キューバ・メキシコ遠征  >  小松洋之

キューバ・メキシコ遠征報告

はじめに

押忍。「焚き火」は11月の季語でもあるそうです。全国の塾生の皆さん!心にお焚き火!soulに雄叫び!元気で稽古していますか!?
この度、10/24〜11/1間で中米はキューバ・メキシコ遠征に参加して来ました。本日はその報告をさせて頂きます。押忍。

遠征目的

個人的な主たる目的は、大きく三つ。 2008NYCセミナーに参加し、その後第三回世界大会を経て感じた事は、打倒ロシアは当然の事ながら、世界規模での「均衡ある空道の普及」が急務であるという事であった。いまや60余ヶ国にまで広まった空道であるが、ロシア、次いで日本が突出し、旧ソ連圏の数カ国が追撃しているという現状において、空道新興国との「強さ」の乖離(かいり)・不均衡が広まり過ぎることは避けなければならないと強く感じた。

例えば試合。統一のルールの下に試し合う事は「フェア」の必要条件であるが、果たして充分条件か?「強さ」について埋め切れない程の大きい乖離が生じてしまった場合、その二者の試し合いはフェアといえるだろうか?

もちろん、先を行く者達に制限を掛ける事により乖離を埋める事は、あってはならない。となると、空道新興国のレベルの底上げと、新たな参加国を増やす事による競技人口の拡大・底辺の拡大を図る、という至極当たり前の事が益々もって急務であると考える。今回の遠征で言えば、まさに前者がメキシコ、後者がキューバ。

また、今回併せて開催される「第1回メキシコ空道交流大会」には、旧知の米国勢も参加するとの事。彼らの成長も目にしてみたい。これは北米大陸全体の空道底上げの絶好の機会である。
東先生から今回の遠征のお話を頂いた際、微力ながら空道伝道のお手伝いしたい旨、即答したのは言うまでも無い。
残る二つは、以下の通り。
・先生と旅をする事により、武道愛好家としての己の確認・補正作業をする事。
・審判の経験値を上げること。

その後、そうそうたる参加メンバーを知り、遠征の目的を更に追加。
・高橋師範の前で、主審をやってみる。
・(各方面様々な方々から「是非会うべき」と薦められていた)黒木支部長とオープンハートする。
・破竹の勢いの超新星、加藤選手、中村選手との手合わせをしてみる。
以上、なんと六つもの命題を抱え、日本の武道愛好家として恥じぬ様、いざ空道伝道の旅へと臨んだのであります。

遠征行程

成田→ヒューストン→メキシコシティ→ハバナ

成田空港にて遠征団結団式を粛々と終え、まずはヒューストンへ。前回遠征したNYCより近いのは知っていたが、驚いた事に盛岡より近かった。黒木支部長と空道の将来について静かに語り合い、中村に旅の良さを説くこと16回目の所で、あっという間にヒューストンと着陸。
一度乗り換え、メキシコシティ泊。

ここで、遠征中、ずっと同室させて頂きました黒木支部長について少々。豪快。ガハハハ!本当に楽しそうによく笑う。いつの間にか間合いに入られていて、まるで十数年来の先輩後輩の様な感覚に。空道=オープンハートを地で行く方。がしかし、実は全方位に気配りされている、思慮深くやさしすぎる先輩。辛い事こそ正面突破。先輩!早速のオープンハート!ありがとうございました!
翌早朝、メキシコシティからハバナへ移動。

キューバ、久輝と中村と手合わせ

ハバナ到着後、ホテルのジムで軽く運動。目的の一つでもある2選手と軽いマススパーを行う。大太刀で面を割り更に袈裟に薙ぐかの様な全日本王者の組み手と、スパッと小手を落とし鋭い切っ先で頚動脈を的確に狙うか如くの世界準王者の組み手を満喫する。結果、その日の夕食は顎が閉まらず、名物のロブスターもチキンも泣く泣く丸呑み。

キューバ合同稽古

経験したことの無いほどの高温多湿。稽古をやり通せるか不安を感じる。
諸事情により、キューバではセミナーはせず「同じ場所で稽古」をすることに。基本・デモの後、皆でマススパー。柔道のナショナルチーム所属者から他流派五段まで、充実したメンバーがガンガン向かってくる。ただ、彼らにとっては慣れないせいか、自身が顔面を打たれている事にあまり気が付いていない。その事と、このマススパーの意味を拙い英語で伝えると、驚いた事にすぐにその事を理解し行動で表現し始めた。柔道の乱取りにおいても互角稽古や引き立て稽古という形式があるが、さすがはナショナルチーム所属者達である。日ごろの稽古の意味というものを深く理解しているからこそ成せる行動であろう。技術・身体能力が高いだけではなく、武道への理解度も高いと感じた。
彼らは既に、新たな参加国になって・・・、という段階には無い。現時点でのレベルの高さと今後の可能性、伸びシロを鑑みるに、一年程キューバに滞在し指導してみたい衝動に駆られたのは私だけではないはず。
大成功且つ大収穫の「同じ場所での稽古」となった。

ハバナ→メキシコシティ→モンテレィ→サルティージョ

早朝3時にチェックアウトし、ひたすら移動。ホテル到着後、外を軽くランニング。1600mという標高、照り付ける太陽と乾いた空気の為か、1時間のランニング中、後半足が全く動かなくなる。見渡す限りの荒野の中、一本の赤いサボテンと化す。
這う々の体でホテルへ戻り、ジムワークの黒木支部長組と合流。ここから、黒木支部長と小松の自己を見つめる永い永い修行が始まるとは夢にも思わず談笑。直後、まずは黒木支部長が、自分を見つめる苦行へ旅立つ。深夜、先輩の後を追うのが後輩の務めとばかりに、私自身も苦行へと飛び込む。自己の尊厳をかけて、己の全てを○門の一点に集中させ、ただひたすらに苦行に耐える。息吹で耐える。二人で耐える。

ルール・ミーティングとセミナー

ホテル会議室にてルール・ミーティング。参加者の積極的な姿勢から、高い学習意欲と大会への必勝の気持ちが伝わってくる。昨夜から続く苦行の中、黒木支部長と二人で副審役を務める。もう、息吹も出来ない。心を左の掌に置き、ただただ静寂を探すのみ。

夕刻、メキシコ支部セミナー。
微熱の為、目が回る。いつもより多く下着を着用し不測の事態に備える。ファールカップを後ろ向きに使用しようかとも考えるが「美しくない」との結論に至り控える。
セミナー開始後、まず驚いたのは、10代の若者が多いこと。そして彼らが互いに競い合うかの如く、真剣に基本稽古に打ち込んでいる事であった。基本稽古を見れば、支部長の指導の姿勢も、その支部がどのような集団なのかも非常によく分かる。この支部は間違いなく伸びる支部だ、と強く感じる。
セミナーが進み、高橋師範の技術指導へ。益々もって、強い好奇心と向上心で稽古に励む姿勢は、本当に清清しいものであり、教えるこちらにも熱が入る。キューバ同様、居残って今しばらく指導したいとも思ってしまう。
ホテル帰投後、いつの間にか苦行のピークは過ぎていた事に気づく。武道とは全く違った切り口から「続けること」の重要性を知る。

カルロス支部長昇段審査

日が変わり、カルロス支部長の昇段審査。昨日の基本稽古の際に感じた「支部長の姿勢」の読みは外れていなかった。強く、厳しく、且つ真摯な姿勢のカルロス支部長を見るに、この支部は絶対に伸びる!との思いをあらためて強く思う。
夜、ウェルカムとさよならを兼ねたパーティ。メキシコ経験豊な黒木支部長によると「メキシコ流、最上級のもてなし方」との事。本当にご馳走様でした。

第1回メキシコ空道交流大会

中米らしい大らかな段取りで粛々と進む。久輝も中村も、各々軽めの苦行を行うも、そこは見事にコンディションを整え頼もしい戦う顔に。初めての大会ゆえに当地参加選手の技術に改善の余地が多いのは致し方の無い事ではあるが、それを補って余りある「清清しく、真摯な姿勢」での試合に好感を持つ。2008NYCセミナー以来の縁である実践的道場のポールも負傷を押してよく戦ってくれた。結果は承知の通り、日本勢で上位独占。
私自身の主たる目的である「審判経験」。国内の大会では経験出来ない程の試合数を裁かせてもらった上に、東先生、高橋師範より直接のご指導を仰ぐことが出来、非常に貴重な勉強の機会となった。本当にありがとうございます。引き続き、S級目指して精進致しますので、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。

帰国

翌日早朝3:00にチェックアウト→粛々と帰国。
成田にて、別便帰国の高橋師範をお待ちして、解散式。熱燗の湯気がやけに目に沁みる。

遠征を終え

総括1 御礼

旅を終えて、まずはお世話になった皆様に、御礼致します。
いつも元気な久輝、通訳、ありがとう。そして様々な国の話、文化・習慣の話、ありがとう。中村、韻を踏む伝統的手法の会話に、最後まで付き合ってくれてありがとう。長身のサウスポーは存在だけで価値がある!二人して、世界に向けて突き抜けるべし!また、皆で一緒に旅をしよう。東北に遊びに来い。
高橋師範、黒木先輩(最後だけ、先輩と書かせて下さい!)、ご指導ありがとうございました。これから先も、数十年もの長きに亘るご縁になろうかと思いますが、何卒、よろしくご指導の程をお願い致します
奥様先生、事前の準備から帰国に至る全てにおきまして、本当にありがとうございました。ミネラルウォーターと間違い、炭酸水を15本も持って来てしまいまして、申し訳ありません。
リスク覚悟で合同練習してくれたピノ師範とサンデー、真摯なカルロス支部長、お世話になりました。ネストル、テキーラありがとう。鯉の滝登り流軍団、実践的道場の皆、遠征中出会った全ての方々、留守中の道場を守ってくれた秋田の皆、ありがとう。
そして、このような機会を与えて下さいました東先生に、感謝致します。本当にありがとうございました。

総括2 最後に

二度目の海外遠征であった今回は、見るもの聞くもの全てに感動していた前回と違い、多少は地に足が着き、同行指導員として、東先生、高橋師範の足を引っ張る事だけはせずに済んだのではないかと感じているが、実際はどうだったのだろう?
個人的に目的としていた事は、大凡は達成出来たのではないかと自己採点している。が、「武道愛好家としての己の確認」については、問題多々。遠征を通し「確認作業」をした所、「至らぬ点多く、まだまだ道は長し」という事を痛感するに至った。「補正作業」と「今後のより一層の精進」を「続けること」しかないのだろう。
自己の精進はもとより、空道の益々の発展の為この身をささげる所存なれば、東先生、高橋師範、関係各位、今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します。

小松洋之(秋田市同好会)

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