WARS6大会レポート

東北本部 佐藤剛

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後楽園ホールの中心にリングではなく北斗旗で馴染みの深い試合場(マット)が設営されている。
通常の試合場よりも一回り狭いそれが、WARS6の舞台だ。
名誉は勿論だが、そこには利権が確実にからむプロの格闘技興業。その殿堂である後楽園ホールの真ん中に設えられた艶気のないマット。
その存在・違和感が大道塾・WARS6の性格そのままであるような気がする。

5時過ぎ、そのマット上には感触を確かめようと思い思いのアップをしている選手たちがいる。
その傍らで牧野・高松を中心にスタッフが準備を急ぐ。
北斗旗とは異なる段取り、音響・照明・選手係・通訳と各係りの仕事も不慣れなことばかりだ。
本来、後楽園ホールという場所で、大道塾のようなアマチュア団体が興業を打つこと自体、無謀だといえる。
いや、興業を行うことではない。
興業を自分たちだけで作り上げようとすることが無謀なのだ。
だが北斗旗同様、今回のWARSも手作りの大会・興業である。
社会体育・武道の確立という理念を共有するリュットコンタクトの選手たちをフランスから招聘する。 その費用を捻出にも四苦八苦しなければならない、今や死語となりつつある清貧という言葉が大道塾ほどにあう団体も珍しいだろう。

格闘技のプロ興業は『試合内容+演出・運営』で採点されるべきものだ。
ボクシングや修斗など競技を見せることに重点を置く興業から、プロレスのような演出として試合を配列する興業まで性格は様々だが、観客をいかに楽しませるのか?
満足させるのか? それこそが問われる。

入場料を取り、興行という形式をとる以上、辛口の批評に耐えるしかないだろう。
その意味で今回のWARS6は赤点だったとマスコミから批判を受けるだろう。
甘受するしかない。
プロの興業として採点するなら、スタッフの懸命の努力、そのプロセスが評価されることはない。
すべては結果である。
アマチュアの運営する大会だから・・・という甘えは入場料を取る以上許されることではない。
例え、その入場料の殆どが選手の渡航費用などに充当され、演出を行う費用がないとしても、観客はそんなことを考慮してくれない。

しかし、である。
武道を『生き方』ととらえ、その人格を磨くことであるとするなら、潔い戦いの結果としての敗北もあるだろう。

修行の過程としての挑戦もある。
利益と売名のためでなく、自らの実力を試し養うための場として北斗旗がありWARSがある。
今回のスタッフもまた選手とともにWARSという大会にチャレンジし戦った戦友である。
とはいえ、数多くの不手際は1200名を越える観客の皆さんに誠心誠意謝罪する以外ない。
今回はスタッフの失地を選手たちが好試合で回復してくれた。
次回こそは・・・選手スタッフ一丸となり大会を成功させなければならない。

『新たなる胎動』と銘打たれた今大会のテーマは『着衣の総合武道確立』と『世界大会への準備』だ。  そのテーマをフランス“リュットコンタクト”チームとの対抗戦形式で行うことで、海外勢の力を推し量り第二回世界大会への試金石となる。
世界大会を見据えた戦いである以上、簡単な相手を選ぶわけにはいかない。
大道塾が簡単な相手など選ぶわけもない。

大道塾の『戦う実験室・WARS』の歴史を見てもそれがわかる。
WARSという試みは、まず素手とスーパーセーフを捨てグローブへの対応が可能なのか? 打撃の世界では世界標準であるグローブマッチへ乗り出すことで大道塾・格闘空手の打撃が本物であることを証明することから始まった。 グローブマッチ3戦目の長田賢一の対戦相手として選択した相手が元ムエタイ王者・ポータイ・チョーワイクンであり、グローブ2戦目で加藤清孝尚が対戦した相手はオランダの強豪、後にキック世界チャンピオンになるライアン・シムスンである。

その後、バーリトゥード、ブラジリアン柔術の台頭があり、総合格闘技としての大道塾の実力を証明するため修斗、パンクラストとの交流戦を実施。他の総合格闘技が裸体であることから道着を脱いだ森直樹の対戦相手としてプロ修斗ウェルター級ランカー九平選手、山崎進の戦った相手は修斗の中尾受太郎選手であり、当時すでにパンクラス若手筆頭といわれていた美濃輪育久選手である。
選手たちは不慣れなルールの投げ込まれながら、他団体の実力者たちと一進一退の攻防を見せてくれた。

そして今回のWARS6。

フランスチームの実力は・・・元柔道フランスナショナルチーム代表・バーリトゥードヨーロッパチャンピオン・フランスキックボクシング王者・サバット世界チャンピオンetc・・・その肩書きが栄光と実力を現している。

フランスの実力者たちを招いての対抗戦は、大道塾が2001年、世界大会を契機に世界へ発信した空道という新たな武道を世界へ広めていくための手段にもなるはずだ。
壮大な他流試合の場、北斗旗世界大会をマスコミはそう評した。
今回のWARS6の基本構図は大道塾vsリュットコンタクト、日仏対抗戦だ。だが他流試合という色合いも、そこにはある。あらゆる徒手格闘技の選手が参戦可能なルール、それこそが空道そのものでもあるからだ。選手個々のバックグラウンドは千差万別である。大道無門の精神が示すとおり柔道・サンボ・ムエタイ・サバットetc.多種多様な技術体系を持った選手が参戦する。その選手達が、ひとつのルールの中で正々堂々と優劣を争う。

今宵のWARSは、空道という新たな理想の力強い歩みである。

大道塾の歴史、そのページに記されるのは栄光か、それとも・・・。

文章日付2002.7

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