第二章 イギリス編

14日 |  15日 | 16日

14日

痛たたたたた。今はカイロからロンドンに向かう機内のトイレの中。今朝、ヨセフ、モハムド、エマニュエルに空港に送ってもらった際、朝食としてアエーシ(パン)に、フール(豆の煮込み)とターメイヤ(そら豆を潰して揚げたもの)を挟んだエジプト流サンドイッチのファストフードが悪かったみたいで、強烈な下痢に苦しめられています。まいりました。「まぁでもこれも過ぎてしまえばいい思い出になるんだろう。それもこれも大道無門だな。」とは思いつつも・・・。あいたたた。(;_;)
5時間のフライト中、10回くらい座席とトイレとを往復し、げそっとなりながら、お昼ちょうどにロンドン到着です。
今回のセミナー主催者で、新たにロンドン支部の支部長となるリー氏が迎えにきてくれてました。当初塾長から彼の名前を聞いたとき、リーというからてっきり中国系だと思ったら(つまり李さんですね)、イタリア系ですと。そういえば昔、リー・ヘイニーとか、リー・ラブラダなんて名前のボディビルダーがいたなぁ。彼らがどこ系かは知りませんが、意外と西洋でも「リー」って名前はポピュラーなのかもしれません。年齢は42歳。見事にシェイプされたヘビー級のマッチョな身体。着ている服はそれを強調するぴったりした薄手のセーターですが、色はダークピンク(!)。スキンヘッドなんで遠目には恐面に見えますが、近くで見るとつぶらで優しげなお目目がぱっちり。何かいろんな意味で存在感がありますねぇ、この人。(^^;) 昔はリングスやK−1等でプロファイターとして活躍し、日本に来たこともあるそうです。「何でそんな彼が今は空道に?」と思ったんですが、「昔はただ単に強くなりたいとそれしか考えてなくてプロ格闘技の世界に入ったんだけど、経験を積むにつれて裏の世界が見えてくるようになって(※つまり「どういった人達がお金を持って運営しているか」ということですね)、それが嫌で辞めた」とのことです。イギリスでの格闘技界の現状を聞くと「今はイギリスでもマスコミの話題はMMA (Mixed Martial Arts 総合格闘技)のことばかり。ケージファイトやUFCなどが隆盛で、武道の地位は低くなっているけど、皆もその内に気づくだろう」と言っていました。世界どこでも同じことを感じている、考えている人たちがいるんですね。改めて「総本山である日本の我々がしっかりしないと」と思いました。

ホテルへ向かう途中、街の風景を眺めます。私はイギリスは初めてですが、はぁ〜、やっぱいいなぁ、ヨーロッパは。やっぱエジプトとは全然違いますね。(※この「エジプトとは違うな〜」という言葉は、今回のイギリス遠征の間中、塾長と私の Favorite Wordsとして、何かある度、二言目にはすぐこの台詞が出ていました。(^o^;))
特にイギリスは全ての建物に統一感があって、とても落ち着いていて素敵です。これらの建物、全部100年単位なんだろうなぁ。歴史や文化を感じます。もっとも現地の人たちに言わせると、今ある建物の外観を変更しようとしてもかなり規制がうるさくて簡単にいかなかったりとか、かといって新しい建物を建てようとしてもそのデザインには周囲の風景との調和を求められて、例えば建築デザイナーなどは「自由度が低すぎて腕の振るいようがない」などといったような問題もあるようです。だからヨーロピアンから見ると「東京は(新しい建物ばかりで)とてもクリーンだし、(いろいろなデザインがあって)とってもエキサイティングで素敵な街だよね〜」なんてことになるようです。私は基本的には自由度が高い社会が好きですが、日本なんかでは逆に「何でもあり」すぎて、「これはちょっとどうかな」というものも結構あって、それも嫌だったり。まぁ要は「人は自分にないものを求める」「隣の芝生は青い」ってことなのかもしれません。(^^;)

宮殿のようなホテル。一番左がロンドン支部長のリー氏。

宿泊先であるベルージャ・エデン・パーク・ホテルに到着です。外観は「これどこの宮殿?」ってな感じです。本当にイギリスは全部の建物が意味もなく雰囲気たっぷりですね。チェックインにはまだ時間があると言うし、リー氏も外に止めている車が心配そうな様子なので「今日はもういいよ」と、ここでお別れ。塾長と私は荷物をホテルに預け、昼食に出かけます。
この近隣にはいろんな国の人が住んでいるというので、様々なお国料理のレストランが並んでいます。日本食もあったので、そちらにしました。塾長は「フライト中、ほとんど動かないで食べてばかりだから、腹がくちくて」と言われ、私も先に述べたとおり調子が悪いので、二人で一番シンプルな「Vegetable Ramen」を注文。しかし出てきたものは・・・。ほんの一つまみの茹でたホウレンソウに、薄くスライスした御揚げが具に乗っているだけの、いわばきつねうどんのラーメン版でした。(^_^;)ショウジキ、ビミョー 「Vegetable」と言うから、野菜たっぷりのタンメンを想像したんですけどねぇ。
更に、塾長が「こしょう頂戴」と言ったら、一見して中国人と分かる無愛想なウエイトレスさんが出してきたのは七味唐辛子。「いや、違う。これじゃなくて」と言うと、露骨に不機嫌な顔で「これはChili “pepper”よ」。「いや、だからね」なおも言うと「ウチにあるペッパーはこれだけよっ!」。まさに額から稲妻が出ているかのような形相で返され、さしもの塾長もタジタジ状態。(ToT)コワイヨー
ここは日本(風)料理を食べさせてくれる店ですが、合わせて日本の「もてなしの心」を期待するのはやはり無理のようです。
しかし日本って凄い国ですよねぇ。なんたって「お客様は神様です」って言うんだから。つまり「接客サービス=神への奉仕、宗教活動」になるんですよ?世界中どこを探したって、こんな民族、他にいませんよね。
そう言えば、昨年モスクワに行った際、通訳についてくれた学生にこの話をしたところ「いえ、ロシアにも似たような言葉はありますよ。ロシアでは『お客様の言うことは、いつも正しい』と言うんです」と言われて「へぇ〜っ」と思ったんですが、それもつかの間、「でも私はその言葉は間違っていると思います。お客が間違うことだってたくさんありますから、いちいちそんなことを聞いてられません」と続けて言われてガクッとしたことがあります。(^_^;)ダカラソレガチガウンダヨ
そんな話をしていたところ、ビックリしたことに、リー氏が顔を出しました。先程ホテルで「ここでいいよ」と別れたものの、やはり心配して、すぐに車を預けて、後を追ってきたようです。特に塾長がトレーニングできる場所を探していたので、それがちゃんと見つかったかどうかが心配だったのでしょう。塾長曰く「ほんとにこいつは真面目でしっかりしているんだ。今時日本人でもなかなかいないタイプだよ」。確かに。ですからその後、その日本人以上に日本的な彼に向かって「いいか、ここは日本レストランだが、本物の日本レストランではないぞ。本物の日本レストランというのはだな、まずウエイトレスさんが笑顔で、お客様に対して心を込めたサービスを云々」と突然塾長が講釈を始めたのは、彼に日本文化を正しく理解してもらう為であって、無愛想なウエイトレスに対するあてつけなんかでは決してなかったことは言うまでもありません。(^o^)

とっても狭いシャワースペース

食事の後は近隣を散策。フィットネスクラブも無事見つかって、それからホテルに帰って一休み。ホテルの部屋は狭いです。もしかしたら、日本のビジネスホテルより更に狭いかもしれません。特にシャワースペースの狭さときたら絶句モノ。縦横5〜60cm四方くらいしかないんじゃないでしょうか? こんなsmall & skinny guy の私ですら窮屈なこのスペースで、どうやったら体重100kgオーバーがゴロゴロしているおデ○なイギリス人が身体を洗えるんでしょう?もうピラミッドがどうやって作られたかと同じくらいミステリーですね。(?_?)
ところで、最近日本に来る外国人旅行者の一部にとても人気がある観光スポット(?)の一つとして「カプセルホテル」があるそうで、実際に利用者が急増しているとか。「すごく小さな狭いスペースにも関わらず、とても快適に過ごせる空間に仕上げている」そこが実に日本的でユニークなんだそうです。確かに日本人は盆栽などを始めとして「小さいことに価値がある」というか、いろんなことをコンパクトに仕上げる「縮み志向」とでもいうべき気質があるのは事実だけど、「それって以前『ウサギ小屋』って言われていたような日本の狭い住宅事情をからかっている部分もあるんじゃないの?」と少々引っかかるものを感じていたんですが、このホテルを知ったら、なんか納得する部分も・・・あるかなぁ。あ、けれどもこのホテルは、「(値段と比較して)すごくいいホテルですよ」とここに宿泊されていた別の日本人客の方(後述)がおっしゃっていました。誤解のなきよう、念の為。

夜には、塾長の娘さんである由美子さんと合流です。由美子さんは二年ほどこちらロンドンに留学されていたので、その卒業に関して何か教授とミーティングがあったとかいうことで、ちょうどこちらに来られたそうで。いや〜、しかし由美子さん、素敵な女性になりましたねぇ。(*^^*)
もういつのことかも覚えていない、ずうっと小さい頃に一度か二度見ただけだったと思うんですが、可愛らしいちっちゃな女の子が、今ではこんな素敵な美人になって・・・。ほんとに良かったなぁ、塾長に似ずに。(*`Д´)=○)Д゚)バキィッ(押忍、失礼しましたーっ!)。
ちなみに、その由美子さんには、遠征の間中、何くれとなく、体調の悪い私を気遣っていただいて、癒されました。本当にありがとうございました。m( _ _ )m
その後は食事がてらに夜の観光に連れて行ってもらって、ビッグベンやテムズ川の風景、繁華街のざわめきなどを楽しみます。夜のロンドンも、また格別な味わいがありますねぇ。独身男性の皆さんは、イスラムの女性だけでなく、ロンドンの女性とも恋に落ちる準備をしておいたほうがいいかも知れません。(^o^)

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15日

セミナーは明日。なので今日もフリータイムです。
今日はまず地下鉄に乗って、ボロマーケットという市場へ向かいます。地下鉄に乗るのも、市場に行くのも、通常の観光ツアーでは体験できないことなんで、とってもワクワクしますね。(^^)
ロンドンの地下鉄には「チューブ」という愛称がついてますが、うーん、確かに天井が丸くなっている地下鉄構内は、まさにチューブの名前どおりのイメージです。

「Tube」と呼ばれるロンドンの地下鉄。確かにチューブだ

途中、バリー(男性)とメレデス(女性)という二人の由美子さんの友人と合流し、それからボロマーケットへ。ボロマーケットはロンドンが誇る巨大な食材市場。肉や魚貝類、野菜に果物、チーズにハムに。とにかくいろーんなものが揃ってます。イギリスと言えば、食事がまずいことで有名ですが(笑)ここでは食べるもの食べるもの、みんな新鮮で美味しかったです。とは言うものの、ここはイギリスの食材市場にもかかわらず、実際にはスイスチーズだとか、スペインのイベリコ豚、イタリアのパルマハム等、外国の食材があちこちに並んでいまして、私たちが食べたものも、実はそういうものも多かった。頑張れ、イギリス!負けるな、イギリス!!・・・と一応書いておきましょう。(^^;)マァ ニホンノノウキョウモ オンナジヨウナモノダカラ。
歩き回って疲れたので、パブで一休み。

キングスクロス駅外観

その後、ロンドンブリッジを見てから、二階建てバスに乗って、ハリーポッターで有名なキングスクロス駅へ。9と3/4番線の前で、しっかりと記念撮影させていただきました。(^^)/イェーイ
ちなみにハリーポッターをまだ読んだことがない人は、ぜひとも早く読んでくださいね。絶対におもしろいですから。

pm3:00くらいにホテルに帰ってきて、塾長は、昨日探しておいた近所のフィットネスクラブへトレーニングに。私も少し行きたい気があったんですけど、体調もいまいちでしたし、先生にも「無理すんな。休んでろ」と言われたので、部屋で休みながら、明日のセミナーに備えて、もう一度使いそうな英文のおさらいをしていました。

夜の食事はもう一度、例の日本食レストランへ。ここではリー氏も同席です。「第二回世界大会は日本(Japan)とロシア(Russia)の「二極体制」だったのが、第三回大会では更に、イギリス(United-Kingdom)、アメリカ(America)、中東(Middle-east)、ブラジル(Brazil)の四カ国(地域)が食い込んできて「多極化」するだろう」との塾長の予測です。「いちいち国名を挙げるのも面倒なんで、その多極化体制に『BRICs』」のような名称をつけようか」と言うことで、皆で国名頭文字パズル(笑)に悩んだ結果、一応「JUKRAMB(ジュクラム)」という仮称がつけられることになりました。あくまで仮称なので、より良い名前があるという方は総本部まで。(^^) 
あ、それから、パズルと言えば、「イギリスでは数独がブーム」という話はガチネタでした。私的には「例によって針小棒大に騒ぐマスコミの作り話半分じゃないの?」と疑う部分もあったんですが、朝の通勤時の地下鉄などでは、本当に皆が皆と言ってもいいくらい、大勢の人たちが数独をやっている姿が見られるのだとか。大道塾の道場訓「文に親しみ知力を練り」は、イギリスではそのうち「数独に親しみ知力を練り」に変更されるかもしれません。(^o^)ナイナイ
塾長はその後、リー氏と夜の街へ。例によって体調不良の私は、ホテルに帰って、早目に就寝しました。

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16日

さて、いよいよ今日はセミナーです。下痢はまだ止まっていませんが、トイレの回数は激減したので、今日一日何とか頑張れるでしょう。正直なところ、食べ物を入れると腹が下りだすので、朝食もどうしようかな〜と思ったのですが、スケジュールを確認すれば、昼の11:00から夕方までセミナー&審査会が続き、途中の休憩時間は一時間もなさそうです。さすがに何も入れなかったらエネルギー切れで身体が持たんだろうと思い、朝食を食べにレストランへ。
特にこのホテルでは朝食の予約はされていなかったので、一人で行って、一人でメニューを注文してというような、そんなほんの他愛のないことも「経験」の一つとしてやりたいなと、そう思ったわけです。一人でベーコンエッグにトーストの簡単な食事を済ませ、紅茶を飲みながらボーっとしていたら、「あの・・・日本人の方ですか?」と声を掛けてきた人が。見れば50代半ばくらいの上品そうなご婦人です。「あぁ良かった。海外で日本人に会うとやはりホッとしますね」と言ってくださり、それは私としてもまったく同じ気持ちなので、「これも何かの縁ですから、どうぞどうぞ」と同席することに。
ところが偶然出会ったこの方がすごい方でした。白石正子さんとおっしゃる陶芸家。陶芸というと小さな茶器などをイメージされる方が多いと思いますが、彼女の作品はさにあらず。縦横がメートル単位の物です。普段は岡山に拠点を置いて活動し、日本とニューヨークで年一回ずつ個展を開催しているとのこと。以前にワシントンの日本大使館でも個展を開いたことがあり、今回は日英国交150年記念の一つの催し物として、ロンドンの日本大使館で個展を開いているところだとか。(白石さんのHPはこちらhttp://www.earth-arts.jp/)私も自己紹介しましたが、「どこにでも、国際的に活躍されている日本人の方はいらっしゃるんですねぇ」とおっしゃっていただき(大変恐縮です。押忍)、更に「私もね、もっと大きな外の世界でチャレンジしたいって思ったのよ。日本はやっぱりいろいろな規制が多くてね。NYは開放的でとても好きよ。ロンドンはやっぱりNYよりは少し閉鎖的な感じかしら」等とおっしゃいます。はぁ〜。白石さんには37歳と36歳になる娘さんがいらして(と言うことは最初「50代半ばくらいかな?」と思った私は大外れ)、お孫さんも一人いらっしゃるそうですが「いやー、いいですねぇ。じゃあ、きっと自慢のおばあちゃんでしょう。若々しくて、キレイで、自分の世界を持ってバリバリ活躍してて」と言ったら、大照れに照れて笑っていましたが、その笑顔も何か可愛らしい感じで・・・う〜ん、素敵だなー、この人。(*^^*) 素敵な人との素敵な出会いに元気をいただきました。神様、ありがとう。よ〜し、今日のセミナー、頑張るぞー!(^o^)/

10:30、ロビーに集合。
ハンガリー支部長のコントとネリーさんに、二年ぶりの再会です。コンティ(コントのニックネーム)とは二年前のハンガリーセミナーで出会って以来、ずっとメールのやり取りを続けていて、待望の再会。あぁここにも素敵な人との素敵な出会いが。コンティからは「以前に会ったときより、若くなったんじゃないの?」と言われましたが、それはきっと毎日が幸せなせいです。ありがとう、神様。(^^)

セミナー会場着は10:55。開始5分前。さすがイギリス。やっぱエジプトとは違いますねぇ。(^o^)ヤッパリコウデナクチャ
今回は支部発足の為のセミナーなので、道着を着ていない人もゼロ。あぁ、ありがたや。と言うわけで、セミナーは至極順調に進みました。
前半は基本稽古と組んでの膝蹴りに対する足払いが中心。

片袖片襟からの引き崩しの指導

休憩の後は、投げ技中心のメニューで進みます。最後に私のパートが来ましたが「やっぱりこれが一番空道らしいだろう」ということで、エジプトに続き、片袖片襟の崩しから蹴り→足払いor投げのコンビネーションを披露しました。相手を務めてくれた生徒が「うまくやられよう」と思いすぎたのか、あまりにも無抵抗なので、逆に切り替えしがスパッと決まらなかったのがご愛嬌でしたが(苦笑)、まぁOKでしょう。撮影をしてくれていた由美子さんからは「大勢の外国人の生徒を前に気後れすることなく、しっかりした英語で指導をされて、とても brave を感じました。傍から見ていても『全然私が出る幕はないな』と安心して、撮影に専念できました」と言ってもらえました。(*^^*)/ワーイ 
まぁでもセミナーの英語は楽なんですけどね。しゃべる内容は決まっていますし、終始自分のペースで話せますから。対して日常会話は難しいです。じっと集中して聞いていて、話題が分かれば大体何のどのような話をしているかは聞き取れますが、ちょっとぼーっとしていたり、早口でぱぱっと言われたりすると、全然聞き取りがついていけず、すると何の話題かが分からなくなり、そうなるともうお手上げです。更に会話に加わろうとすると、瞬間的な英作文力が必要となり、この辺はまったくまだまだです。もっと英語の勉強をしないとなー。(-o-;)ハァー

ちなみに、塾長が英語ペラペラなことは皆ご存知のことと思いますが(※ご本人は「ペラペラどころか全然足りない」とよくおっしゃっていますが、それは「高いレベルに行った人が、より高いレベルを求めている」からそう言っているだけで、一般的、客観的に言えば、ペラペラといってまったく差し支えないレベルです)、実際に塾長と海外遠征を共にすると、そのペラペラな「英語力」以上に「英会話力」あるいは「英語コミュニケーション力」にビックリさせられます。
というのは、例えば日本人なら当然日本語はペラペラでしょう。でも日本人全員が「日本語での会話力があるか?」「日本語でのコミュニケーション力があるか?」と聞けば、答えは「No」でしょう。「会話がつまらない人(笑)」や「人とのコミュニケーションが苦手な人」はどこにでもいます。だから英語でも「英語力があっても英会話が上手じゃない人、あるいは英語でのコミュニケーションがうまくない人」というのは普通にいるでしょう。ところが塾長はそこがすごいのです。例えば、昨日もメレデスさんが「あまり自分から積極的に会話する子じゃないな」と見ると、折につけ話を振って、孤立せぬよう気を配ったりとか、あるいはエジプトでも、ヨセフやモハムドに振り回されながらも「チクリ」と皮肉の聞いたジョークで返して、怒っていることは伝えつつ、場の空気が決定的に悪くならないように和ませたりとか。そういうことをサラっとできる懐の広さと、しかもそれを英語でできる「英会話力」「英語コミュニケーション力」がホントに凄いのです。
ちなみに今日のセミナーでも「ハラショー」を連発し、怪訝な顔をするセミナー生に向かって「俺の最初の海外セミナーはロシアだったんで、ついグッドでなくハラショーと言ってしまうんだよ」と説明した後、「But I’m not a communist.」とやって笑いを取ったり。イギリスでは多くの素敵な人たちと多くの素敵な出会いを経験できましたが、やっぱり一番素敵な人は塾長ですねぇ。お世辞抜きにそう思います。はい。(^^)

その後の審査会も、セミナー同様、至極順調に進み、怪我人もなく無事終了。参加者のほとんどがキックボクシングと柔術の経験があるようで、立っても寝ても一定以上の高いレベルの内容でした。さすが「JUKRAMB」の一角を占める国です。我々日本勢としては、あと一年、死に物狂いでやらないと、第三回世界大会の結果はかなり厳しいものとなることは間違いありません。皆で気合を入れて頑張りましょう。

セミナー後は、ホテル近くのイタリアンレストランで懇親会です。遠くから車で来ている人がほとんどだったので、外から参加した人は、残念ながらコント夫妻とニールだけ。コント夫妻は、明日も朝から仕事ということで時間がないところ、せっかくだからと参加してくれました。ニールは、バーミンガムの先の方(だったと思う:笑)にある町で、弟と共に道場をやっているそうですが、彼も、格闘技、武道に対し、とても熱い思いを抱いているナイスガイで、いろいろと興味深い話が聞けました。
以前イギリスには大変なムエタイブームの時代があったそうですが、そのムエタイブームが終焉を迎えた大きな原因の一つが、「リスペクトがないから」ということだそうです。その昔、伝統派の空手はあったが、「教育的には素晴らしいものがあるが、そのテクニックは not effectiveだ(※1)」と。そしてムエタイがやってきてそのテクニックが effective のものだったのでとても流行ったが、ムエタイでは道着も着ない、帯もない。「試合で勝ってチャンピオンになる」という一つの価値観しかないために、プロを目指す人たちはいいが、そうでない大部分の人たちにとっては、気持ちの持って行きようがない、「ムエタイは not educational だ(※2)」と。それ故、今では一部のジムがテコンドーと提携し、その道着を着て、技術の習熟度、経験の年数に応じて帯を出すようなことをしているそうですが、それはやはり付け焼刃でしょう。対して「空道は effective な technique と educational な philosophy(※3)や system を両立させていて素晴らしい」とニールは空道をそう絶賛しておりました。

※1 effective 有効な、効果的な
※2 educational  教育的な 
※3 philosophy 哲学、秘訣、原理

思い起こせば、私が大道塾に入門した25年前、当時は「総合格闘技」という概念が生まれたばかりであり、空手に柔道を融合して誕生した「格闘空手」は時代の最先端を行く格闘技(武道)でした。
当時の塾生は、もちろん私も含め、誰もがその「時代の最先端を行く格闘技(武道)」を学べることに、誇りと喜びを抱いて稽古していました。今の(特に若い)塾生はどう感じているのでしょう? 「時代の最先端を行く格闘技(武道)は何か?」とそう質問されたとき、どう答えるのでしょうか? やはりマスコミの影響もあり「MMA(Mixed Martial Arts 総合格闘技)」と答え、「空道」と答える生徒は、もしかしたら少ないのではないかと危惧します。しかしこのニールの言葉や、一番最初に書いたリー氏の実体験などに触れる度「『空道』という武道(あるいは思想、哲学、文化)は、今現在でも時代の最先端を行っているのだ」と私は確信します。
そして彼らは、日本のことをとてもリスペクトしています。だからこそ、日本の我々は、もっともっと頑張らねばなりません。それは別に、一部のトップ選手だけのことではありません。例えば、あなたにもし外国人の知人、友人が出来たなら、その人はあなたを通して、大道塾なり、日本の武道なり、日本人なりを理解する訳ですから、私たち一人ひとりが空道大道塾を代表し、武道界を代表し、日本人を代表している気持ちで頑張らねばならないのだと思います。

さて長く続いた私のレポートもいよいよ最後になりました。毎度毎度のことながら、様々な刺激を受け、それ故自らを見つめ直すことになる海外遠征は、今回もいろいろと勉強になりました。
このような機会を与えてくださる塾長には、本当にどれだけ感謝しても、感謝しきれません。今回の遠征もありがとうございました。それから由美子さんにも大変お世話になりました。ありがとうございました。また留守を預かってくれた家族や道場生のみんなにもありがとう(長らく空けてゴメンね)。多くの皆様方のご好意に報いられるように、今後も尚一層の努力させていただきます。これからもよろしくお願いします。押忍!!

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