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ドイツ遠征記

(編集部注)この文章は「ドイツ遠征速報」として当サイトに掲載したものです。

日本に戻ってから速報というのもおかしいが、使えると謳っていたホテルでインターネットが渡辺支部長のだけは通じたが(?)高橋運営委員長共々全く通じなくて四苦八苦した。町のレストランに出た時にその店の無線ランに繋いでメールをダウンロードするしかなく、帰る日にやっとホテルで繋がって溜めておいた返事を送るのが精々だったのでご勘弁を。詳しくはこれから遠征参加者のレポートを見てもらうとして取り敢えず・・・・。

今回の「第1回欧州交流試合」を含んだドイツ遠征は、来年2月にモスクワで行われる「第一回空道ワールドカップ」のために旧欧州の選手層の実力向上と審判の養成のためだった。

昨年の世界大会打ち上げでヨーロッパの多くの国が「来年はぜひうちでセミナーや大会を!」等と言っていた事もあり企画したのだが、最近のギリシャ危機以来、欧州の経済危機は深刻なようで、ブルガリアが、しかも「資金的にも厳しいので本部の援助の下で」と、2月に名乗りを上げただけだった。

「ヨーロッパ大会」は上記のような意味もあり開催するのは吝かではないが、ブルガリアでは「第1回欧州大会」を既に開催しているので、同じ国で何度もでは組織的成長も図れないので気が乗らなかったのだが、「国からの認証を得る運動も兼ねており、認証されれば国からの支援が受けられるので運営がしやすくなります」と言うので、様々な書類を10種類ほど揃えて送ったりした。

結局、既存の武道団体から空道のルーツを盾に「空道は空手だ」などという、既にルールも技術体系も全くと言って良いほど変わっているのに、スポーツ以上に精神性を重んずる武道団体とも思えない、偏狭な妨害で否認となったのが4月末だった。(それなら柔道と柔術や、ラグビーとアメフトはどうなるんだ!!)

ま、それは何処にでもある新しい事が定着するまでの「生みの苦しみ」だからと、他の国でと考えて、どうせするなら「空道未開の地(笑&失礼?)」でした方が良いと、ドイツに決め要項を送ったのが5月9日。しかし「親の心子知らず」は歴史始まって以来万国共通の真理で、「あんなに言うから」と企画してやったのに、始めは殆ど反応がなく、一応、10ヶ国以上が出揃ったのはなんと!6月末。

所が、日本を発つ前日、大会3日前に「ビザが下りない」と断ってきた国や、果ては隣国のくせに「経済的に厳しいので・・」(って、隣の国だろう???車でも来れるだろうが!!イギリスは8時間、ブルガリアは何と15時間かけて来たんだぞ!!普段はどんな生活してるんだ???)とか、「セミナーに参加すればS 級の審判ライセンスが貰えるのですか?」等とのたまう国(審判ライセンスは段位に相関し、S級は原則5段以上)などが脱落し、結局7カ国の参加となった。ま、世界にはいろんな事情があり、様々な人間がいるから、コッチが善意でしたからと言って、それに正しく応えてくれるとは限らない、ましてやこんな競技をする人間はみな個性が強く(と言えば聞こえが良いが偏屈だから(?)…」とでも達観しないと、“この仕事”、“この業界(?)”はやってられない 泣。

閑話休題。「ドイツで初めてのセミナー」と言うと大抵の人には「エー、今までドイツではしてなかったのですか?」と意外に思われる。フランスが武道大国ということもあり、隣のベルギー同様、もう10年も前から活動しており、その後も周辺国で続々と空道加盟国が増殖中(?)だというのに…と言う所だろうが、よくいえば文化芸術に興味があるフランスと違い、質実剛健を旨とするドイツでは、あまり実利的でないものには関心がないからかもしれない。

今までも何人もの希望者がメールをくれたが、例により支部開設にしろ公開にしろ、実際にセミナーに漕ぎ着けるために、“何十回”ものメールの遣り取りをして行くうちに、「アッチの団体では費用を日本持ちで来てくれるのに・・・」とか「この団体は支部長なら審査なしで直ぐに○段をくれる、と言っている」等々と(だから日本は世界から舐められるんだ!)思惑違いだったりして、ここまで辿り着いた例がなかった。

その中で、昨年の世界大会にオブザーバーとして出席し、「空道」にじかに触れたことで「警察を辞めて、内弟子になりたい!」とまで言い出したThomas Nowara4級に、上記の意図を話したところ、今は警察を辞めて(泣)しかし幸いなことに市の港湾警備関係の仕事に就いた(ホッ!)彼が二つ返事で「頑張ります」と動いてくれ短期間で立派なセミナーが実現したものだ。

とはいっても今は世界中どこでもだろうが、上記の不心得者(国?)以外でも、実際、欧州の経済危機は深刻で「参加したいのですが…」と言いつつ来れなかった国も多く、結局7カ国での開催だった。セミナー当日でも「一体、何人が集まるのか?」という感じだったが、実力急上昇中(後述)のフランスや、ロンドンにライバルが出た事で積極的になった(笑)イギリスから多くの参加者があり、結局30人前後になりそれなりに恰好を付ける事が出来た。

内容はというと空道先進国のロシアでの第2回は別として、「07年 第1回欧州大会(ブルガリア)」や、「08年 イタリア交流大会」などと比べると(勿論、世界大会と比べるならまだまだだが)、選手の技術レベルは格段に向上しており、特に土田支部長率いるフランスや、イタリアとの交流試合を繰り返しているスペインは年々強くなっているのがハッキリと分かり、今までうろ覚えだった選手の名前も強く記憶に残るほどだった。

日本から海外での試合経験を積ませるために連れて行き、しかし当該のクラスが少ないということで、一階級上のクラスで戦ったとは言え、今年の-230優勝の平安孝行にしろ、-240準優勝の田中洋輔にしろ決して余裕で戦ってはいないのを見た時、冷や汗が背筋を伝うのを感じた(それにして暑かったが…)。いつもの言葉の「技では勝ってるのだが…」だけではなくその売り物の技術でも急追されているのを感じた。

平安は-240のスペインのDavid Abellanのジャブを度々貰って「効果」2を取られ(私見では一度のはチョッと軽かったが、終了間際のストレート、主審は取らなかったが十分に「効果」だったから、相手の反則による棄権がなければ「効果」3で負けである)逆に平安のパンチが度々空を切った(これは体力別から気になってるがスパーリング不足からだろう)平安もエンジンが掛かる前に負けたという感じだからだろう、試合後素直に「今回は負けた」と認めていたが…気を引き締めて臨まないと-230や-240クラスなら、とは言えなくなってきている。一方の田中、決勝では-250のYanisu Candwoに得意な投げを度々試みるも投げ切れず、逆に投げられていたが辛うじて、マウントでの「効果」一つで勝ったという所だった。

-270で戦った今回のホストThomas Nowaraも自国での初めての開催ということでかなり練習したのだろう、一階級上の選手と2度戦い勝ちをものにし、敵情視察に来ていた、じゃないが他の流派団体の選手も見に来ていた中での優勝は、ドイツでの空道の今後の発展には大きなアピールになっただろう。しかし、2回戦目は壮絶な打撃の応酬の隙を縫ってのマウントパンチでの作戦勝ちだったが、打撃技術は伝統派の経験20年のGarry Achard(仏6級!!)に一日の長があり、「来年WCにはぜひ参加したい」というから、この選手も今後は要注意の選手だ。

「敵は本能寺」だけではなくなって来ているのだ!! 改めて、「来年のワ−ルドカップ、日本側は本当に性根を据えて取り組まないと大変なことになる」を実感させられた試合だった。

とは言え、[欧州に悪魔(幽霊/妖怪)が出現す る。共産主義という名の悪魔(幽霊/妖怪)が(※)]と大袈裟に気取る訳じゃないが、「空道」は間違いなく世界を席巻しつつあり、昨年は世界大会の為に一段落していたが、年が明けセミナー解禁と同時に、あらゆる国々からの要望が殺到している。“世界大会ショック”で体力別まではその気になれなかったが、4月にはウクライナ、6月香港、今回7月のドイツと続き、8月の上海、9月のイギリス(第3の支部の設立セミナー検討中)、10月ブラジル、11月メキシコと年内は目白押しで、鬼がいようがいまいが(笑)、既に来年も、1月にはイランとインド2月にはエジプト、4月にはルクセンブルグと立て続けにある。

※共産党宣言 Wikipedia

30年かけて植えてきた苗木が、世界各地ですくすくと育ち始めた今、何としてもこれを世界の多くの地域で、地域のどこからも仰ぎ見る事の出来る大樹に育てその豊かな枝葉で、振り掛るあらゆる現代社会の厄災(教育・学校崩壊、ストレス・孤独社会、薬物汚染等々)から多くの青少年を始めとする老若男女を守り抜き、真っ当に、堂々と成長、生長して行ける“場”“空間”を作らなければならない。我々空道家(人)は間違いなく後世に顧みられる歴史の一コマの中に生きている!!塾生一人ひとりの自覚と研鑽をお願いしたい所である。

大道塾塾長 東孝

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