遠征記高橋英明

新宿支部所属の横井初段と、今は総本部事務局の一員となっている由美子(塾長のお嬢さん)と3人で、9月23日から25日までの3日間、バルセロナでセミナーを開催してきました。横井は、仕事の関係で先にバルセロナに入っていたので、由美子との二人旅となりました。
バルセロナ支部は、9年前に横井がバルセロナで生活していたときに、ある出来事(知る人ぞ知る)があったことから訪ね、そのときに開催した公開稽古がきっかけとなってスタートし現在に至っています。今回のセミナーの目的は、そのバルセロナ支部の塾生に対して、特に支部長のデイビッドに対して、体系的な稽古方法、試合のための稽古方法、および指導方法を指導することでした。モスクワでのワールドカップの際にデイビッドから塾長にお願いし、承認していただいたものでした。
また、私としては、欧州での次のワールドカップ開催に向けて、スペイン、イタリア、フランスの交流を促進したいということも目的としてありました。 残念ながらフランスは、ニースで土田支部長が開催するセミナーと日程が重なって参加できませんでした(後述するお祭りのため、ホテルがまったくとれない状況もありました)が、イタリアからはレッチ支部長をはじめとして黒帯3名が参加してくれました。

初日(金曜日夜)の2時間は、基本稽古を中心に移動稽古までを丁寧に指導し、土・日の2日間はそれぞれ4時間ずつの技研、3日間で合計10時間の稽古を行いました。1回で4時間の稽古は長いと言われましたが、こっちは往復30時間かけて行くわけだから、その3分の1程度は教えさせろよということです。

土・日の稽古のメニューは、基本的に新宿支部の日曜日の稽古でやっている以下のことを、各項目1時間ずつに圧縮して実施しました。新宿では4〜5ヶ月かけてひとまわり実施していることを、8時間で行ったわけです。一部は省略しながらでしたが、空道の多面性と面白さを伝えたいと思い、本来のメニューの70%程度をやってみせました。その中の約半分を、実際に対人で練習してもらったということになります。また最後に5分ほど時間を残して、護身術もちょっとだけやってみせました。

  1. 蹴りに対する防御と反撃、および蹴りでの攻撃
  2. パンチに対する防御と反撃、およびパンチでの攻撃
  3. 2〜4連打でのパンチと蹴りのコンビネーションによる攻撃
  4. タックル、および掴んでの打撃
  5. 投げ技
  6. 絞め技
  7. 関節技、およびグランドの基本
  8. 試合前の練習方法(各種のスパーリング方法)

覚えきれないだろうと思って、8頁の簡単な資料を作成し、事前に配布しておきました。スペイン語版へは横井に、英語版へは由美子に、イタリア語版へはレッチに、フランス語版へは土田に翻訳してもらったので、日本語版とあわせて5ヵ国語版がそろいました。全世界100ヵ国くらいで使えるのでは? ひと財産です。

参加者は、36名+見学者数名。基本的には選手志向の塾生を対象として少人数で実施するが、基本・移動稽古には誰でも参加してよい、技研は初級者どうしで組んで体験することも可とするということにしていましたが、バルセロナで最大のお祭り(「人間の塔」を知っている人もいるでしょう)と重なった週末にもかかわらず、思ったよりも多くの人たちが、熱心に参加してくれました。通常の稽古時間は1時間半ということだったので、4時間の稽古の中で集中力が切れることも心配しましたが、無用な心配でした。また、スペイン人にもイタリア人にも、時間に対してルーズな印象を持っていたのですが、週末の朝からの稽古にもかかわらず、皆、時間前に集合しており、見直しました。さすが大道塾だ。支部長がしっかりしているのでしょう。

たまたま数日前から、ロシアの元少年部チャンピオンのアレックスがヨーロッパ大学に留学するということでバルセロナに来ており、アレックスも急遽3日間、稽古に参加しました。見た顔だなと思っていたら、彼は、モスクワに行ったときにお世話になったアンナの従兄弟です。空道の経験年数は8年ということで、荒削りなところはありますが技術はしっかりしており、上記メニュー1〜3の打撃は主にアレックスを相手にしていろいろなパターンをやってみせることができたので、参加してくれて助かりました。ビデオにTシャツ姿で映っているのは、稽古着が届いたのが3日目だったことによります。 スペイン語への通訳は横井が、英語への通訳は由美子がしてくれ、私は日本語での説明に集中できたので、これもたいへん助かりました。自ら英語で説明しようとすると、細かいところの説明まで準備するのがたいへんで、たぶん説明する際にはフラストレーションがたまると思います。おかげで教えることに集中できました。 教えているシーンをビデオ撮影しましたが、土曜日4時間目の「タックル、および掴んでの打撃」はバッテリー切れで映像なし、またときどき操作ミスで撮影できなかったところがあったにもかかわらず、終わってみると全部で45シーン、約2時間30分の映像が残りました。上記1,2,3,5,7の各駒から、もっとも基本的な部分のみを1シーンずつ、アップしました。


<稽古場所は、サグラダファミリアから歩いて15分ほどのところにあるジム>



<稽古完了後の集合写真を2枚。
まだ稽古着はまちまちだが、早くそろえたいとのこと。>


<最後の夜の会食の後で、イタリアの3名およびデイビッドと。
左からパオロ、由美子、私、レッチ、横井、ロリ、デイビッド。
体重110kgのレッチとは同学年だということがわかった。
腕ひしぎに行くために四つんばいのレッチを持ち上げようとしたが、110kgは重かった。>

セミナーが終わった翌日の月曜日は早朝4時半にホテルを発ち、ローマ経由で成田に着いたのが翌日の早朝6時20分、8時45分には出社して普段の世界に戻っていました。
木曜日の深夜にバルセロナに到着してから月曜日の早朝に発つまで、稽古以外の時間も含めて、きわめて密度の濃い3日間でした。どうせ行くのであれば、おいしい食事ができ、おいしい飲み物がある土地だと楽しみが倍増します。短い滞在にもかかわらず、いろいろな経験と発見がありました。
来年の夏は、バルセロナ支部とイタリア支部と合同でのサマーキャンプを計画しているそうです。ヨーロッパの各支部が交流を深め、技術の向上とともに、次のワールドカップを協力して開催できることを願っています。

これまで海外に指導に行った支部長等は、皆同様に、参加者の真剣さや目つきの違を感じたことをレポートしています。 彼らにとって、直接指導を受けられる機会は、次は何年後になるかわからないわけであり、1度で吸収しようとする真剣さがあります。 今回は、今後デイビッドが指導の幅を広げられるように、私自身はデイビッドを中心に指導し、彼以外の塾生に対してはあまり直接的な指導はできませんでしたが、今後は、デイビッドの指導の下で、いっそう高いレベルを目指してほしいと思います。
日本の各支部で指導を受けている塾生も、支部長からの指導を1度で吸収しようという意欲をもって毎回の稽古に参加すれば、向上のスピードは格段にあがるはずです。

最後に、セミナーの開催を許可していただいた塾長と、いろいろご支援いただいた事務局長に感謝いたします。また、無理に仕事をからめて同行してくれた横井と、当初予定だった味気ない一人旅を楽しいものにしてくれた由美子にも感謝します。
皆さんが期待しているような珍道中は、この三人に限ってはありませんでした。

高橋英明(新宿支部)

更新日2011.10.16

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