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ロシア遠征参加者レポート

全日本空道連盟 副理事長 高橋英明

Battle of Championships 遠征記

ウラジオストック訪問は、昨年6月の空道アジアカップオープン以来の2回目となりました。

往きは、塾長と長田支部長との3名。選手の國枝とコーチの飯村支部長、それに通訳のコノネンコ師範は、1日前に到着していました。

空港には、定刻より30分早い18:40に到着。迎えに来ていたウラジオのヤシン支部長やモスクワのアナシュキン支部長らと、ヤシン支部長経営のパブへ。計量を終えた國枝も合流して、ここの個室で海の幸中心(カニ、エビ3種類、ホタテなど)の夕食。ウラジオストックは、緯度は札幌と同じ、経度は広島と同じで、海の幸が豊富なきれいな街です。日本は雨が続いていた時期でしたが、ここはさわやかな天候でした。あとでレポートしますが、泳ぐこともできました。

夕食時は、ウォッカの乾杯も繰り返されましたが、長田支部長のタイでのムエタイ参戦の経緯(※)やThe Wars などの空道の歴史を振り返ったまじめな会話が続き、乱れることなく、早めに解散。

※:単なる「経験の為の練習試合」という話で、準備も何もしてないで観光旅行をしてバンコックに帰ったなら、いつの間にか「大道塾空手がチャンピオンに挑戦」となっていた。しかもルンピニースタジアムが超満員だったにもかかわらず、一切のファイトマネーも寄こさない!!「手段方法、経緯より結果が全て」のプロとアマチュアの違いを思い知らされた。

2日目の19:00から22:00が、Battle of Championships。会場は、昨年の空道アジアカップオープンの会場と同じ、新しいきれいなアリーナです。選手・コーチ・審判は、午後に会場に入り、簡単にリハーサルと審判の打ち合わせを実施。

今回のBattle of Championshipsは、ロシア格闘技連盟に加盟している約80の競技の中から、8競技が選ばれて開催されました。試合の登場順に挙げると、柔術、空道、サンボ、散打、極真会、MMA、ムエタイ、キックボクシングでした。これらの試合の途中で、合気道の演武が入りました。

中国での式典のために北京に行っていたプーチン大統領が、モスクワへの帰りに寄って大会を観戦するという可能性が直前まであったようですが、結局は来なく、ちょっと残念ではありました。

空道アジアカップオープンのときは審判団の統括という役割でしたが、今回は主催者側からの要請に応じて主審として参加しました。国内では、第2回世界大会での主審を最後に、審判として壇上に上がっていませんが、海外ではときどき審判を務めています。今回も、技量の維持のためにたまには主審を務めないと、と思い、塾長からの承認をいただいて、要請通りに主審を務めることにしました。

選手やコーチの観点から、國枝や飯村支部長がレポートすると思うので、私は審判の観点からレポートします。

ルールは、世界大会決勝と同じく自動延長有り。ただし、再延長は行わずに延長戦で決着ということになりました。

『公式審判員 動作・判定ガイドライン』においては、『主審はできる限り旗をカウントし「効果」などをコールする』とされていますので、これの実行を意識しました。また同じく、『主審はいずれかの選手の攻撃が効果的であると判断しても副審の旗があがらないような場合は、「副審」とコールしながら、各副審を素早く見回し判定を促す』ということになっており、この場合は主審が「効果的」と判断しているわけなので、副審から旗がひとつもあがらない場合でも、主審の「効果」はカウントしたうえで「とれません」とコールすることを意識しました。

審判団として「効果」を取るには至らなかったとしても、審判個々の判断は、最終的に旗判定になった場合は、重要になります。また、とくに肘打ちや顔面への膝蹴り、鮮やかで強い投げは、積極的に取ることを意識しました。

予想はしていたことですが、攻防のテンポが速く、副審の旗が4本あがったときは、旗のカウントは省略せざるを得ませんでした。本戦と延長戦の6分の間で、「有効」2回、「効果」2回、副審の「効果」の旗があがっても取らなかったケースが2回、主審のみ「効果」をあげたケースが2回、グランドは3回と、めまぐるしい攻防でした。主審だけが「効果」をコールしたのは、強いアッパーやストレートがきれいに入ったときでした。頭が大きく振れるとか、腰が落ちるというところまでは行きませんでしたが、カウンター気味に強いパンチが入ったことで、コールしました。副審もそうですが、位置によって見える/見えないがありますので、旗がそろわないことがあるのは当然です。また主審からすると、選手に近いから見える部分と、逆に近いことで見えないこともあります。

事前に、『反則はできるだけ犯すな。特に金的への反則はやるな』と選手に伝えていましたが、結局、反則はどちらもありませんでした。また、『今回は勝ち負けではなく、魅力的な試合を見せることが重要』という認識を共有していました。

観客やこの後にあるであろう映像の配信を考えたときに、空道の特徴である肘打ちや頭突き、投げからの極めといったものが見せられると良いんだけれどと思っていましたが、そこまではうまくいきませんでした。選手は、観客を魅せるということよりも勝ち負けにこだわると思いますので、これはしょうがないことと思います。

全体的には、前記のとおり反則もなく、「掴み」が10秒まで続くこともなく、テンポの速い、また緊張感のある、よい試合だったと思います。

空道以外の種目について、試合内容ではなくルールの視点から、簡単にレポートします。

柔術:打撃は寸止めのポイント制であり、投げとグランドが中心。

サンボ:ヘッドギアを着けての、直接打撃有りの「コンバット・サンボ」ルールでの試合であり、空道にもっとも近いルール。ただし、投げのポイントが高く、打撃主体の空道とはコンセプトに違いがある。ヘッドギアを着けるが、顔面への加撃を受けることを恐れて上体が前に出ていかなかったり腰が引けたりしがちであり、空道と比べると迫力に欠ける。テンポも遅い。脛から足の甲にかけたサポーターを着けていることにも、個人的には違和感有り。

散打:以前の散打のルールから変わっており、中国版キックボクシングになってしまっていた。

極真会:「まだこのルールで続けているんだ」というのが一番の印象。両者ともに、極め技は「胴回し」のみ。

MMA:みなさんご存じのルール。

ムエタイとキックボクシング:普通の観客からすると、ムエタイ/キックボクシング/散打の違いが極めてわかりにくい。肘打ちの有無、掴んでの膝蹴りの有無、下肢への蹴りの有無、投げの有無、試合時間が主要な差異のようだが、異なった格闘技と言うには無理があるように思う。

試合後のどこかの場で、誰かが言っていましたが、他の競技の多くは、あるルールから出発し、付け足し/省略というものがなされているように思います。例えば、もともとは投げが中心の格闘技に寸止めでのパンチを付け加えたもの等々。この結果、何か中途半端と言うか、しっくりしないところを感じてしまいます。

それに対して空道は、その出発点は、徒手空拳に限定されますが『現実の闘い』です。一般の人に説明する時には分り易く「空手と柔道をミックス」という言い方をしますが、実際は、既存の格闘技のルールの適用から出発したものではなく、現実に闘う必要があった場合にどうするか、何ができないといけないかというところから出発し、日本のすばらしい武道である空手や柔道を活かしてうまく融合し、更にルールや技術を発展させてきたと言う方が適切ではないかと思います。また社会性を重視し、安全性の確保にも大きな注意を払ってきました。

イベントが終了したあとは、大会主催者が用意したパーティーには出ずに、空道関係者で夕食。何を食べたかなど、あまり覚えていませんが、カラオケに行くこともなく、今回も比較的早めに解散。

塾長、コノネンコ師範、飯村支部長、國枝は、大会の翌日に帰国することになっていましたが、私と長田支部長はどういうわけかもう1日ウラジオに滞在するようになっていた(大会主催者であるロシア格闘技連盟が航空券を用意)ので、ウラジオ支部の稽古に参加したいと思って稽古着を持った行ったのですが、なんと、土日は稽古は休み(この日は土曜日)ということで、ガッカリ。日本だと、土日のほうが稽古に時間がとれると思いますが、ロシアだけでなく海外では、土日は休みで、家族や趣味に使う時間、というのが常識なのかもしれません。審判を務めたウラジオ支部のシボプリャスは、車の上にウインドサーフィンの用具を二式積んでいました。

早めの昼食を、空港に行く途中にあるりっぱなレストランでとったあと、空港まで塾長一行を見送り、その後はホテルに戻るのかと思っていたら、ホテルの前を素通りし、近くのマリーナで車を降りました。それで、近くの島まで約40分のクルーズ。島の沖合300mくらいの所にクルーザーを留めて、みんなマッタリ。ヤシン支部長は、塾長をお見送りしたあとは大分疲れたようで、島に着いたあとは姿がみえなくなったので、休んでいたのでしょう。ベッドルームが3部屋あるクルーザーです。

アナシュキン支部長と第1回世界大会超重量級チャンピオンのデニスが我々の相手をしてくれ、例によってウォッカで何度も乾杯。なんとデニスは、重量制限100kgの飛び込み台(だから、重量オーバー)から、巨体をふるわせて海に飛び込み、そのうちアナシュキン支部長も合流。長田支部長と私も、半分しょうがなく、合流。ウラジオストックの海で泳ぐなんて思ってもいませんでしたが、水は思ったほどに冷たくはなく、けっこう気持ちよかった。ただ、沖合に停泊しているので水深はかなりあるだろうし、きれいな水だと思うんだけれど透明度は低いので、もし沈んでしまったら見つからないなと思いながら、飛び込み台から飛び込むことは遠慮しました。

海からあがってまた飲んでいるうちに、ボートで島から魚(おひょうのホイル焼き)が届き、スープといっしょに早い夕食。魚は厚みがあり、えんがわのところは脂ものって、おいしかった。

暗くなる前に、ホテルに戻る。

最終日の朝は、10時まで時間があったので、歩いて10分ちょっとの街の中心部を散策し、海岸沿いの遊歩道を端まで散歩して帰ってきました。日曜日の朝早くなので、お店はすべてクローズ。

今回は、長田支部長と丸々3日間、べったり一緒だったので、いろいろと話しをする時間が多く、そういう点でも面白い遠征でした。

9月末の日曜日の新宿支部の稽古に、指導に来てもらうことにしました。
普通とはだいぶ変わった内容の稽古をしてもらう予定です。

最後に、國枝と飯村支部長は、お疲れ様でした。よい勉強になったし、次への課題も具体的になったと思います。

昨年の空道アジアカップオープンのときもそうでしたが、ヤシン支部長には大変お世話になりました。

塾長には、10月初めのモンゴルでのアジア大会にも同行させていただく予定です。その後の10月末には南米チリ、全日本無差別大会が終わったらヨーロッパ遠征があるかもしれません。

会社に勤めて仕事をしていたときは、なかなかそういうわけにはいきませんでした。

初めて行った海外遠征は、ブルガリアでの第1回ヨーロッパ大会でしたが、大会が終わったあとは早々にひとりで帰国し、成田から会社に直行しました。塾長一行がキューバとメキシコに遠征されたときは、フルには休みはとれないので、メキシコのみ合流しました。エストニアに行ったときも、イベントが終わり次第、ひとりで会場から空港に直行し、帰国しました。オーストラリアに審判講習のために行ったときは、金曜日の夜に会社から羽田に行き、土曜の朝に現地に着いたあと土曜・日曜と講習を行い、夜の便で帰国し羽田から会社に直行して月曜の定時から勤務等々、あわただしい遠征が多かったので、昨年来、現在の完全にフリーな状態で遠征に同行できるのは、うれしい限りです。

幸い、まだ何とか身体は動きますので、動くうちはいろいろと同行させていただきたいと思っています。

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