5月15日(水) 7日目
4:45起床、やはり少し疲れが溜まって来たか、5時間半も寝た。それでも多少眠いので15分位、寝ようと頑張ったが、一旦目が開いてしまうと、考える事は一杯あるし、する事も多いのでどうせ寝れないから起きた。つくづく貧乏性だな−と自分でも思う。膝が疼く事もあって風呂にとも思ったが、昨日みたいになっても時間がもったいないし、また眠ってしまうから取り敢えずパソに向かう。08:00朝食。09:00から少し部屋の片付け。10:00土田、クリストフ、ウィルフェルの三人が来て一緒にエッフェル塔を見に行く事にした。
2年前に来た時は、ノートルダム寺院の後、コンコルド広場を抜けてルーヴル美術館からシャンゼリゼ通りを凱旋門まで歩いて雨に止められたから、25、6歳の時にヨーロッパでの合同合宿の指導に来て以来ほぼ25年ぶりのエッフェル塔だ。シャンゼリゼ・クレマンソー駅で降りてシャンゼリゼ通りを横切り、フランスの英雄、シャルル・ドゴール元大統領の像があるグラン・パレの前を通り、ナポレオンが安置されているアン・ヴァリッドの方に向かい歩き、セーヌ側に架かるアレキサンダー三世橋(1893の露仏同盟の証)を渡り川沿いに北上した。天気は良いし風も心地良いしで、正に“サ・セ・パリ(これがパリだ)”を地で行くシチュエーションだ。
最近、土田は今までの貧民窟のような所を脱出してなんとこの14区に越した。最も彼に言わせると「屋根裏部屋」らしいが、なんにせよシャン・ド・マルスという、士官学校の方から芝生が真っ直ぐにエッフェル塔に伸びている公園(士官学校の錬兵場だった)でトレーニングしたり、エッフェル塔を真下から毎日見られるのだから、以前とは天と地の違いがあるだろう。途中、子供が車のパーキングロットから金を盗もうとしているのを発見したクリスは、職業柄すぐに近くの署に通報していた。それにしても日本の東京タワーはビルを跨いで立っており、周りは車の通りが激しいのに比べて、エッフェルタワーは周りが芝生で、その上に寝そべってタワーをほぼ真下から見られるので、余計その高さが際立ち凄い迫力だ。なんか自分までもが大きくなったような錯覚を起こさせ気宇壮大になる。
その後“カフェー”のテラスで昼飯、これ又“サ・セ・パリ”だが、これは、余りにそれらしくて“スノッブ(俗物主義)” とも言うのだそうだ。前回、飯村とコノネンコとで来たときのレポートにも書いたが、従業員の東洋人に対する横柄さには相変わらずで“ムカッ腹”が立つ。演武でもしてやると態度がガラっと変わるのだが、まさか昼からそうも行かない。土田が「東洋人だと見るとスパーのレジなんかでも平気で人を待たせて無駄話をしますからね。でもそれを気にしてたならパリでは生活できないですよ」と言っていたが、正に連中の優越意識は骨絡(がら)みだ。
その後、地下鉄でオペラ座まで行って二手に分かれて土産買いをして15:30部屋に戻りシャワーをして仮眠。16:30に今日は生徒が車で迎えに来てくれたので会場へ。パリ市内は地下鉄が便利だから多くはそうするが、地上を歩くと、ビルの高さが制限されているため、こんなに大きな街なのに、どこからでも広い空が見られるから、開放感があり、世界のどんな大都市でもが持つ圧迫感がない。18:20より昨日のお浚(さら)いで一時間、後半は打撃、蹴撃に対しての投げや、倒してからの締め、関節、打撃などを一時間。皆、素晴らしい、素晴らしいと、汗だくで息を弾ませながら付いて来る。20:40まで。それから記念写真会。小川も藤松も引っ張りダコで30分もやってしまった。
最後、マルセイユから参加した大柄な(重量級)黒人が、スーパーセーフを着けて、試しに軽く当てて欲しいというので、小川が軽い気持ちでマスクを着けた。何も自分も被る必要はないのにと思ったが、軽くという感じで動き始めた。ところが相手は始めてのマスクという事もあるのか結構粘る。フルコン系らしく顔面への打撃は余り得意ではないが、蹴りや投げは一応のレベルだ。小川は始めから遊びの積もりでやってるから、中途半端な投げを掛けたりする。と、必ず同体までは持っていくし、たまには上になったりする。小川もどこまでやったら良いのか多少戸惑ってるから、「良いから一発ガツンと当ててやれ」と言ったところ顎に右アッパーが入ったのでそこで止めにした。あのまま連打すればKOとなったのだが、それも大人気ないとここで止めた。こんな時、大低の団体は指示しないでも思いっきりやっちゃうんだろうが、うちは皆人が良いし顔を狙う為、本気になると悲惨な事になるからから、そこまでしないことが多い。が、これはあとで大きな話になって「おれは大道塾の誰々とやったが大した事はなかった」などという話になる事がある。難しいところだ。
私も選手の頃、同じような経験がある。試合前に相手が「自分は東さんには絶対勝てないし、壊されるのいやだから軽くお願いします」と言う。体が“うなってる”のが自分でも解るくらいに絶好調の頃だから、そんな油断もしたのだが、その前の試合もそんな感じで怪我しないような足払いで決めてやったから、そういう積もりでいたなら、とんでもない、相手は必死の形相でガンガン来る、上にも書いた様に急にエンジンは掛らないから本気になるまでの間に顔まで蹴られて、効きはしないにしろ顎が上がってみっともない写真を雑誌に掲載される事になった試合だった(尤もこれは試合での話だから、その後はしっかり返させてもらったが…) この経験から、試合で一旦向かい合ったなら、私はどんな弱そうな相手でも、なにを言われても絶対に気を抜かない様にし、ある程度の形勢がつくまでは手加減しなくなった。だから相手を舐めた試合をして、付け込まれ私に怒られた生徒は結構いるはずだ。
こんな武道、格闘技をする人間はどんなに大人しそうに見えても、それなりに自分を恃むところがあるし、しかも、打撃系の場合、組み技系と違ってダメージの量で優劣が決まるから、試合でもない時に軽い気持ちで当てると「大した事なかった」などと言い始めるし、かといってムキになって当ててダメージを与えたりでもすれば「軽くとお願いしたのに」となる。どっちに転んでもろくな事にはならない。だから、始めての人間のこういう申し入れは、受けない方が良い。どうしてもやらざるを得ない時には、私は始めにガツンとやってからか、大抵は「足払いでの転倒」をさせてから、後を流すようにする。この技は後の残る怪我もしないし、相手もコカされたという事で差をハッキリ感じるし、周りも納得するから、足払いは試合でだけでなく、使い勝手の良い(?)技である。
後で聞いてみたなら、この人間は某フルコンタクトの優勝者で、総合の試合にも良く出ている人間だそうだ。それにしては、打撃も寝技も見た目は下手糞だったと、私もそう見たからチョット油断してやらせたのだが…。ワザとそうしたのだろうか・・・。ま、この人間は大道塾を始めたいと言っているからそれはないとは思うが、こんな事で大道塾も大したことないと、失望させてその気が失せては相手にも悪いし、こっちもアホな役回りになる、心すべき事である。
22:00、会食。「これでセミナーの全日程が終った!」と思ったなら急に疲れが出てきてアルコールの回りが早い。この席で、セミナーに参加した他団体に結構強い女子の生徒がいるという話になった。今回の“WARS6”には女子部の八島や岡も参加を希望しているので、出来れば実現させてやりたい。が、明日会う予定の主な相手団体となる“リュットコンタクト”には女子はいないという事で困っていたので、渡りに船とばかりに早速ビデオを送ってくれと話した。00:30就寝。
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