2000年 北斗旗全日本無差別選手権大会

(準決勝)

(1)平原徳浩(名張支部)
   −アレクセイ・コノネンコ(東北支部)

来年の世界大会が体力別だということで、今回の無差別大会は各ブロックで同体力選手が闘う方式が採られた。その軽・中量ブロックを制したのが平原。本来この階級には絶対的な実力を持つ王者として小川英樹(軽量五連覇、中量二連覇)が君臨しているが、その小川は今回欠場、平原はライバル高田久嗣(浦和同好会)を僅差で破ってベスト・エイトに初めて名を連ねた。 コノネンコは九六・七年は軽重量、九八年には無差別大会の王者。仕事や学業で一時稽古できなかったようだが、今年は春先から復活している。 試合はコノネンコが終始圧倒。軽いステップで前進、小刻みにフェイントをかけてパンチを出すと平原は後退、二度三度とダッキングから場外に倒れ込む。それでも延長ではついにつかまり、重い左フックからミドル、膝が立て続けに決まって効果2を連取。平原には攻めずに場外に逃げたとして注意が与えられたが、無差別大会では下がりながらのカウンターでポイントを取るだけでは通用しないことが改めて実証された。

(2)村田良成(総本部)
      −稲垣拓一(総本部)

 村田は打撃全般をこなし、重量級の次代を担うホープ。一方の無差別連覇を狙う稲垣は二回戦・浜松新一郎(木町支部)、三回戦・稲田卓也(横浜支部)と強豪との連戦が続く。組技が比較的苦手という点でも似たタイプだが、両者とも組技でも進歩の跡を見せる。打撃では互角の滑り出しだったが村田はミドルを捕まれると飛びついてガードポジション、そこから三角締めを狙うという戦法に出る。これは稲垣が持ち上げてしのぐと、後はパンチから組んでの膝の応酬という展開。

 結局、パンチと蹴りでは互角だったが、本戦では村田の膝蹴りに支えつり込み足を合わせての「キメ」で効果を奪い、さらに延長でつかみからのアッパーの乱れ打ちで有効を奪った稲垣の勝ち。決定的な得意技や勝負への執着、荒々しい気迫で、稲垣が試合の「勝ち方」を見せつけた一戦だった。

(3)飯村健一(総本部)
      −岩木秀之(新潟支部)

 軽重量級の現在の第一人者と目されながらなぜか優勝できない岩木と、打撃のスペシャリストでベテランながらいまだに組み手を進化させる飯村。昨年の体力別軽重量級決勝の再戦で、昨年の一戦では、岩木の体落としが決まるかと見えた瞬間に飯村が顔面に肘を合わせるという、北斗旗ならではのスリリングな展開が見られた。

 本戦は岩木のペース。軸足をスライドさせながら相手の出鼻をくじく横蹴りが有効で、倒れた飯村の顔面を押さえつけて横腹に肘を落とすという厳しい攻めを見せる。飯村のテンカオ(カウンターの膝)に岩木がストレートを合わせ、そこに飯村が強烈な肘で反撃したところで終了。延長では飯村が小刻みにステップ、スイッチしながらプレッシャーを与え、岩木の横蹴りをバックステップでかわして膝で反撃という戦法に切り替える。これが功を奏し、岩木もミドルやパンチで応戦したものの、膝を中心とした華麗な打撃をフル回転させた飯村の判定勝ち。今回も息を飲む好試合であった。

(4)中山正和(総本部)
      −山崎進(総本部)

 九五年の無差別準優勝以来、仕事で大会を欠場した中山は、この間に柔道に取り組み、組技の腕を上げた。一方の山崎はちょうど逆に、柔道出身で、中山不在の間重量級の最前線に躍り出、打撃にも長足の進歩をとげている。

 本戦、両者の打撃は互角。山崎のタックル、投げをこらえた中山は、逆に山崎を首投げで横転させる。山崎が北斗旗で投げられたシーンは初めてではないか。延長、今度は山崎がマウントを取るが中山が下から襟を取りパンチを決めさせない。膠着状態が続いたが、組み付いた中山を小手投げのようにふって投げた山崎が中山の後頭部に強烈な肘を落とす。一瞬の出来事で故意とは思えず、指導となった。休憩を取ったものの中山の目はうつろ、顔面は蒼白。結局再延長となるもドクターストップで山崎が準決勝に進むこととなった。

(準決勝)

(5)アレクセイ・コノネンコ(東北支部)

           −稲垣拓一(総本部)

 九八年、コノネンコが無差別を制した際の決勝の再戦。両者フェイントからさぐり合い、なかなか打ち合うに至らない。時折重いローが入り、稲垣の出鼻をコノネンコの右フックが捉えるが、単発に終わる。主審は「ファイト」と声をかけるが、本戦終了のブザーとともに拍手が自然と湧く。それほどの緊迫感だ。

 一転して延長では、稲垣がフック気味に外から連打するとコノネンコはワンツーを内側から返す。コノネンコの正確さが勝るかに見えたが、組み合ったところ稲垣のフロント・スープレックスが一閃。マウントは効果にはならなかったが、優勢との印象は一気に稲垣に傾く。コノネンコが打ち合いに誘い、場内が歓声で沸いたところで試合終了。稲垣の判定勝ちとなった。

(6)山崎進(総本部)

     − 飯村健一(総本部)

 山崎はここまで、二回戦の清水和麿戦では跳び後ろ回し蹴りで効果を奪われ、逆にフルコンタクト中国拳法の散打の技から足をつかんでの一本背負いを試みて観客の度肝を抜いた。勝ち抜くだけでなく見て面白い試合を展開する第一人者だ。打撃では支障筋に当たる飯村相手に一体何をしでかしてくれるのかと期待に胸が高鳴る。その山崎が開始早々にいきなりやってくれた!いきなり飛んでの頭突き一発で飯村に尻餅をつかせたのだ。

 飯村も冷静ではおれないだろうとさらに期待はふくらんだのだが・・・。左ローを内股に返したところで飯村が突然ケンケン状態になり、うずくまる。古傷の足の甲を痛めたらしい。自力では立つこともできなくなり、負傷敗退。座り込み苦痛に顔をゆがませた飯村の「くそー、やりてー」という声が会場に響く。夢のカードが夢に終わった一戦に、観客も同じ気持ちだっただろう。

(決勝)

(7)稲垣拓一(総本部)
        −山崎進(総本部)

 このところ無差別では稲垣の二連勝。昨年の決勝の再現だ。稲垣は試合前に首と腰を負傷、出場も危ぶまれたが、打撃で互角だと寝技、寝技で不利だとつかみからのアッパーと、一見ラフに見えて冷静に引き出しの多さでカバーしてきた。対する山崎は飯村戦でスタミナを温存。稲垣の体力が試合を左右するかに思えたのだが・・・。

 本戦では稲垣がやはりカウンター狙いで様子見。ローを山崎がつかみ、膝十字に入るのをこらえる。山崎もなんとか間合いをつめてフックを放つが、当たりが浅い。そのまま互角で延長へ。ここからヒートアップ。

 稲垣はジャブ、アッパーを繰り出すが、むしろ山崎が圧力をかけ、距離をつめる。稲垣のアッパーに頭突き、左フックで応戦。ここで山崎の背負いを稲垣が切り、直後にいきなり飛び込んで膝を突き立てると、これがクリーンヒット。しかし山崎も負けずに頭突き、ローをつかんで倒しマウントになるが稲垣がひっくり返す。上から十字、下から三角締めと目まぐるしい展開に。ここで終了。副審3−0も、副主審・主審の裁定で再延長に。山崎には一気に幸運が舞い込んだかに思えたが・・・。

 稲垣はスタミナがまったく衰えない。左ハイから右膝のカウンターで責め立てる。だがここで起死回生の右ハイを返すのが、山崎のただ者でないところ。場内、大歓声。しかし柔道稽古の成果か、背負いをまたしても稲垣がつぶす。投げで効果を奪えないと山崎は手詰まりになる。それでもハイからアッパーで応戦するが、互角の打ち合いで試合終了。両選手が分かれ、死力を尽くしたという表情で宙を見上げたところで、判定は5−0で稲垣に。無差別連覇を果たし、岩崎・長田・山田・セムと続いた北斗旗名チャンピオンに肩を並べることとなった。