2009第三回空道世界大会エピソード

佐藤繁樹(仙南支部)仙南支部佐藤繁樹

この度の世界大会で海外選手、チームの担当をさせていただいた際のとてもシゲキ的な非日常の出来事を少しだけ紹介いたします。

<エピソード1> 〜空港で選手探し〜

突然私のケータイが鳴り、塾長の「お前、空港に行け。」のひと声から始まった私の世界大会。
「成田空港からホテルまでの行き方が分からずに空港内をさまよっている海外選手、チームを探し出してホテルに到着させる。」という任務です。
その中には約10時間も空港内をさまよっている海外選手もいるということでした。 「そんなことがあるのか!?」と思いながらも都内で待機していた私は1週間分の宿泊用品全てが入った大きな荷物を持ってすぐに成田空港に向かいました。 空港へ向かう途中、塾長の指示もありダンボールに「KUDO DAIDO-JUKU」と書いた看板を作り、それを空港内で掲げて探し回ることにしました。
歩いているうちに看板が目に留まった海外選手達が寄ってきて万事OKという作戦です。 案の定、空港内で看板を持ってうろうろしていると「押忍!」と海外選手達がうれしそうに近寄ってきます。大成功です。

海外選手達を見つける都度、簡単なあいさつを済ませるとさっそくホテルまでの行き方の説明です。 「バスで東京ドームに行ってそこからタクシーでホテルまで行ってください。」
通じているのか?と疑問を持ちながらも海外選手達にそのことを伝え「じゃ、後で」とリムジンバスに乗せ見送りました。 後でホテルに行ってみると選手達はみんな到着していたので一安心です。
私も結局、空港内に10時間程滞在して看板を持ってうろうろとしていたものですっかり売店のおばちゃん達と仲良くなり、「あっちにジャージで体の大きいのがいたわよ。あれはきっと大道塾ね。」と目撃情報を教えてくれるようになりました。
おばちゃんありがとね。

<エピソード2> 〜観光案内&思わず感動〜

大会2日目。いよいよ決戦の日です。
海外選手達を3台のバスに分乗させて大会会場に向かいました。
試合を控えているので当たり前ですが、私の乗ったバスの選手達は緊張の面持ちで会話もなく眼差しも鋭く一触即発の状況になっています。 彼らと寝食を共にして3日間が経過していましたので、日本選手を応援する立場でありながら私の中では彼らは完全に「共に空道を志す仲間」になっていました。
「この選手達、まだ大会会場にも着いていないのに今からこんな状態では疲れて実力を発揮できないのでは?」「はるばる日本に来た各国代表なのだからぜひその実力を発揮して悔いの残らない試合をしてもらいたい!」という思いから何か私にできることはないかと考えました。
「トークはうまくないし続かない、歌は以前塾長に「お前は白帯!」といわれる程度の腕前。全員で尻取りゲームでもやろうか。いや、この緊迫した状況では絶対にそれは無理だ!うーん・・・。」と悩んだ末にちょうど大会会場に着くまでにバスが迎賓館赤坂離宮、神宮球場、靖国神社、原宿を通ることに気が付きバスのマイクを使って観光案内をしました。
「右手をご覧ください〜〜」といった具合です。
次第に彼らのこわばった表情が笑顔に変わっていったのでやってよかったと思いました。
そうこうしながら大会会場が目前に迫ったとき、これまでの3日間彼らと空道について話し、一緒に最終練習で汗を流したこと、また「彼らは言語も文化も違うのに同じ空道という一つの目的のために、今日まで懸命に練習に励み世界各国からはるばる日本まで来た。空道の名の下に自国の言葉も通じない空港で迷いながらもここまで来た。なんてすごい奴らなんだ!」という思いがあふれてきてつい涙ぐんでしまいました。
その状況がマイクを通じて彼らに悟られてしまい、「なぜサトーは泣いているんだ?」とバス内が少しざわついていました。
夜、小松秋田支部長にこのことを話したら、「繁樹さん、すぐに泣くのは老化が始まっているんですよ。」と親切に教えてくれました。

<エピソード3> 〜WE LOVE KUDO〜

大会が終われば、ぶっちゃけ大騒ぎするのはどこの国も共通なようです。
緊張に加え試合前の警戒や威嚇もあったのでしょう。今朝まで「押忍!」と睨むようなあいさつをしていた選手もにこやかに買い込んだ各種酒を食堂のテーブルに広げて「一緒に飲もう!」と誘ってくれました。
それぞれの国の格闘技事情や練習環境にはじまり、家族構成、持ちネタ披露、好みの女性のタイプなどいろいろと話しました。
特にウクライナのサモヒン支部長は次々とブランデーボトルを部屋から持ってきては全員で乾杯を繰り返して場を和ませてくれました。(サモヒン支部長は確かブランデーをケースで持って来てあるといっていたと思います。恐ろしや恐ろしや。)
ほぼ朝まで彼らと話しているうちに強さへの憧れや空道の今後の発展への思いなど我々日本人と変わらないことを改めて実感しました。

<エピソード4> 〜ワサビファイト〜

打上げ温泉旅行から東京へ帰ってきた晩、半数程度の選手達が既に帰国してしまいましたが居酒屋で塾長、奥様、娘様を囲んで残っていた数カ国の選手達と最後の食事会をしました。 普通に終わらないとは思っていましたが、案の定、誰の発案か「一番ワサビを粋に食べそしてカッコよく平静でいられるのは誰だ?」対決が始まり、奥様、娘様も参加してお店に無理をいってもらったどんぶりいっぱいのワサビ(確か繰り返し4杯はもらったと思います。)を全員で口いっぱいに頬張っていました。
ちなみに、自分の眉間を指でつまみ甲高い声で「キク〜ッッ!」と叫ぶのがギブアップの合図でした。 確かにTV等ではワサビが鼻にきたときにそのようなジェスチャーをしていますが実際に見たのは初めてでした。
お店を出るとき奥様が店員から「ずいぶんとワサビの好きな方々なんですね。」と話しかけられたそうです。
いくら好きでもどんぶり4杯はないですよね。

<おまけ> 〜計量前ならさぁ・・・〜

ある国の最終練習にアドバイザーとして参加させてもらい、帰り道に昼飯を食べようということになりそば屋に入りました。
その中のある選手は普通に大盛りそばを完食して満足気でしたが・・・。
2時間後、ホテル内を厚着してジョギングする彼を見かけました。
「試合近いんだからがんばり過ぎるなよ。」と話しかけたところ、何でも計量で500グラムオーバーしたとのこと。 完全にあの大盛りそばが影響しているようでした。あ〜ぁ。
(追加情報:その選手は2度目の計量で見事パスしました。)

<最後に>

今回初めてスタッフとして世界大会を見て、裏方の大変さと大勢の方々に支えられて世界大会は成り立っているのだと実感しました。
第一回、第二回世界大会と選手で出場していたときには同様に多くの方々に支えていただき試合のみに集中できたことをいまさらながら感謝しお礼申し上げます。
ありがとうございました。

日本にとって残念な大会結果となりましたが、空道の種は確実に世界にまかれ芽を出しています。 今後はその芽が各国で大きく育ち枝葉を付け実を結ぶまでの期間に入っていくと思います。
空道の形式や技だけでなく精神的なものも含めてしっかりと世界に根付くまでには相当の時間がかかると思いますが、少なくともそれが達成されるまで日本には空道をリードしていかなければならない義務があると思います。
道は険しいですが、今後も日本空道が一丸となって世界をリードしていきたいと思います。

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