九州地区2013年4月6日 粕屋町総合体育館

九州地区予選結果※クリックで表示

レポート:東孝(塾長)

九州地区は支部が今の所、福岡県と大分県にしかないという事で予選の参加者は、-230クラスに10人、-240クラスに4人、250+クラスに4人と参加者数は20名前後で北海道予選と似ているが、北海道予選が重量級に激戦が多かったのに比べて、ここでは軽量級と言って良い、-230や-240クラスに激戦が多かった。

-230クラス前半ではベテランの長谷川が、2戦とも、得意のグランド(絞め)を極め-230クラス決勝へ。-230クラス後半、九州予選では度々上位進出し昨年の大会では-230クラス2位の田中正明が、同じく2012年1位の野崎と2勝同士で対戦したが、右ストレートで「効果」を奪い-230クラス決勝へ。

-230クラス決勝戦、自分の得意技であるグランドで戦いたい長谷川朋彦。一方離れてパンチ勝負に行きたい田中正明。試合中盤、長谷川はパンチを貰わないようにして待望のグランドに持ち込む。みんなが「あ〜、これで決まりだ」と思った所、いつもはここで寝技で取られてしまう田中、しっかり足腰を安定させてガードポジションから引き込もうとする長谷川に抵抗し逃げ切った。時間で立ち上がる両者。しかし、共に40歳を超すベテラン。一日に4戦はキツイか、スタミナの勝負ともなった。長谷川がワン・ツーフックから組技に行こうとする所に、田中の右下段がタイミングよく入り、大きく崩れる所にすかさず田中、二ー・オンで効果を奪い-230クラスを初制覇した。

続く-240クラスは4人の総当たりだが、共に柔道の経験から来る投げ技や、空道入門後習得した鋭い打撃を持ち度々全日本出場を果たして06年には全日本-240クラス2位に入賞した巻礼史や、同じく本格的な背負い投げを持つ古閑康孝、それに柔術経験で寝技戦に持ち込むと手強い、沖縄の地で空道の炎を燃やし続ける吉濱実哲と多士済々だ。結果はやはり打撃と投げ技をうまく組み合わせて3勝した巻が、久し振りに出場した古閑に対し、寝技でのフック「効果」を含む「効果」2で圧倒し優勝した。巻は病院勤務の理学療法士で中々、定まった練習時間が取れない中でも、10年近い選手生活を続けている、正に「社会体育」を体現している選手だ。昨年もこのクラスの準決勝戦。優勝までただ一つの「効果」も許さなかった北斗旗随一、伝説の業師、飯村健一から得意の寝技で「効果」1を奪い「金星か!」と台風の目となった。是非もう一段上の世界を見て欲しいものだ。

最後の250+のクラスは、249で九州本部指導員として度々全日本にも出場しているベテラン森卓也が今回は該当する階級に相手がいないという事で20kg以上重い3選手に対戦した。2,3年前の森なら十分に勝機はあったので組み合わせたのだが、練習不足で苦杯をなめた。コンスタントに練習していれば技術的には九州地区一なのだから復活を期待したい。269で東北大会の日に災害待機で出場できず九州予選に賭けた菅原智範は、打撃を出した後の防禦の甘さが出て津田や松永に返しでの打撃で「効果」を取られ敗退したが、業師森には打ち勝った。殴られて燃えるタイプなので、早めの始動が肝心だ。271の津田雄一は、フルコン出身で柔道の練習も続けていて12年九州大会春の260+と秋の無差別と今回の優勝で3回九州の重量級を制している。是非、全日本にも挑戦して貰いたいものだが、278でベテラン森や菅原にも勝った松永卓也同様全日本には出ない。なぜだ??

大道塾総本部と九州の距離(1090km)と北海道(880km)の距離の差は約200kmだが、このネット時代に物理的距離が200kg違ったとしてもそれは大した差ではないように思うのだが、近くに大道塾総本部発祥の地である仙台がある北海道との差だろうか、九州本部が1986年に始まり、北海道本部が1995年に始まったのだからちょうど10年の差がある。それにしては九州地区と北海道地区の展開に差が出てきているのは、寂しいことだ。

それは北海道が多くの地方と同じように中央志向的な空気を持つような気がするに比べて、九州は九州で完結しているような独自の空気(九州っぽさ?)が強い故だろうか?例えば、「北斗旗」命名の一つの理由が、言わば九州での地方大会なのに、いまだに全国高等学校総合体育大会柔道競技大会(インターハイ)、全国高等学校柔道選手権大会にならぶ高校柔道の三大大会の一つである“金鷲旗”大会(Wikipedia解説)のような。

しかし既に、明治維新後の「文明開化」の時代に柔術から柔道へ脱皮し、日本の国技というほどに発展し1964年の「東京オリンピック」以降はオリンピックの「正式競技」の中でも、競技人口と組織力で有数の競技として盤石な権威が確立され、選手の実力を発表する場を無数に持つ競技、団体ならば、“金鷲旗”のような、地方に根付いた大会もある意味、“余裕”として許されるのだ。

しかし九州における空道の発展の礎、橋頭堡(きょうとうほ)となるものは、この「九州大会」だけなのだ(当然、全国からこの大会を目指して選手が集まる訳ではない。あくまでも地方予選なのだ。)武道(空道)の選手を「自ら厳しい山に臨んだ登山家」に例えれば、いわばエヴェレストを目指したのに、途中の峰(座)で満足し、最高頂点を目指さなくなるようなものだ!!それは自分の成長ばかりではなく、九州・沖縄地区での空道の可能性をも細らせてしまうだろう。かと言って遠隔地の大会に選手一人の責任で参加することは、物心両面で難しい事もあるだろう。だからこそ、いつも言うように、(登山家を応援する人が多くいるように)回りの塾生も、選手一人の事とせず、みんなで「俺たちの代表に、中央で暴れさせよう!」という気概と、代表を中央に送れるような支援の態勢(募金、積み立てなど)を作って欲しいものだ。でなければ宝の持ち腐れである。九州地区塾生の覚醒を願う!!

ともあれ、今年の「体力別大会」九州地区から世界大会戦士として一番の可能性を感じるのは、前述したように、昨年の全日本の-240クラスでベスト4に入った巻礼史だろう。持ち前の組技を土台に、あと一ヶ月、打撃にもっと磨きを掛けて、ぜひとも日本代表の座を奪って九州地区の空道を盛り上げて貰いたいものである。

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2014.4.14更新4.15加筆修正

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