第4回世界大会出場選手 USA 選考会及びセミナー レポート小松洋之(秋田支部)

始めに

大道塾・空道の歴史にまた新たな1ページが書き加えられた。
米国に新たな支部が複数誕生する事と、初めての米国大会が開かれたという事である。
塾長の速報の通り、多くの困難を乗り越えて、この度、ジェームス・アレキサンダー支部長がついにその大きなマイルストーンを設えた。
大道塾・空道の悲願でもある米国展開については、私自身も2008年のNYセミナーへ随行員として参加させて頂いてから、我が秋田支部の事柄と勝るとも劣らない強い使命感を感じている。
セミナーや選考会については既に塾長の速報、神山支部長、中西支部長からのレポートが挙がっている為、私の報告についてはニッチな視点から以下の通り報告をさせて頂く事とする。

セミナー:ジェームス・アレキサンダーの誠意と企画・行動力

1日でセミナー、昇段・級審査、選考会の全てを行うというタイトな日程の中、今回のホストであるアレキサンダー支部長の処理能力の高さに驚かされる。彼にとっても初めての経験が殆どのはずにも拘わらず。聞けば、彼の職業は物流と兵站(へいたん)のコンサルタントであり、顧客は米国空軍だとの事。ちなみに、この度、彼が支部を立ち上げるオハイオ州デイトン市は空軍の兵站の全米最大拠点である。その地でコンサルティングに携わっている彼の処理能力は推して知るべし、である。

セミナーは、概ね昇級審査に則って行われた。即ち、基本→移動→立ち組み→寝技→約束組み手の順に行い、適宜、指導をして行くと言うやり方である。
参加者のレベルとモチベーションは非常に高く、皆、打撃・投げ・寝技の個々の基礎技術は持ち合わせていた為、セミナーの進行は比較的スムーズに且つ充実したものとする事が出来たと自負している。
今後、各々が持ち合わせている個々の技術を、空道の流れの中で滞りなく使えるように変換する為の反復練習を継続して行く事により、遅れてきた米国勢が世界レベルに追いつく事はそう遠くは無いと感じた次第である。

昇段審査:モン・フーの戦う後姿

セミナーの後は、昇段・級審査が行われた。
3名の挑戦者全ての姿勢がすばらしかったのは言うまでもないが、支部開設を希望し昇段審査に挑んだモン・フーの戦いに特に深い感銘を受けた。詳細は差し控えるが、彼は打撃系格闘技を行うにあたり大きなハンディキャップを所持している。その彼が、自分よりずっと大きな相手へ攻め勝って行く姿に感銘を受けない者はいなかったであろう。
私は指導者になってから「伝えようとした事が弟子たちに伝わる事はあまり無い。但し、やっていることが弟子へ移(染)って行く事は多々ある。」と事あるごとに感じている。モン・フーの戦う後姿を見た彼の弟子たちが、どのように育っていくか想像する事は難しくは無い。今後、期待する所、大である。

選考会:正面突破とギブアップの精神

選考試合で一番印象深かった事は、初めての大会にも関わらずのレベルの高さは勿論であるが、彼らが持ち合わせている「正面突破とギブアップの精神」であった。全ての試合が正直過ぎる程の真っ向勝負で行われた為、はっきりとした勝敗が付いた。そこには勝者は驕らず謙虚に、そして敗者は誇り高く負けを受け入れるという清々しい光景が広がっていた。そして双方共に、次なる機会の為に直ちに改善を試みるのである。
メジャーリーグでは、試合の勝利のみを目指し敬遠策を採る事は周囲の尊敬を勝ち得ない。正々堂々勝負する事が重要視されるのである。負けてもまた次の勝負に向け努力をすれば良いのであって、大事な勝負所で敬遠する事は問題外である。そういう気質なのだ、と広野准教授から国民性について伺う。
正面突破を図れない程の大きな困難にさえ対処を行う方法論が武道のあるべき所ではあるが、米国民のかの清い精神を理解する事も今後の空道の米国普及にとって非常に大事な事であると強く感じた。

SNSとネットの活用と課題

いつもの通り、米国側との事前の打合せはメールで行われた。 行事の告知においては、メールのほかFBをはじめとするSNSを効果的に活用出来た事が今回の特徴であったと感じている。そのことにより準備期間も告知期間も短かったにも拘らず多くの参加者を集める事が出来、また、選考会の品質も保つことが可能となった。
アレキサンダー支部長とフー支部長(予定)の尽力に、ここでもまた感謝をする次第である。

ウェブデザイナーでもあるフー支部長(予定)作成の告知フライヤー
ウェブデザイナーでもあるフー支部長(予定)作成の告知フライヤー

映像の権利についてはフリーとした為、セミナー、昇段審査、選考会の映像は直ぐにFB等にアップされる事となった。アップされた映像はシェアにシェアを重ね、瞬く間にネット上に拡散していった。たった今行われた事が、ほんの数分後には、全米はもとより世界の各地に届けられているのである。
今回の行事は幸い120%の成功を収める事が出来、従って審査や選考会のレベルは初回にしては十分な品質を保ったものであった為、撮影され配信されていった映像の殆ど全てがポジティブな情報として評価を受け拡散していったように思われる。この事は、今後の米国空道の発展と展開にとって非常に歓迎されるべきことである。
仮に行事の品質が保つ事が出来なかった場合は、ネガティブな情報として瞬く間に世界に広がっていただろう事は想像に難くない。
映像に権利を定めたとしても、誰もがSNSを活用する現況において100%の管理をすることは不可能であると思われる。
我々の意志に拘らず、映像は拡散する。
その事を念頭に置き、来る世界大会を始めとする全ての行事や行動において十分以上の品質を持たせるべく、全ての大道塾・空道関係者が高い意識を持って行動しなければならない、という事をあらためて強く訴えるものである。

終わりに

多忙を極める中でこの度このような機会を設けて下さいました塾長及び大道塾総本部へ御礼申し上げます。
奥様先生、手続きの全てをして下さいましてありがとうございました。
神山支部長、中西支部長、派遣団に加わって下さいましてありがとうございました。また、随行中のご指導ご鞭撻ありがとうございました。これをご縁に、今後益々よろしくお願いいたします。
東由美子事務局員、企画、派遣団の行程管理、行事開催の全ての工程管理についてありがとうございました。
マキシム・サモヒン正指導員、米国人が初めて生で見る空道を、美しいものとして力強く表現してくれてありがとう。
ジェームス・アレキサンダー支部長、全ての行動に、そして勇気と努力に感謝します。米国空道は貴君によってついに始まった。今後、貴君の為に私はどんな支援も惜しまない。
モン・フー支部長(予定)、私たちを信じてくれて、そして大道塾・空道に加わってくれてありがとう。
ブランドン・ハルステッド、デトロイト空道の火を守ってくれてありがとう。
いつも明るい広野達志准教授、この度もまたお世話になりました。改善精神に深く感銘を受けました。
そして、スコット・マックズーガを始め米国で出会った全ての方々、留守中の秋田を守ってくれた皆に感謝します。
これからも空道の発展の為この身を捧げる所存なれば、各位ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。

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2014.10.7更新

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