に出て戦っていました。トーマスは初試合、セミナーの主催者と言う立場でプレッシャーなども相当なものがあったと思いますがパワフルなグラップリング、強いハートを武器に非常にいい試合をしていました。特に二試合目は黄帯ですが体格も大きくかなり打撃を強い相手にかなり厳しい勝負になりましたが気持ちは折れずなんとか延長に持ち込みました。何かセコンドとしてできないかと思い、インターバルの際に拙い英語で自分なりにアドバイスをしました。延長が始まると、得意のグラップリング中心に勝負をし、一瞬の隙をつきマウントから腕十字で逆転勝利をおさめ、この日一番の拍手を会場全体から受けていました。

自分の試合は初戦、二回戦はイギリスの選手が相手でした。多少の緊張はありましたが動きも悪くなく無難に寝技で仕留めることができました。
イギリスの選手は試合開始直前に促されて準備を始めるなど、モチベーションが低いように感じられたのが少し残念でした。それとも文化的な問題なのでしょうか。
決勝の相手は初戦から圧倒的な内容で勝ち上がってきたフランスの選手が相手でした。相手はサイズも大きく、組技など全体的なレベルが高い選手だったのでかなり強敵でしたが、試合には意外と落ち着いて臨むことができました。本戦はお互い警戒して手がでず、延長戦は寝技で効果をとったものの手数が少なく投げられたりしたので再延長に突入しました。再延長では覚悟を決めて、ある程度打ち合うという作戦に変え、自分のパンチが運よくカウンターで入り相手の負傷でなんとか勝つことができました。
試合後は参加者から記念撮影を求められたり、サインっぽいものを求められたりして、まるですごい人かのように扱われたりして戸惑いました。ただ、フランスのチーム、重量級などは良い選手が多く、これからの日本はロシアだけでなく様々な国を警戒する必要があると思いました。

試合後は体育館の外でパーティーを行い各国の塾生と交流を深めました。このときの料理も非常に豪華で美味しそうだったのですが、自分は試合前後は体があまり食事を受け付けないのでせっかくの食事も十分楽しむことができませんでした。
そのかわり、ルクセンブルクチームや、ドイツのイラン人塾生などと漫画や格闘技などについて楽しく会話することができました。とくに「はじめの一歩」や「るろうに剣心」は人気があるようで各キャラクターの必殺技を日本人の自分よりも詳しく覚えており熱く語っていました。海外の塾生にとって小川先輩は雲の上の存在のようで最初は気軽に話しかけられないようでしたが、漫画という話題をきっかけにすっかり打ち解けていました。日本のソフトパワーの強みを改めて実感する出来事でした。
しかし一方で、危機感のようなものも感じました。ほとんどのヨーロッパの人々は自分の母国語以外に英語をしゃべることができ、ルクセンブルクにいたっては英語、フランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語を話せるのが普通ということでした。もちろん言語として似ていて習得しやすいということもありますが、このような現状を見ると、日本人もコミュニケーションのツールとして英語を持っていないといけないと痛感しました。

パーティーが終わるといったん宿舎に戻りマインツに町に行くことになりました。自分は佐藤先輩、小川先輩、由美子さん、平安先輩、トーマスと行動をともにし、初めて観光らしいことができました。
マインツの町は適度に歴史的な建物が残っており、個人的には大変気に入りました。町を普通に歩いているだけでグーテンベルグの銅像や大聖堂を見かけることができドイツという国の歴史の深さに改めて驚かされました。
トーマスの案内で町中を歩き回りましたが、ちょっとしたトラブルなどが起きたりしましたが、それらも非常に貴重な経験になり、とりあえずまたドイツに来てみたいという気持ちが強まりました。
その後バーのような場所でワールドカップ決勝を見ながら遅い夕食をとりました。佐藤先輩に隣に座っていたドイツ人の男性が話しかけてきたので、いろいろ話を聞いていると、どうやら日本各地を旅行したことがあり、前回のドイツワールドカップのときもスタジアムで日本のユニフォームを着て応援したとのことでした。この人との話も非常に興味深く、いろいろやり取りをしていたら今回もあまり食事を食べることができませんでした。とりあえず格闘技をやりたくなったらトーマスの所に行くように勧めておきました。
食事中、先輩方やトーマスに今回の自分の試合のアドバイスを聞き今の自分の課題を再確認することができました。その後、明日でトーマスともお別れということで宿舎に戻り、みんなで朝まで飲むことになりました。その際、トーマスに漢字の名前をつけようというという話になり、みんなで考えましたが最終的に「闘魔主」というのに落ち着き、みんな床に就きました。

7月12日

この日はトーマスも加えて朝食を取り、お別れを言った後空港に出発しました。突然飛行機が変わったりして色々慌ただしかったですが何とか乗ることができ、無事日本にたどり着きました。

今回の遠征を振り返ってみると、海外の試合ということで最初はかなり不安がありました。しかし、実際試合をやってみるとそれほど関係ないという感想を持ちました。今回はドイツの食事やビールを楽しむことができなかったので、個人的にまたドイツに行ってみたいと思いました。今回のような機会を与えていただいた皆様、旅先で一緒になった皆様に感謝し、この経験を今後に活かしていきたいと思います。押忍。

田中洋輔(早稲田準支部)

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