審判団レポートの中の高橋英明

ワールドカップ遠征記

出発の日は、会社で1時間ほどメールチェック等を行ったあと、会社の経営幹部に「戦争に行ってきます。不在期間よろしくお願いします。」というメールを残し、成田に向かいました。
ほぼ定刻通りに到着したモスクワは、予想通りの寒さでした。

さて、ワールドカップは、巨大な会場の半分を使い、6〜7千人と思われる観客の見守る中で開催されました。
私はA面の方を見ていましたが、-240級の飯村選手がオープニングマッチを務め、旗は割れたものの、完勝。相手は昨年メキシコに遠征した時にテキーラをお土産にくれたメキシコ期待の選手でしたが、試合後に病院に直行し入院しました。帰国時にカルロス支部長に聞いたところ、胸の骨にひびが入ったということで、2日間入院した後、帰国するとのことでした。「あんなにすごい膝蹴りは見たことがない」とのことでしたが、そりゃそうだろう。

2回戦も、これまたずっと前から知っているスペインのデイビッドで、昨年ドイツで行われた欧州交流試合では、内容的には平安を圧倒した選手でしたが、これも問題なく完勝。3回戦は、カザフスタンの選手と延長まで戦いましたが、終始、飯村選手がリードしていたと見ていました。
ただ、ここまで延長を含めると4ラウンド戦っており、準決勝の相手のロシアの選手は相手の棄権もあって1試合しかしていないということに対して、大きなハンデになったと思います。残念ながら準決勝での敗退となりましたが、日本を出発する3日前に体調不良の田中選手に替わっての出場が決定し、42歳というたぶん今大会の最年長選手が3勝あげたことに対しては、皆が最大の賞賛をしました。ほんとうにご苦労様。

B面で行われたブロックでは、試合は見ることができませんでしたが、堀越選手が準決勝を前にして残念ながら敗退しました。
-230級は、中村選手が順当に準決勝に進出。ロシアの選手との準決勝で、延長の末、日本の2名の審判の旗が分かれ、イタリアの審判が中村選手、ロシアの2名の審判はロシアの選手に旗をあげた結果、2対3で惜敗しました。判定に対する判断については、-270級の加藤久輝選手のところで述べますが、中村選手は3位に入賞し、トロフィーを受け取りました。B面ではこれも順当に平安選手が準決勝まで進出しましたが、準決勝では優勝したコリャン・エドガー選手にポイントをとられて敗退し、4位という結果に終わりました。

-250級は、ただひとり参戦した我妻選手が、残念ながら試合途中で膝を痛めて棄権となりました。やはり、体調万全の状態で臨まないと厳しい。まずはしっかりと治してください。

-260級は、稲田選手が何とか3回戦まで行くものの、3回戦で完敗し、準決勝までたどりつくことはできませんでした。

-270級の加藤久輝選手は、このクラスの選手が少なかったことから、1つ勝てば準決勝となり、決勝まで行った場合は3戦ともロシアの選手が相手という組み合わせでしたが、1試合目で延長の末、惜敗しました。本戦では相手を再三ねじ伏せ、マウントパンチで効果かという状況が2度ありましたが、わずかに突きの動作不足であり、3名の審判が効果を採るところまでは至りませんでした。延長戦では、ロシアの選手に打撃での一日の長があり、残念ながら準決勝進出は果たせませんでした。マウントパンチでの効果は、動作をもう少し大きくできれば採ってもらえたはずです。打撃の技術面ではひけをとったということですが、体力面ではロシアの選手に確実に勝っていたことが、次に繋がる収穫でした。

-230級の中村選手と共通しますが、グランドで優勢をとっても、打撃での優劣の差がない場合は投げの優劣で、それでも差がない場合はグランドの攻防での優劣で判断するわけであり、打撃でイーブンであって始めて、投げやグランドでの差が効いてきます。中村選手の準決勝、加藤選手の準々決勝ともに、立ち技の打撃での優勢を採られての敗退でした。打撃で少なくともイーブンに持ち込むためには、しっかりと体をつくること、特に軸、体幹をしっかりとするという基本的な体づくりが必要と感じました。次の世界大会までの2年9ヶ月の間に、出直しです。

決勝戦は女子を除いてすべてロシア勢同士となりましたが、新旧交代もあり、特に270超のクラスは大型選手でありながら動きもすばらしく、見応えがありました。3位以内には、日本の他ではイタリア、モンゴル、ウクライナが入り、各国に技術の向上が見られたのはうれしいことです。

ルール・判定面では、打撃での効果の判断基準を繰り返し説明したことで審判団の判断基準の統一性を改善できたこと、それから、世界大会で問題となった拳の過剰なバンテージ・テーピングの禁止を徹底できたことが、前進でした。今後は、今回の大会での運用が基準となると思います。また、イタリアのリッチー支部長とモンゴルのガンチュンガー支部長が、決勝戦での副審を任せられるレベルにあったことも、収穫でした。

選手の皆さんは、たいへんご苦労様でした。またコーチとして最後まで相手を務めていた加藤支部長と稲垣師範も、ご苦労様でした。審判団の皆さん、サポーターとして参加してくれた皆さんも、ご苦労様でした。またコノネンコ師範がいないと国際大会が回らないことを実感した大会でもありました。ほんとうにご苦労様。東塾長、事務局長、事務局長補佐を務めたIさん、お疲れ様でした。
試合後は、みんな明るく振る舞っていましたが、心の中では泣いていると思います。
特にひとりになると、悔しさが溢れるでしょう。
この悔しさをバネに、明日に向かいたいものです。

高橋英明(新宿支部)

大会画像

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開会式 開会式での日本選手団
準決勝での中村選手 大会入賞者とともに記念撮影(撮影:狐崎支部長)

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