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コラム12  組み技、寝技の練習の意義と実際

「空道の試合に勝つには組み技のレベルを上げないと」と町の柔道の道場へ行っても、レベルがではなく、職業的指導員がいるかいないかという意味で、アマチュアの道場は、大抵一人の指導員がいれば良い方で(いない場合は道場生同士で教える)、「手取り足取り」の指導は期待出来ない。

これは何も柔道に限らない。武道の世界的名声は高く、世界的な試合の時だけは「武道母国日本」等と持ち上げられ勝つのが当たり前みたいに見られているが、その割に武道の世界的価値や日本社会での教育的価値に見合う扱いはされていない日本では、どこの武道道場も維持するのが大変だというのが実情で、専従の指導者を常に置いている道場はまれである。その為、人手が足りなくて、大抵は受身を教えたなら即、乱取りとなるのが普通である。これではいくらか受けは強くなったり、力で頑張る癖は付くが、自分から相手を投げられるようにはならない。

それでも高校時代に柔道やレスリング、相撲などの組技を経験して即、乱捕りに対応出来る者なら別だが、「投げ技を基本から教えてもらい、打ち込みで形を作って、乱取りに進む」と考えて柔道の道場に入門しても、その希望は中々叶えられない。

一方、大道塾で両方をこなせる選手にしても、仕事を持っていながら練習する者が殆どだから、自分の練習時間が減るので、他人に教えることより自分の練習をしたがり、通常の練習以外で基本から組み技を教えたりはしたがらない。

そんな中で、総本部では毎週、金曜日はパラエストラから指導員を招いて、水曜日19:00からは山崎、寺園の両指導員が、組み技寝技の指導を行っている!!!参加しないのは絶対に勿体ないと思う。

金曜日のパラエストラの指導員は初心者にも丁寧に寝技の基本から教えてくれる。水曜日の寺園選手は柔道の経験こそないが(剣道の経験者。山田利一郎新潟支部長はじめ、大道塾のサウスポーの選手には意外と剣道の経験者が多い。)柔術の道場に通い、自分なりに研究して試行錯誤しつつ指導している。

逆に言うと、柔道未経験者としての経験(?)を生かして、いわば打撃中心に覚えてきた(組技の専門的な経験がない)多くの塾生が、空道=打撃系「総合(武道)の試合で、どう組み技や寝技に対処(自分が使う、もしくは、経験者の組技に対応)するか?の実験をしつつ取り組んでいる。これはこれで非常に貴重な試みである。

一方、山崎選手は周知の通り大学柔道(日本体育大学)の、まず組み技では最上級の修行経験を持ち、事実、数々の大会で豪快な投げ技と打撃の見事な連繋で、幾多の巨漢を破ってきた選手である。

それと、試合のように派手な/目に見える活動ではないので、「知る人ぞ知る」地味な話なのだが、同じくらいに評価したいのは、嫌がらないで初心者にも丁寧に基本の受身や、打ち込みを教える事だ。それは現役時代から変わらず、今も続いている。選手の習性を考える時、これは中々できるものではない。

手前味噌じゃないが、これらのクラスは本当に貴重なクラスで、塾生で組み技、寝技を覚えたい者が、なぜ総本部にあるこんな恵まれたクラスに参加しないで、余り指導体系が充実しているとはいえない、一般の道場に行くのか気が知れない。本当に不思議で且つ、勿体ない話だと思う。

なぜ空道にとって組み技が重要性を増しているのか?このところ連勝街道を驀進している藤松選手の勝利の方程式を見てみよう。

一つは、一発では威力は小さいかもしれないが皆が対応研究していなから貰ってしまう腰や、脇から出る「寸止め系の突き」。これは顔面近くから水平に出る今までのパンチと角度が違い、そういう「突きへの受け」の反復練習から生まれる「条件反射」がないので、安易に貰ってしまう。貰っても軽いからとさほど気にも留めない。(それが藤松の狙い目の一つでもあるのだろうが・・・)

しかしこの所の試合を分析したなら、「突き」、という意味では似ていても、これまでの打撃系にとっての寝技と同じ位に、「知らない技が一番怖い/威力がある」という武道・格闘技の大原則に立ち返って、重要視する必要がある。安易に考えて受けが形作られない限り、誰も取り組んでいない練習をしている藤松の突きは、益々当たる回数が多くなるだろう。

更にはその副次的な効果として、両拳を上げて顔面をガードする構えが一般的なフルコン系ではありえない、顔面ガラ空きの慣れない構え(単打戦が多い寸止めではこれが一般的)と、下から入ってくる突きに対戦相手の注意が集中してしまうから、何気ない下段蹴りや前蹴りをまともに貰ってしまう。

多くのKOは連打で注意の向いてない所に打撃が入るから生まれるが、一発二発ではダメージにならないこれらの攻撃でも、度重なるとそれが心理的な動転/負のスパイラルを招き、貰った方は自分の組手を忘れて、防御に関心が集中してしまい、結局、藤松の術中に嵌ってしまってしまう。

その上、ただの突き蹴りの選手がそれをするなら、「軽く打たせて(打たれても)倍にして返す」という方法があり、どういうことはないのだが、(彼の組手から学ぶ者は、ここを忘れてはいけない!)、藤松の場合は、その軽い突きをそれだけでは終わらせない、第二弾を持っているからより一層、より確実に、この戦法が功を奏する。

それが、この一撃必倒的組手の弱点である「乱打戦」を防ぐための組技だ。即ち、「相手が連/乱打戦に持ち込もうとして接近してきた場合や、チャンスを狙いつつ自分から単発で当て行き、ここだと思ったなら、素早く相手に密着して相手の連打を封じてしまい、投げ→寝技に繋ぐ戦法」である。

逆の場合もこの「投げ?寝技」の連携/展開が大きな抑止力になっている。相手がその連携/展開を恐れるがゆえに、掴まれたなら後ろに下がって逃げようと始めから腰が引けた状態から出す威力のない中途半端な攻撃や、思い切って入って行っても組まれた時点で「投げられるのでは!!」と、途中で攻撃を止めて/体を硬直させてしまう反応は、藤松の投げの絶好の下拵(ごしら)えだ。

しかしただ「投げ技が出来るから」では同じ結果は生まれない。今までも柔道ではもっと実績を持っている選手が出てきているが同じ事はできていない。それを可能にしているのは藤松の「打撃系用のステップから迅速確実に投げに入れる、構え方と運足」である。

私は組技に初めて取り組む人間に教える時「必ずサウスポーで覚えるように」と言う。それは打撃では柔道と逆で、多くの人間は通常左足前に構えるので、前に投げる技をかける場合、左の投げ技をかけた方が自分の体の回転が少なくて済むし、相手の体との密着を生むので、投げやすいからだ。

また、相手を後ろに倒す技でも、例えば相手の左前足を刈る左の大外刈りは、右足での継ぎ足一動作だけで刈れる。これは右足前で構えて柔道をしていた人間にはなかなか出来ない。どうしても二動作になり相手にその意図を読まれて防御されてしまう。藤松は通常右足前にして戦う選手が多い柔道を、高校時代からサウスポー(左足前)でしていたから、左足前の構えで打撃戦をしてそのまま左の技(特に大外刈り)にスンナリ入れるのだ。

他の選手は、それぞれの突きや投げは、柔道や寸止めでの見慣れたものであるが故に、特別の警戒心を持たないで対応しているが、この「一見ありふれている技」の組合せ/連繋の生んだ、これまでの結果をもっともっと意識的に再認識して対応策を研究しなければ、「もっと打ち合えれば・・・。効いたパンチはなかったのに、何となく投げられて寝技で負けた。負けた気がしない・・・」という、今までの勝負スタイルに捉われた/拘った総括をし、いつまでも不完全燃焼の負け試合を続けることになるだろう。

かと言って、語解して欲しくはないのだが、あの戦法/戦術が万全だというのではない。人の個性が千差万別であると同じように、その人によって生み出される勝負事にも定待った型や、究極の戦法はない。

ただ、今まで武道/格闘技最強を唱えていた打撃系が、柔術(寝技)の登場によって散々に苦渋を飲ませれている事を考えれば、時代の空気で「あんな時代錯誤な『寸止めスタイル』が様々な武道、格闘技の集大成とも言うべき『総合(武道・格闘技)』で通じるのも目新しいからだ。今に必ず失速する」等と思考停止し、歴代の戦士/選手の研究の成果である過去の実績にのみ寄り掛かり、現役の選手自らがこの戦法/戦術の研究もしないで戦いを続けるのなら、今後も死屍累々の戦野が続くだろうと言うことである。

今度はあの戦法/戦術を、上述したような先入観なしに、謙虚に研究吸収し、その土台に立ってその弱点(何にでも弱点・欠点はある)を突き、凌駕する戦法戦術を研究する選手が出てこなくては、空道の新たな発展はない。

元に戻るが、そういう意味でも、入門していても今まで食わず嫌いだった選手や、特にこれからの塾生には、これらのクラスに大いに参加して、上記の国内戦だけではない、次の世界大会ではより一層、対外国選手との戦いの大きなポイントとなる「投げ技、寝技」の充実に努めてもらいたいものだ。

<総本部 組み技関連クラス>
※支部所属の塾生も参加できます。
※金曜技研・組み技クラスは、塾長が出張、会議等で不在の際は内容が変更となります。詳細は総本部までお問い合わせください。

●水曜組み技クラス  19:00〜20:30 3階道場
 指導員:山崎進(総本部指導員)
●金曜技研・組み技クラス 19:00〜21:00 3階道場
 19:00〜塾長指導 実戦組手(関節蹴り、金的蹴りあり)稽古
 20:00〜パラエストラ指導員 寝技基本、スパーリング

一部改稿2007.11.8 文書日付2007.11.6

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