翌朝、Kさんと連絡をとり、そのジムまで同行していただけることになりました。又してもいい展開です。(後から聞いた話ですが、Kさんは東先生に会える喜びで興奮のあまり昨夜眠れなかったそうです。)待ち合わせをした夕方まで時間ができたので、チェックアウトまで先生はホテルのトレーニングルームに、事務局長と私は買い物に行って、その後市内観光をすることになりました。
ホテルを一歩出ると夏の太陽が待っていました。ハノイはずっと曇り空だったので青空もひさしぶりで気持ちも明るくなりました。
目的のドンコイ通りはサイゴン川から市内の中心に向かって市民劇場までのびる500mほどの通りで、シルクを扱うブティックやお洒落なベトナム雑貨のショップが立ち並び、ちょっと銀座のような雰囲気でした。シルク製品が驚くほど安く、センスもよく、しかも既製品のブラウスも体にあうようにすばやく直し(無料)をしてくれたり、と喜びポイントが多く必要以上にはしゃいで(深夜便で日本に帰るというのに)お昼前から体力を消耗してしまいました。ここは女性同士で来れてよかったです。
お昼にホテルをチェックアウトした後、炎天下、人民委員会庁舎や市民劇場を見ながら南ベトナム政権時代の大統領官邸であった統一会堂まで歩きました。統一会堂の敷地内には役目を終えた戦車が並べられていました。ここでは建物を見るというよりも、歴史的な事件のあった場所に立ったということの方が大事なことでした。
建物内の展示スペースで、歴史好きな先生は、ベトナム戦争で仏教徒の大弾圧に抗議し焼身自殺した僧侶や、南ベトナム(旧サイゴン)が陥落(かんらく)した象徴とでも言うべき、大統領官邸に戦車が突入した瞬間などの有名な写真に見入っていらっしゃいました。
先生の提案でサイゴン川クルーズに参加しようと船着場を目指して歩いている間に、空模様がどんどんあやしくなってきました。「多少雨が降っても何とかなるだろう」とおっしゃる先生について行った先にあったものは・・・
モーターボートでした。
案内に「クルーズ」と書かれていたので、てっきり大きな船で遊覧するものと思っていたのです。(一瞬、事務局長が不安気な表情をされました。)乗り込むやいなや、ボートは勢いよく出発しました。すごいスピードに顔がゆがみます。屋根しかないため縁からドブの匂いがする水がしぶきとなって私達に襲い掛かってきます。それでも3人とも笑顔でした・・・ここまでは。
出発して5分も立たないうちにスコールが降ってきました。
脇からは川の水、正面からはスコールのW攻撃に私達が「ぎゃーっ!」と大騒ぎしていても運転手はお構いなしです。前の席にいた先生が、足元にあったライフジャケットを投げてよこしてくださったので、事務局長とふたりでそれを盾にして身をかがめて雨をよけました。「どうしてこんなことに〜っっ!」と叫ぶ声も川の彼方に飛んでいくスピードでボートは走り続けました。
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ライフジャケットの間から決死の撮影 |
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「陸だーっ!」 |
「三輪さん大丈夫ーっ?」「はいーっ!」隣にいるのに声をかけあって安全を確認しなければならない状況に、しまいには笑いが止まらなくなりました。灰色の雲の下、スコールの中を疾走するボート、けたけたと笑い続ける日本人観光客・・川べりから私達を見ている人がいたら一体何事かと思ったことでしょう。
スコールが小止みになってきたころ、運転手がやっとボートのスピードを緩めてくれて、「ここで休むか」とボートを小さな船着場につけてくれました。放心状態のままカフェで苦いベトナムコーヒーを飲みました。
この事件で私は、人間は極限状態におかれると笑ってしまうものだということを学びました。
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