2000年TAMON CUP八王子地区大会

トーナメント表


『八王子支部&支部大会紹介』

松原隆一郎

 八王子支部で大道塾の公認ではあるが非公式の独自の大会が開かれていて、大変な盛況だと聞き、支部紹介を兼ねて訪ねてみた。筆者のもともとの関心は、「その大会に参加してみたい」ということだった。一般部の試合というと、関東地区予選なども相当にレベルが高く、トーナメントだけに勝ち上がってもどこかで潰されて負けてしまうことになる。それは嫌だが審査以外の試合経験は積んでみたい、という塾生も多いのではないだろうか。その点、八王子大会は、新人中心、しかも厳正な審判のもとでの北斗旗ルールの試合が組まれるのだ。そのうえ、少年のみならず未就学児(幼児)までが参加するトーナメントもあるという。日頃「闘いゴッコ」に明け暮れる四歳児の息子にも本物の闘いを見せてやろうと、11月25日土曜日、子連れで八王子市民体育館に向かった。
 体育館の柔道場に入ると、入り口あたりから試合独特の緊迫感。選手は一心不乱にウォーム・アップやシャドーに打ち込んでいる。けれどもちょっと違うのが、付き添いの父兄の多いこと。あちこちでビデオを回している。試合が始まるとセコンドの声援が飛び交い、そのセコンド陣もよく見ると関東予選では新人クラスの選手たち。やはりこの大会にエントリーしているのはさらにその後輩たち、予選以前に試合経験を積みたい選手たちであるようだ。
 それにしても、正面の壁にある「TAMON CUP 2000」という垂れ幕は立派だ。支部後援会長である前衆院議員・小林多門氏の名を冠したということで、大道塾の理念である「大道無門」に引っかけたとのこと。地元に根付きつつ格闘技の大会として信頼されるものを目指すという八王子支部の指針がよく表れた大会名だ。運営委員長の山本善一氏、大会総委員長の山下正男氏も、毎度全試合を観戦され、ひときわ熱心に支えてくれているとのこと。今回は市長・市議も開会式では挨拶して下さった。これも大会が地元の支持を得ていることの証拠だろう。
 八王子大会は96年に始まり今回で9回目。現在ではうち春が体力別の支部大会、秋が無差別のTAMON CUPとなっている。今回のトーナメントは全57試合。一般部は新人戦方式で五級以下が一方にいると極真ルール、双方四級以上だと地区予選方式の北斗旗ルール。下は15歳から最高齢は43歳までが一同に会するのだ。「お父さん、ガンバレ」という微笑ましい家族の声援と、「つかみは方袖で!」というセコンドの支部長の高度な技術論とが飛び交う様は圧巻だ。しかしそれも参加者は半数以下にすぎない。次に大きいのが小学生のトーナメント。ここには友次支部長のご長男で関東大会・新潟大会と少年部二連覇の文武君が出場している。いきなり「フグ・トルネード」、下段後ろ蹴りで一本勝ち。どうやらお父さんから、「勝つだけじゃダメ、今回はこの技を使うことが誉めてやる条件」とやられているらしい。それに女子、少年中学生、そして四人が参加の少年・幼児トーナメント(四〜六歳)。
 驚いたのが、少年たちの礼法がしっかりしていること。試合後も、ちゃんと向き合って後ずさりし、黙礼をしている。対照的に一般部では何度も大会実況アナウンサーから注意が飛ぶほど、礼法は乱れていた。これも試合をして初めて身に付くということなのだろう。四歳児までがちゃんと礼法をこなしていた。日頃友次支部長と親交の深い広井横浜支部長以下多くの横浜の北斗旗出場選手、山田利一郎・新潟支部長、加藤清尚・大宮支部長、飯村健一・武蔵野支部長、青木伊之・町田支部長、萩庭英典・渋谷教室長らの錚々たる審判員が手弁当で参加、つきっきりで礼法指示から判定までこなしている。
 少年部には柔らかい材質だが手首はしっかり固定されているテコンドーの拳サポーターと蹴り易いよう下半分をカットした腹サポーターを使用。キメも1ポイントとするなど工夫が凝らされている。大会は審査会も兼ね、全員に参加賞の盾が贈られるなど、参加を励ます仕組みにもなっている。「強い者を育てるというよりも、支部活動を充実させる」一環として大会を位置づける八王子支部らしい大会運営だ。

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 友次支部長に伺う。友次さんは伝統派空手の出身。北斗旗ファンなら思い出すだろう。審判でも活躍しておられる、あの優しそうな口髭の方だ。

−−普段の活動は、どんな状況ですか。
友次「教室は現在十。うち多摩と高尾は黒帯の指導員に任せて、それと羽村スポーツセンターの寝技研究会は参加者の自主運営なので、私はそれ以外の七教室で指導しています(なんと友次支部長は、フルタイムの仕事を持ちながら、週に七日教室の指導に当たっておられるのだ!)。基本まで一緒にやって、それから一般と少年に分けます。もちろん私は少年担当。日本一の少年部を目指してますから。」

−−少年部はどんな稽古内容ですか
友次「基礎体力重視ですね。ころんで頭を打たないように受け身はしっかりさせる。ハイをもらっても大丈夫な首を作るよう、首相撲もさせます。うちの生徒はそこから投げてちゃんとキメを入れますよ。稽古の最後には相撲もやります。よく泣く奴もいますけど、『泣くなら帰っていい』っていうと頑張ってやってますよ。大体、空手を始める子っていうのはもともとイジメられたり挨拶ができなかったりで親御さんが心配してやってこられるので、子供にも親にも信頼していただけるような指導にしています」

−−大人と子供が一緒に楽しんでいるようですね。
友次「私のモットーは『ライフサイクルの中の空手』。大人から子供まで、どんな職の人も共存するにはモラルがなきゃやっていけません。それを稽古で身につけさせています。だから礼法はみんなしっかりしてるでしょ。やらないと怒られますからね。全体の整列のときは子供と大人と一律に帯順になるので、大人でも少年の下になったりします。それで少年には社会のルールを大人と共通のものとして教えます。年に二回の神奈川ふれあいの村の一泊の合宿でも、みんなで審査を受けるんですよ」。

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 大会で微笑ましかったのは、萩原純子さんと亮太君。母子でそれぞれ女子部と少年部の試合に参加しているのだ。八王子支部の理念が定着していることを示す光景だった。うちの親子も負けてはいられない。ちみなに幼児はいきなりの参加も可とのこと。ただし礼法ができなければ失格とか。来春までに息子に礼法もしこまなくちゃ。(ただしビジネスマンでも黒帯は参加不可とのことです)。