「第9回世界武術選手権大会」随行記

村上智章(中四国本部)

 10-12日 | 13-15日 | 16-18日 

11月13日

今日はまず、東京武術散手倶楽部秦選手の試合、平安、笹沢も応援態勢。平安、笹沢は大会、合宿等で顔を合わせているにしても、3人が顔を合わせるのは、今回で2回目。しかし、連携はスムーズ。思えば、3人はこの7月に中国散打「虎の穴」ともいうべき、中国武装警察隊の選手達と戦い抜いた同志、絆は深い。年齢、キャリアからいえば平安、笹沢、秦の順か。

秦選手の一回戦、相手は韓国代表、彼らの練習風景を見ていると、テコンドーが基礎にあるのか、速い蹴りとともに、ガードをあえて低く構えているのが印象に残る。打撃からすぐさま組み技で優位に立つ狙いか。試合開始、ステップ、打撃のテクニックは互角に思えたが、先方は打撃から押し込んで組み技へ。組み技になると相手が優位、それを嫌ってステップで打撃の間合いを維持しつつ、相手の不用意な打撃をさばこうとするのだが、相手は前にでて組み技を仕掛けてくる。この流れでポイントを奪われ、2ラウンドを先取されて敗北。結果は残念であったが、秦選手はまだ二十歳(!)この大舞台での経験は、これからの大きな糧になると思う。

いよいよ笹沢選手の2回戦、練習場に早めに入りUP。今回、選手用の練習場はかなり広いスペースで、雷台が1つ、マットが3つ備えてあり、端の方に大会スタッフのスペースが置かれ、そこで選手の確認、試合場へ先導、という流れ。
練習場では、スペースをとったもの勝ち、散打、套路の選手が入り交じって練習。套路(型)競技は徒手と武器術とにわかれる。武器術といっても、棍(棒)、槍、剣、(青龍)刀と多彩。そのスピード、身体操作、跳躍力とみていてなかなか迫力があり、興味深い。しかし、近くで武器をひゅんひゅんふりまわされると、「当たったらどうするのか」とかなりヒヤヒヤする。限られたスペースで我も我もと練習するのだから、事故が起きないのかなとも思ったが、そこはしっかり間合いを計っているのであろう、見ている限り、そうしたことはなかったよう。

笹沢選手、受付を済ませ、ヘッドギアと胴あての防具を装着し試合場へ。試合内容は、塾長の紹介に尽くされているが、感想を一言。笹沢選手、何かとらえどころのない強さというか、「あれ、あれ」という間に勝利を収めた感じ。一発の打撃が正確かつ強力ということなのか、相手は打撃のダメージで受け身を取りそこねた様子。1ラウンド勝利、喜びにわく日本選手団。がその喜びもつかの間、足のダメージが判明、一転、皆厳しい表情に。次の相手に気取られぬよう、湿布、氷で応急の手当。ホテルに帰ってからも、木本先生が入念なマッサージを施す。私がみていただけでも、3時間以上はマッサージをなさっていたのだから、実際にはそれ以上、夜を徹して治療に当たっていただいた。頭が下がります。明日はどうなるのか、不安を抱えつつ、就寝。

11月14日

早朝、木本先生のおかげでかなり調子がよくなったと笹沢。が、ダメージは残っている様子。さらに木本先生の治療は続く。午前中、杜振高先生の紹介で、中国格闘技界の有力者と塾長がお会いすることに。杜老師の運転する車で、オリンピックセンターの一室へ。そこで先方が自己紹介。中国格闘技界の実情と展望について、コンピューターを駆使しつつ映像を通じて説明いただく。

木本先生が、今回、散打に選手を派遣していただいた大道塾代表東孝先生ですと塾長を紹介すると、さすがに格闘技界における認知度は高い、「ダイドウジュク、クードー、よく知っています。」と応答、塾長が大道塾の活動状況、社会体育としての理念を説明、こちらも見てもらった方が早いということで、インターネットを使って、空道の試合を紹介。youtubeは便利。

歓談が続き、相互の理念を尊重しつつ交流の方途を模索するということで一致。玄関までお見送りいただく。中国格闘技界の実情を知り、また、大道塾の理念と活動を紹介するよい機会であった。が、三人の気持ちはどうしても笹沢に向かってしまう。会談を終え、早々に練習場へ。笹沢の動きをみると、(もちろん、ダメージを気取られまいとかなり無理をしているのであろうが)先日のダメージはほとんど感じられない。相手のガボン共和国代表も練習場到着、向こうもかなり意識しているのであろう、こちらをチラチラ見る。試合前の緊張。

選手受付を終え、会場スタッフに先導されて試合場へ。試合内容についてはこれも塾長の詳細なレポートを参照いただきたいが、ビデオ係としての感想、雷台上のめまぐるしい動きをカメラで追いつつ、応援したいが試合展開はカメラを通してしか見ることができない。結果的には圧勝、しかし、カメラ越しであれ苦戦しているのも伝わり、かなりやきもきした。ビデオ録画と応援とは両立するものではない。

2ラウンド先取で笹沢勝利、ベスト8進出。意気揚々と会場を後にする笹沢の姿をカメラで追ったが、心配なのはダメージ。医務室からアイシングの氷をもらって練習場に戻ると、やはり皆が心配そうに笹沢を囲んでいる。笹沢、「大丈夫です。」とはいうが、顔面は蒼白、昨日と同じ所を打撲したようで、明らかに昨日よりダメージは深い。病院の手配をしつつ、医務室へ。

医師団の見立てでは、「骨には異常がないようだが、レントゲンを撮ってみないとわからない。ここでできるのは応急処置だから、すぐ病院に行った方がよい。」とのこと。そこでアイシングを続けつつ、救急車で病院へ。病院到着、レントゲンの結果、骨に異常はないが、筋肉、骨膜などに損傷が見られ、激しい運動は無理とのこと。入賞を目前に棄権か、ということになったが、笹沢は「やります。」病院から湿布、鎮痛剤などをもらい、ホテルへ。塾長を中心に話し合い。結論として、「今の状態では棄権せざるを得ないが、木本先生の治療で回復した昨日の例もある。今晩はじっくり休ませ、回復を待って明日結論を出そう。」ということに。

11月15日

朝、笹沢、足の調子はよくない。皆、棄権に傾く。が、試合までまだ時間はある。ホテルで十分に休憩を取り、回復に努めるということで、田村先生と私の先発組は会場へ。やがて笹沢も到着。やはり出場は無理と判断。受付責任者に棄権の旨を伝えると「わかりました。棄権の場合には、チーフ・ジャッジ(主審)に正式な診断書を提出しなければなりません。医務室に行ってください。」とのこと。医務室に行くと、「こちらで正式な診断をしたわけではないので、診断書は出せない。」とのこと。昨日の病院に取りにいかねば、といっているうちに受付責任者の方から、「チーフ・ジャッジを紹介します。」との申し出。チーフ・ジャッジに正式に棄権をお伝えした。「診断書は今日中に提出しますので、よろしくお願いします。」というと、外国選手であることを配慮してくださったのだろう、「特に必要ありません。大丈夫です。」とのお返事。

そして、受付責任者から「これは重要な話です。笹沢選手はベスト8に入りましたから、来年の大会に出場できます。」とのお話。こちらから来年の話を聞きたかったところなので非常にありがたかった。確認のためもう一度、「来年の大会に彼は参加できるのですね。」と聞くと、「ええ、おめでとうございます。」とのお答え。感謝しつつ、練習場に戻り、メンバーにやりとりを伝える。棄権とはなったが、ベスト8確定、来年の出場決定とうれしい話。

主審より、診断書はいりませんという懇切な申し出はあったが、ルールブックにも診断書提出の項があり、念のため出すべきということで、病院に診断書を取りに。診断書を受け取り、会場でスタッフに提出、ホテルへ戻る。明日は所用のため塾長は北京出立。ホテル近くの韓国風プールバー(?)にてささやかな宴。

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