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第一ラウンド。お互いに距離を保ち、時計回りに動きながらの探り合いから始まりました。
ジャブと戻りの速いローキックとが交錯します。軽く仕掛けてきたのはアバトフ選手。前進しながら右ストレートを放ち、距離をつめてきました。
笹沢選手がこれを迎え撃ち、軽いもみあいになります。このときに笹沢選手の右足が不意に力が抜けたかのように、カクッと崩れました。幸いにヒザを着くことはなくポイントは取られませんでしたが、右の足首は相当に悪いのだな、と実感しました。
その直後、今度は笹沢選手が距離をつめようとします。ここでアバトフ選手が、首から上を薙ぎはらうかのような後ろ回し蹴りを繰り出しました。笹沢選手がとっさに前に出たので直撃は免れました。しかし後頭部をヒザ裏に巻き込まれてしまい、つんのめるようにして手を着いてしまいました。ダメージはなかったのですが、二ポイントを相手に取られます。
この攻防の後から、二人のパンチとキックに力が乗ってきました。はっきりと相手を倒す意思と力を込めての打撃戦です。
一進一退の攻防でしたが、ここで笹沢選手が見事な技の組み立てを見せてくれました。まず左ジャブから左のインローをアバトフ選手の左足に放ちます。アバトフ選手は左足を後ろに引いて笹沢選手のインローをかわしながら、着地するはずの笹沢選手の蹴り足に、強烈なローキックを見舞いました。ところが笹沢選手は蹴り足をすぐには着地させず、腰のあたりの高さでいったん停止させていました。ローキックをかわされて、体が空転してしまったアバトフ選手は、このチャンスに組み付いてくるはずの笹沢選手に対してバックハンドを繰り出します。ここでも時間差攻撃をしかけていた笹沢選手は、バックハンドをやり過ごし、がら空きになったアバトフ選手の胴体に鮮やかにタックルを決めました。
そこは擂台の際からは一メートルもない地点でした。バランスを立て直せないアバトフ選手は、なすすべもなく押し出されていきます。「よし、突き落としだ。」試合を見ていた誰もがそう思いました。ところがアバトフ選手が擂台の外に突き落とされる直前、それこそコンマ何秒かの直前に笹沢選手が転倒してしまいました。足首を痛めている右足が、またもやカクンと崩れてしまったのです。審判の判定はノーポイントでした。
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
結果を惜しむため息が、大きなどよめきとなって会場に満ちました。アバトフ選手はなんらの抵抗も出来ずに突き落されていましたので、いつもの笹沢選手ならば間違いなく二ポイントを取れる場面でした。
擂台の中央に戻って試合再開してまもなく、ラウンド終了十秒前のカウントダウンが始まりました。残り六秒,ローキックを放ったアバトフ選手の左足に、笹沢選手が右の足払いをきめます。アバトフ選手をキレイに横転させて一ポイント獲得ですが、まだポイントリードされています。終了直前、アバトフ選手の左足に全力のローキック。引き戻すことを考えていない蹴りでしたので、この足をアバトフ選手に捕まえられて笹沢選手が転倒したところで第一ラウンドが終了しました。 |