モスクワ・ドイツ・ローマ空道遠征レポート東由美子(通訳・秘書)

編集部注:東由美子通訳のレポートはモスクワ遠征(第二回ヨーロッパ大会)の記事も含まれています。

今回、モスクワでの「第2回ヨーロッパ大会」、続いてドイツでの「公開セミナー」、イタリア・ローマでの「支部設立セミナー及び審査会」に参加させていただきました。一つは、各国の空道の方々と面識を深め、来年に迫った「第三回世界大会」でのアシスト(手続きや通訳のお手伝いなど)をスムーズするため。二つに、母である事務局長が全行程に随行することがむずかしいために、セミナー・審査会の事務処理などのお手伝い、また塾長の秘書(・・・?)を命じられたためです。大変恐縮ながらどの点を取ってみても未熟と自覚しておりましたが、全日程に随行させていただきました。以下それぞれの地で思ったこと、感じた事を述べさせて頂きます。

この、三段階に分かれました遠征ですが、それぞれの段階で、やるべきこと、求められる空気、また現地での文化習慣・風土の違いがある中で、毎回気持ちを仕切りなおして、モチベーションを高く保ってお役にたてるよう努めるのには、かなりの集中力と体力を要しました。それを無事にこなせることができたのは、各国で空道が高く認知・評価され、実際に目にするまで想像もつかなかったような盛り上がりをみせていること、日本発祥である空道が、そのルール・信念を通して世界に波及していること、空道に関わる方々の、共通した意欲と気持ちのまっすぐさ世界中の塾生が同じ目標をもって空道の発展に貢献してくださっていること、などを強く感じ、感銘したためだと思います。

空道を通してこのまま日本の武道教育とその精神が、世界の全くの異文化・精神観をもった国にも伝播していったらならどんなに素晴らしいことだろう、と考えざるをえないような機会を与えていただきました。まったくのお世辞のように聞こえるかもしれませんが、そうではなく、一つのことに対して「あれ、武道に対する感覚が少しずれているのかな?」ということがあっても、それを正すことができる‘空道Japan’の持つパワーと存在感を目のあたりにし、そんな美辞麗句もあながちオーバーではないと感じさせられました。

例えばですが、大会前日の審判講習会での指導や、高橋師範、長田・廣井両支部長の模範的な審判の後に、「ロシア審判団の技術がたった一日で目に見えて変わった」と高橋師範が喜んでいらっしゃったのがとても印象的でした。それに加え、長田・廣井両支部長も、「ロシア審判団の審判基準が統一されていて、且つ俊敏」ともおしゃっていたので、なおさら、日本審判団の方々の権威と影響力は‘絶対’、という印象を受けました。二日間休むまもなく終始審判を務めてくださった日本審判団の方々の、審判のかっこよさは際立っており、各国支部の方々のみならず観客で来てくださった方々も目を見張っていたのではないかと思います。高橋師範、長田・廣井両支部長、体力的にも過酷な全スケジュールさらに、大会中、終始の審判だったのにも関わらず、たいへん模範的な審判をどうもありがとうございました。

次に、海外での大会やセミナーでは、日本国内でするように、すべての作業にそれぞれのスタッフの方々が付いていただくということは人数の面からできないので、国内では考えられないことですが、大変恐縮しながらも、評議委員長や師範、支部長の皆様方総動員で何でも分担・協力して臨機応変にやっていただくことになってしまいます。審判と共に、休む間もなく全体を見ながら進行上のあれこれをご協力頂き、みなさまの長年の経験と臨機応変さ、思いやりと優しさに敬意と感謝の念で一杯になりました。また、初めてスタッフとして海外セミナーを経験した私にとって、海外という四面楚歌みたいな状況において「これを成功させたい」「本家本元の日本の空道を伝えよう」という一種の団結心のようなものが、私個人にも強く大きく生まれるように感じました。みなさまのご協力と一体感が、進行状況や、成功か否かの重要なカギを握っているように思え、海外において‘空道Japan’の強みとすばらしさはこういうところにも潜んでいるのだなと実感いたしました。

またそれに関連し、海外セミナーということもあり、世界的スケールでの文化理解というもののダイナミックさも強く実感しました。まずドイツでのセミナーでそれを感じたのですが、ドイツがフランスと隣接国であることなどからドイツの居住地域によって使用言語にフランス語も含まれ、ドイツ人の中にはフランス語も話せる方も多々いること、且つ、土田支部長はフランス語がご堪能であることから、セミナー中に土田支部長が臨機応変にフランス語で指導される場面もあり、異なった国家間で一つの文化を共有し享受することの凄さを目にみて感じました。また、イタリア・ローマのセミナーでも、山田・友次両支部長が日本語で指導なさり、私が英語で言い換えると、セミナー見学者あるいは受講者の中で英語が分かる方が、それをさらにイタリア語に言い変え他の受講者のみなさんに伝える、というかたちで、一つの文化が世界で受け入れられることのスケールの大きさを感じました。

さらに、スケールの大きさという点では、モスクワでの大会演出と様々なパフォーマンスは、一度見たら忘れられないくらい華やか且つ盛大でたいへん驚きました。またその大会成功のために、寝る間も惜しんで大会準備に尽力してくださったロシア支部のアナシュキン支部長、ゾーリン師範、ベゼルチャコフ事務局長の三役を筆頭にした、空道ロシアの皆様の熱意と士気、空道にかける真剣な気持ちに触れ、大変心打たれました。

以下、英日通訳をやらせていただいた個人的な感想になりますが、自分自身、英語に関してまだまだはなはだ未熟であると自覚しております。実際に、言葉がうまく出てこずくやしい思いをしたり、技やルール、誓約やその他の契約事項などに関する専門用語の語彙力において不甲斐なく思う場面も多々ありました。まして、伝達者という立場で確実性は大変重要で、ミスが致命的な誤解になりうる状況も考えられますし、話の背景を知っていて、前提知識を持っていてこそ正確に意味を伝えられる場合があります。話す方の性格や言い回しなどを考慮しながら、その日本語の細かいニュアンスを「果たしてどれだけうまく的確に伝えられているのだろうか」という不安もあります。

それにも関わらずこんな重要な役割を任せていただき、終始なんとも申し訳ないという気持ちで一杯でしたが、全力でできる限りのサポートをさせていただきました。例えばですがローマでのセミナー中に、「次は関節蹴りをやります。これは、足の裏で蹴るのではなく、足の側面を使います。これを‘ソクトウ‘と呼び、足首を直角に曲げて、相手の膝のすぐ上を蹴ります。・・・」というご注意が支部長からでて、それを英語に言い換えようとすると、「え・・・、足の裏??なんていうんだろ・・・、しかも何、足首?え、ちょっと待って、足刀はたぶん分かる、けど・・・、え、全部まとめると・・・、あぁ、分かんない・・・」。そして、「正確な単語でなくても、ちゃんと伝えなきゃ」と思い、「次は・・・。足のこの面ではなく(not this part)、この側面部分を(this side part)使って、ここを(this)90度に曲げて・・・。」と身振り手ぶりを交え四苦八苦し、どこから打たれるか分からない矢に構えているかのように、通訳をしていましたのも覚えています。

しかし山田・友次両支部長とも、そのようにまさに通訳が必要な場面では、通訳の任にまったく不慣れな私を気遣ってくださり、受講生の皆さんが目で見て分かりやすいように指導してくださったり、しゃべる内容を細かく区切ったり、ゆっくりしゃべってくださったりして、訳をしやすいように分かりやすく説明してくださったりしました。そのお陰で、私自身も、訳出する方それぞれのしゃべり方の癖やその訳のタイミングやコツを掴むことができ、勝手ながら、段々チームワークのようなものが形成、強化・向上していき、徐々に、セミナーの出だしよりもスムーズに進行することができていったのを覚えています。この際の両支部長の優しさと、また、ご経験の深さからのこのような海外での状況に見合う指導の仕方とコツを掴まれる早さ、に改めて畏敬の念を抱きました。お陰さまで臨機応変を要求されたセミナーの運びにも関わらずうまく終えることができたことに感謝いたします。

今回の遠征にご一緒させていただき、直に感じたことは、現在進行中の空道の躍進、でした。私非力ながら、まさに空道の海外発展真っ最中の最前線で少しでもお役に立つことができていたのなら大変光栄と存じます。言葉の面でも、今後の意欲の糧になるようなすばらしい機会を与えていただき大変ありがたく思います。空道の今後の更なる発展を確信しつつ、皆様のご理解とご協力に、心より感謝いたします。

最後になりますが、こんな未熟なアシスタント役を温かく受け入れてくださり、度々フォローしてくださった、平塚評議委員長、高橋全国総運営委員長、長田支部長、廣井支部長、土田支部長、山田支部長、友次支部長(行程順でのご記名、失礼します)、どうもありがとうございました。また内輪になりますが、塾長、事務局長、数々の場面でサポートしてくださりありがとうございました。みなさん、心をこめまして、本当にたいへんお疲れ様でした。

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