遠征レポート岡裕美(横浜北支部)

<INDEX>
9/4〜9/5 ウランバートル 気温7℃
9/6 アジア大会前日
9/7前半戦 アジア大会当日
外国と戦うということ
9/7後半戦 パーティー
9/8 審査会
9/9 大草原へ

To:岡 差出人:大道塾塾長  件名「すまん!」 重要度:高

上記のタイトルでメールをいただくのは実は2度目になります。
昨年度、笹沢選手が出場した散打の大会の女子の部に出場、というチャンスを頂いた1ヵ月後にもらったものと、今回。つくづく海外と縁が無いと嘆く間もなく、「モンゴルのアジア大会で演武をせよ」という指令が下されました。
このトータル戦法の使い手に、演武ですと!?

※トータル戦法:特にさしたる得意技も必殺技も無いが、なんとなく「押してるっぽい?」雰囲気を醸し出して勝つこと

押忍。横浜北支部の岡裕美です。 この度、初めての海外遠征に同行させていただくこととなりました。

9/4〜9/5 ウランバートル 気温7℃

どうやら今日の仕事が終わりで早く帰りたいらしい係員さん達に案内されるがままに通り抜けたゲートは「入国ゲート」(※本当はトランジット用ゲートに行くはずなのに!)で、そのまま北京空港の中を約2時間たらい回された挙句、出国ゲートで「何してるのあなたがた?」という視線を向けられた。すでにぐったり。
しかし飛行機は翌朝のため、そのままゲート前で就寝。

明朝ウランバートルへ到着。気温は7度。寒い。
到着したばかりなのでTV取材の間、選手その他はホテルで休息。(寝ていました)
その後ウェルカムパーティー中に、TVに東先生の姿が!モンゴルでの空道に対する注目度にびっくりした初日でした。

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9/6 アジア大会前日

朝。カザフスタン選手団が飛行機に乗りおくれたことを聞かされる。しかも48時間掛けてバスで来るとのこと。何をやっているんだ彼らは(笑)

モンゴル支部にて練習。モンゴル支部の女子更衣室は、わが横浜北支部のものより大きい。嫉妬。
三輪さんと行う予定の組手の段取りを再度練習。塾長にも見ていただきました。

飛永支部長とミット練習

背負い投げ(できていたはずなのに・・・)がうまく決まらず、内容変更。修行します・・・。
あとは飛永支部長にミットを持っていただくことになったためミット演武の練習も少し。

廣井支部長はヨーロッパ大会に行かれたので、その時の話をしていた。
「ロシア人はすごいよー。前日ロシア大会やって、次の日ヨーロッパ大会で上位を独占するからね」
・・・自分には無理だ。何食ったらそうなるの、あの人たち。
おそらくこの呟きを聞いたせいでしょう、その日の夜は外国の人と試合をする夢を見て夜中に起きた。
いくらなんでも脅えすぎだ、このヘタレが!と思いながらふと隣を見ると、ホテルの一室でアイマスクをして熟睡中の三輪さんと目が合って落ち着きを取り戻す。
ありがとう三輪さん。和みました。

※ベッドサイドのランプがどのスイッチを押しても消えなかったために三輪さんは毎日アイマスク装備で寝ていたのです。結局、帰国の日までベッドサイドのライトを消す方法は分からずじまい。

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9/7前半戦 アジア大会当日

民族サーカス場(モンゴル場所が開催された会場でもあります)へ車で向かいます。
ちゃんとカザフスタン選手団は到着したらしい。すごいパワーだ。
高橋、山田、堀越の3選手が控え室で準備をしている横で、累々と横たわるカザフスタン選手団の屍(?)。おつかれのご様子。

トーナメント表ができたのは当日なので、進行スタッフに配布するのが精一杯だったようです。
結局、予定の開始時刻を30分過ぎてスタート。
でも全然モンゴルの人たち、気にしていません。会場にはゆる〜い雰囲気が満ちています。
観客に興味を持って最後まで見ていただくためには、「次の試合が誰VS.誰なのか」ということを明らかにしておくことが不可欠だと思いました。
トーナメント表に変更が入るのはもう仕方のないこととして、変更に耐えうるしくみを作っておかなければ、と来年の世界大会のことを考える。
でっかいモニターがあればいいのですが・・・。

モンゴルの観客は、空道という見慣れぬ武道に対して興味深く見てくれているようでした。
あとは、自国の選手に対する歓声がすごい!
とてもアウェーです。外国で戦うということはこういうことだ。
ここできちんと結果を残した高橋先輩、山田選手、堀越選手の成果を称えたいと思います。

途中、少年部の演武が入りました。
かわいらしい少年2名が、日本でもよくある「基本稽古」を。思わず頬が緩みます。
と、彼らがいきなりスーパーセーフを装着してスパーリングを始めたではないですか!
八王子大会でいうところの「少年部の一番小さいクラス」くらいの年格好の子供達が顔面ガチスパー・・・隣の先生が思わず苦笑。そりゃそうです危ないです。
あまりに観客が沸いているものですから、三輪さんに「我々もガチスパーじゃ駄目ですかね」ともちかけましたが却下されました。当たり前か。

演武開始。まずはミットから。
試合場に血が付いているのが見えて「誰か怪我したんだなあ」と思いながら約2分間のミットを終えました。(飛永支部長もそう思っていたそうです)
試合場の端で礼をした時、指が真っ赤になっているのが見えました。あれは私の血でした。
最前列のお客様がすごい顔をされておりましたが、よくあることなので続行します。
「爪が割れた」を聞き間違えて、山田選手だけ「膝が割れた」とオロオロしていたと後で聞きました。違います。
・・・どうして試合でもないのに「只今選手負傷のため治療を行っております。少々お待ちください」状態にならねばいかんのか。
会場の良く言えばゆる〜い雰囲気が益々加速しました。進行役のティム氏が可哀相に涙目。ごめんなさい。
テーピングで仮止めしてもらって、なんとか三輪さんと残りの演目を終了。
足払いはミスるわ、極めの時に三輪さんの腕を踏むわ(本当にすみません)、目も当てられない・・・。爪剥がして焦っていたということにしておいてください・・・。

モンゴル人選手もロシア人みたいな感じ。力が強いです。
なんだよ、非力なのはもしかして日本人だけか!?とちょっと凹む。

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外国と戦うということ

正直、前回の世界大会前に東先生が「外国人は一階級上のパワーだと思え」「危ないぞ」と口を酸っぱくして仰っておられたのにもかかわらず、最後まで実感が沸かなかったのは事実です。というか、実感したつもりでいた。
分かったつもりでいたのが間違いだったと知ったのは、世界大会の試合開始直後に左フックをもらって「痛ってえええ!」と思った瞬間でした。
(今回山田選手も同じことを言っていました。なんというか、表面が痛いんですよあの人達のパンチ・・・。)
前回の自分がそうであったように、実感が沸かない選手が大勢居るのではないかと・・・。(杞憂ならばそれでよいですが)
体感したら分からないというのは簡単ですが、「その日」はもう来年なので。
そのために、私が何と言葉を尽くせば、多少なりともイメージしてもらえるだろうか。
「対策はばっちりっす!そんなこと分かってます!」と馬鹿にされる覚悟で感じたままに書くことにしました。 というか、対策できている方は私にこっそり教えていただきたい(切実)。

来年、日本選手が勝つべき相手は、
「自分と同じ速さで動くくせに自分より突き蹴りが強い」とか
「自分と同じ力のくせに自分より早く動く」とか
そんな連中だらけになるのはほぼ間違いないでしょう。

勝手なイメージで「外国人はよーいドンでラッシュを掛けてくる」と思っていましたが、ちょっと違っていました。
じりじりと様子見。左のインロー、ジャブ、またはハイキック。速い。
一発当たる。わずかなポイント差を取り戻そうと前に出ると相手が下がる。距離のとり方が上手い。あとライン際のフットワーク。彼らは下がりながら、大振りのフックを狙ってくる。下がりながらでも、フルスイングと同じだけの威力でそれができる。良く言われる「体幹部が強い」せい?
間違ってクリーンヒットでもされてしまったが最後、そこからのラッシュで、もしかすると致命的なポイント差が付く。ポイントを取り替えそうと組む、でも相手に力任せにしがみつかれて、なかなかポイントの取れる体勢にならない。下手をするとそのまま、うやむやのままに寝技が2回終わり、気が付いたら残り時間は1分を切っている。

試合を見ながら、自分がどう戦うか想像しました。恐ろしい。
なんとなく相手より手数を出している気がする、なんとなく相手より有利な体制で組んでいる気がする、そんなトータル戦法では到底勝ち目が見当たらない。

腕先輩の第一試合は、ラスト3秒で投げ→極めによる効果優勢勝ちだったのですが、あれにヒントがあるような気がしました。
外国人選手の多くは前半偏重型で、それゆえに後半ガス欠を起こす展開が多いように思います。(昨年のヨーロッパ大会の某女子選手もそうだったし・・・)残り時間の少なくなった中で、確実にポイントを奪える技がなければ、間違いなく勝てない。

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9/7後半戦 パーティー

・・・まじめに語りすぎて時間がなくなりました・・・。箇条書きで。

・山田選手、モンゴル支部で大人気。いつの間にか「山ちゃん」とか呼ばれとる。
・腕先輩はモンゴル支部の道場生と熱く語っていた。「明日、Tomorrow、技術交流しよう!」と言って、なぜか通じていた。すごい。
・カザフスタン選手団、フライトの時刻に空港に到着した模様・・・。

でも最後には通訳を呼ぶ腕先輩

パーティーは、一度拳を合わせた者同士に生まれる友情(?)に満ち溢れていて、とても気持ちが良い空間でした。試合で殺す気で殴り合うけど、でも終わったら笑って酒が飲める、武道の醍醐味はこれだと思うのですよ・・・ この場に居られて幸せです。(試合したかった・・・)

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9/8 審査会

お別れしたはずのカザフスタン選手団は雨のせいで飛行機が飛ばず戻ってきました。つくづく飛行機と縁のない方々だ。

モンゴル支部の女子部員は6名。いいなあいいなあ!

菅原先輩は弟子である韓国のキム・ガンス選手の道着を着ていたのですが、背中に「I LOVE YOU KIM」と書かれていました。
ホテルの女性スタッフに書かれたそうです。隅に置けない。 「明日モンゴルに残るって言ったらどうしよう」と心配する菅原先輩、間違いなくお父さんの顔になっていました。

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9/9 大草原へ

マハ会長の牧場へ。車で約2時間、草原を走ります。 モンゴルに来て以来、お世話になっているマハ会長です。同い年だと聞いてびっくりしました。(お互いに) 高橋腕先輩と「おないどしの会」を3人で結成しました。

おないどしの会
おないどしの会

・・・そしてトイレはどこでしょう。たしか先ほど男性陣は草原で・・・。
「どこか窪地とか?」
「どこを見渡しても凹凸がありません浜松先輩・・・」

牧場のお母様が「あら、あなたトイレ?お困りねこれを使いなさい」と貸してくださったのは民族衣装です。 すそが長いのはこのため。(十二単とかヴェルサイユ時代のドレスとかと同じ原理です) 個人的に「すごいトイレランキング」第一位は長らく「扉の無い上海のデパートのトイレ」でしたが、それを超えました。

その後は馬乳酒と羊肉の煮込み(?)をいただきました。もしやこれがモンゴル人の強さの秘密かもしれない・・・。

今回、このような貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
試合が無くなったにも関わらず、同行させていただいたことで色々なことを学べたような気がします。気合が入りました。

願わくば、3度目の塾長からのメールを頂くことなくブルガリア大会(※)で試合ができることを祈りつつ。

※編集部注
10月18日、ブルガリアとその周辺地域の国が集まりブルガリア大会が開催されます。日本代表の岡選手のほかカザフスタンとアルメニアの女子選手が出場する予定です。

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