イタリア・ハンガリー遠征 〜アンビリーバボー!〜

渡辺慎二(浦和・久喜・大宮西支部) 画像コメント:東塾長

このポーズが好きだねー

今回のイタリア・ハンガリーセミナーのレポートをまとめました。サブタイトルは「アンビリーバボー!」。今回の遠征はまさにunbelievable な事件が目白押し。自分自身が参加したつもりでレポートをお楽しみください。

10/24

明日からいよいよイタリア・ハンガリー遠征です。
遠征が確定した後、「詳細日程決まったら連絡しますね」「押忍、お願いします」とやりとりをしたものの、、、現地でのスケジュールは未だまったく分かりません。私の他に誰が行くのかも全然分かりません。
取り敢えずチケットによればイタリアはミラノ経由でベネチアへ、ハンガリーについてはブタペストに行くようなのですが・・・。
昨日の夕方、ようやくメールが届きました。内容は・・・「25日からはよろしくお願いします。集合場所と時間は××です」とだけ。さすがとしか言いようがありません。This is Daidojuku-style.です(笑)。
さて、そのような状況で私が何をしているかというと・・・実はまったく何も準備をしていません。これで本当に明日から行けるのでしょうか? 私もさすが塾生であるとしか言いようがありません(笑×2)。

10/25

成田空港到着。
集まったメンバーは塾長の他に、孤崎盛岡支部長、神山日進支部長、岩木新潟北道場責任者、そして私渡辺の計五名。ほとんど全ての人が、今ここで初めて参加メンバーを知ったというアンビリーバボーな状況です(笑)。
しかし、本当の凄さはこの後。全員が集まっての塾長の第一声が「はい、みんなご苦労さん。じゃここで解散な」。もちろん冗談の口調ではあったのですが、それっていったい・・・昨日の時点では「本部よりまだ詳細日程が出ない」と思っていたが、実はあれは「出さなかったのでなく、出せなかった」のが実状だったようです。何かと思えば、イタリア国際大会への参加を急遽取り止めるとのこと。なんと!

実はもともと今大会の実施に関して、塾長の希望とイタリア側の方針とでは当初から温度差があったのは、この企画が出された半年前から聞いてはいました。19 Festival des Arts Martiaux Bercy 2004(遠征レポート)の参加以来、空道への興味が沸騰している欧州各国に今こそアピールしたい塾長側は「日本からも応援するから」とヨーロッパ大会規模での実施を希望。それに対し、手に余ることはしたくないということか「イタリア国内のbeginnerからintermediateの為の大会」を主張するイタリア側。しかし、今回最終的に(なんと二日前!)判明したことが、なんと今大会の参加人数はわずか10名前後。しかもその内半数以上が、塾長が裏に表に手を回して参加要請をして他国から集まってくれた選手だとのこと。それではイタリア国内のbeginnerからintermediateの為の大会規模にすらなっていません。結局イタリア側は何をどうしたかったのでしょう? 何にせよ、そんな参加人数10名のトーナメントにわざわざ日本から塾長始め、国際審判三名に世界チャンピオンが大挙して押しかけたとなったら、これはむしろ恥をさらしに行くようなものです。

という訳で今回は(既にチケットは購入済なので)ベネチアまでは取り敢えず行くものの、その先の北イタリア支部には行かないといいます。その代わりに、以前より空道大道塾に興味を持ち取材をさせて欲しいとの要請があったイタリアの格闘技雑誌「SAMURAI」の記者に連絡が付いているのでローマへ向かうとのこと。また併せて、以前より空道をやりたいと問い合わせをしてきていたローマ近くの別の団体の代表者にも会えるよう現在交渉中だとのことだそうです。

しかしそれって、(今の言い方の裏を返せば)、まだ現時点では確定された行事が立っていないということでは・・・? 出だしからこんな状況で、今回の遠征、この先いったいどんなことになるのでありましょうか? しかし心配しても、もうどうにもなりません。神山支部長と二人で話します。
「いやー、大道無門だなぁ(笑)」
「大道無門ですよねー(苦笑)」
「道なきところに道を求める・・・それが空の道、空道だな(笑×2)」
「そうそう、全ては空なんですから、何物にも捕らわれたらいけないんですよ。だから事前のスケジュールにも捕らわれたらいけないんですよね〜(爆)」
もう無茶苦茶な状態で、我々はミラノ行きアリタリア航空に乗り込んだのでありました。

さてその機内。エコノミー症候群にならぬよう、時々は立ち上がって背伸びやら屈伸運動やらはするものの、12時間半のフライトは退屈以外の何物でもありません。道中の半分も過ぎた頃でしょうか? ふと気がつけば塾長のところにCAが来てずっと座り込んだまま何やら話しています。

「何かトラブルでもあったのだろうか?」と思いきや・・・「いや、何かこいつ、ずーっと俺のこと見てるなーって思ってたら、『失礼ですが、アズマ シハンですか?』ってさ。何だと思ったら極真の門下生なんだって」。あれま〜、こんなこともあるものなんですね。しかもこのCAの彼、このあとが凄かった。まず手始めは「シハン、ビジネスクラスに空きがありますから、そちらへどうぞ」。「いや、弟子と一緒に来ているから、俺はいいよ」と固辞する塾長(押忍、恐縮です)。ならばと今度は「お食事をお持ちしました」とファーストクラス向けの食事を持ってきます。その後も折に付け「お酒をお持ちしました」。「スナックのお時間です」。もうCA(Cabin Attendant)の職務を全て投げ打って、東塾長のPAA(Personal Attendant)と化しています。

東塾長も「あいつ、俺の前を通るときには何か出さないと通れないって、通行手形か何かと勘違いしていないか?」と苦笑い。最初は面白がっていたものの「周囲から見たら『あの人、何者?』って変な目で見られちゃうなぁ」と、段々とむしろ居心地が悪そうです。しかしそんな気持ちにまったくお構いのない彼は、終いには格闘技好きの同僚CAまで連れてきて、二人で塾長の前に座り込み、話し込んでいくアンビリーバボーぶりでありました。
しかし、それもこれも極真の組織力。東塾長が極真のOBであったればこその出来事です。「いつか空道でこうなりたいですね」という私に、「なるさ、当然なるよ」と力強く頷く東塾長。う〜ん、しびれます。今は新しい歴史が作られている真っ只中。そこに関わっていられる自分は最高に幸せです。押忍。

10/26

今日の予定はベネチア観光。ツアーコンダクター(笑)は東塾長、おまけにカメラマンが孤崎支部長というアンビリーバボーな状況です(意外なことに孤崎支部長はモノマニアで、今回の遠征にもCanonの高性能デジカメにEPSONのフォトビューワーを持参して、写真を撮りまくっておりました。しかも自分の写真を撮るよりも私達を撮る方にむしろ熱心で「みんなにCDに焼いてあげるからな」とのありがたいお言葉も。(大感謝。)

しかし、ベネチアの町は雰囲気ありすぎです。建物の一つ一つがおそらく100年単位の建造物。特に狭い路地を通るとそこに住む人々の息吹を感じて、異国情緒に浸りきってしまいます。それでも興味は人に向くのが武道をやるものとしての性でしょうか? ちょっと体格のいい人を見ると「この人、格闘家かも?」、「ベンチプレスで○○Kgくらい上がりそうだな」、「金的の位置が高いなぁ。戦ったら蹴るのに苦労しそうだなぁ」とか・・・横で聞いている神山支部長も「分かる、分かる、その感じ。俺も同じだよ」と大笑い。ハイテンションでアドレナリンが出まくりな観光であります。

歩き回っていい加減疲れたところで、予定よりちょっと早めにホテルに帰り、昨日の夜からうまくできなかったインターネット接続にトライです。フロントに聞けば「air(=無線LAN)で接続できる」というのですが、しかしその無線が受信できません。塾長もご同様。ケーブルを借りてきてもダメ。フロントに聞いても「個人のパソコンに関する詳しい設定については何ともいえない」と一言でお終い。ま、そりゃそうなんでしょうけどね(しかしこの後泊まった別のホテルでは普通に無線を受信したので、やっぱりこのホテルはおかしかったと思うのだが)・・・しょうがないので諦めてダイヤルUPでの接続にトライ。最初は設定に手間取ったものの無事成功し、日本にいる家族や道場生に無事イタリアに着いていることをメールその他で報告完了。その旨報告して、塾長の接続もちょっとお手伝い。取り敢えずIDとパスが認証できないものの、アクセスポイントに接続することが可能になったところまでは済ませ、あとはプロバイダーに再確認をいただくというところで幕を引きました。

ここはこうだからとガイド役
ここはこうだからとガイド役

10/27

ようやく塾長のPCも接続できました。あのまま、10日間もメールが見られないことにでもなったら、いったいどうなったことでしょう? 取り敢えずホッとします。しかしたった二日間アクセスできなかっただけなのに未読メールがなんと800件を越えていたとのこと。もちろんその9割はスパムメールとは言え、昨日の私と比較すれば、私の場合は約90件。しかも私なら英字メールは無条件に削除可能ですが、塾長の場合は英文問い合わせも数多いのでそうも行きません。チェックだけでどれほどの時間を費やさねばならぬのでしょうか? なんとアンビリーバボーな塾長のお忙しさ。

さて、今日はこれからEuro-Starに乗ってローマへ。無事記者さんとアポが取れたということで何よりですが、これまでの全ての手配は当然塾長です。役立たずで申し訳ありません。押忍。何はともあれ、横浜北の青木支部長に顔も体形もそっくりのタクシーの運ちゃん(神山支部長などは「おじさんじゃないか?」と冗談を言っていたくらい:笑)に乗せられてホテルから駅へと向かい、予約していた10:44発のローマ行きのEuro-starを待ちます。
ところが事前に止まっていたEuro-starミラノ行きが、ちょうどその時間に駅から出発しました。まさか? 塾長が慌てて駅員さんに尋ねます。
「さっき出発した電車はもしかしてローマ行きか?」
「違うよ、ミラノ行きだ」
「予約しているチケットだと今の時間に出発するのはローマ行きになっているんだが、あれが途中でそっちに連結するのか?」
「いいや、あれはミラノ行きだ」
「じゃあ、ローマ行きはどうなっているんだ? 何かトラブルで遅れているのか?」
「いや、全然遅れてないよ。後10分もすれば到着するから。No problem だ」
既に遅れているのに「全然遅れていない」と言い、「No problemだ」と言い切ってしまうアンビリーバボーなこの回答。もしかして、あの駅員は大道塾生だったのかもしれません?

結局その後、言った通りに10分遅れで到着したEuro-starで4時間半かけて無事ローマへと着きましたが、途中やってきた物売りのあんちゃんの「ファンタ、コッラ(コーラ)、ビィヤ(ビール)、パニーニ・・・」という独特の言いまわしが孤崎支部長はいたくお気に召したらしく、この後、事ある毎に「ファンタ、コッラ、ビィヤ」といい続けておりました。因みに、今回の遠征でのもう一つ孤崎支部長のお気に入りの話題は、山形の峰田支部長。「全ての道はローマに通ず」と言われますが、孤崎支部長の場合、「全ての話題はファンタ、コッラ、ビィヤと峰田支部長に通ず」と言っても過言ではありませんでした。押忍。

ホテルに入ってから、塾長は格闘技雑誌の取材を受けるので、その間我々はフリータイム。ベネチアのホテルと違い、狭いながらもfree of chargeで利用可能なFitness roomがあるというので、私は自主トレへ。クロスマシンで軽くウォームアップと思ったら愕然。ちょっと動いただけで息が切れます。なんで? たった三日ほど動いていないだけなのに? 自分の身体がアンビリーバボーですが、「ならば余計に早くコンディションを整えなければ・・・」とゼイゼイいう体に鞭打ち、35分のエアロトレと拳立て、腹筋、懸垂、ジャンピングスクワットを各少々。もう必死の思いでやったのですが、終わってからよく考えたら、列車内で飲んでいたビールの影響だったのに気がつきました。俺って・・・馬鹿? 結論。飲んだらやるな、やるなら飲むな。皆様、肝に銘じましょう。

その夜は中華料理を食べに行きます。この度の取材には、かなり手応えがあったみたいで上機嫌な東塾長。すきっ腹のところに塾長一流の「ビール」「老酒」「ラーメン」のトリプル攻撃(笑)を受け、私は疲労困憊。ホテルに帰った後、孤崎支部長、神山支部長、岩木君の御三方はトレドの泉を観光に出かけましたが、私はダウン(「有効1」!)。そのままベッドに潜り込んだのでありました。

10/28

朝も早から自主トレ。昨日に引き続き、クロスマシンと若干の筋トレで一時間弱、汗を流します。退室の時にはちょうど塾長と入れ替わり。部屋に戻ってシャワーを浴び、皆で食事へ。こういうときにはいろいろな話が聞けていいものです。特に、互いに興味がある話題は、各々の道場の練習環境やら、支部運営の苦労やら。いろいろ伺った中でも神山支部長のご努力には頭が下がりました。さすがにその分、道場生の在籍数として、結果がついてきております。勉強になりました。押忍。

今日の昼はローマ市内を観光。もちろんツアーガイドは塾長です(笑)。なんでも世界中の文化遺産の四割がここイタリアにあるのだそうですが(裏を返せば、それだけ世界はキリスト教によって作られているということでしょう)。その中でも、特にローマは街中に史跡があり過ぎて、もう感覚が麻痺してしまいます。しかし観光地、観光地しすぎてしまっていて、人の生活観が感じられず、私的にはベネチアの方が良かったかな?

大昔の競馬場チルコマッシモから見上げるパラティーノの丘(歴代ローマ帝国の宮殿跡) 大昔の競馬場チルコマッシモから見上げるパラティーノの丘(歴代ローマ帝国の宮殿跡)
コロッセオの円形 コロッセオの遠景
ブルース・慎? ブルース・慎?

歩き回ってヘロヘロになってホテルへ。しかし後わずか一時間後に、また記者と会合です。今はローマで既に伝統空手の道場をやっているが「空道の道場をやりたい」と言っている人を一名連れてくるそうで、「そのスキルを見てやってくれ」とのこと。「ま、首実検だな(笑)」とは塾長の弁。
その首実検まではわずか一時間しかないので、神山支部長、岩木指導員、私の三人は近所の(日本で言うところの)コーヒーショップに入り、軽食。パニーニ一個とミネラルウォーターのボトル一個で3.5 Euro(約\525)。ローマの物価高はアンビリーバボーです。
そのまま急いで食べると、ホテルに戻って、岩木指導員に付き合い、軽く目慣らし。しかしそれも充分できぬまま時間がきてしまいました。大丈夫でしょうか? 世界チャンピオンの彼が不覚を取ることなどないだろうとは思いながらも、あまりの準備不足に一抹の不安はぬぐいきれません。

現れた対戦相手は、38歳で伝統空手、キック、柔術の経験者だとか。精悍な顔つきをしています。体格的には岩木指導員とほぼ五分くらい。でもそこは外国人、手足が長いです。ところでスキルチェックはどこでやるのでしょう? 不思議に思っていると塾長は「地下のFitness roomだ」と指示します。何と! そこにはわずか四畳半くらいのスペースもあるかないか? 大丈夫でしょうか? この狭さでは岩木指導員得意のカポエラステップは使えません。
私の不安をよそに、塾長のスキルチェックが始まりました。ワンツーやフック、前蹴り、回し蹴りなどをさせてみます。伝統派の癖が出ているものの、動きにキレがあります。これは強敵です。
いよいよスパー開始。開始前から相手は闘争心満々です。それもそれのはず。ただでさえこの狭い空間。常に間合いの中ですからのんびり様子見などしているわけにはいきませんし、それより何より、ここで東塾長にダメだしをされたら空道をやるチャンスは失われるのですから。開始と同時に相手は凄い勢いで攻撃を仕掛けてきます。しかしギクリとしたのもほんの一瞬。さすが世界チャンピオンの岩木指導員、そつなく対応して見せました。
その後も、首相撲、柔道式の投げの打ち込み、寝技とスキルチェックは続きます。キック経験者なのに首相撲は知らなかったようで対応に苦慮していましたが、投げの打ち込みは上手です。寝技はあっという間にマウントを取った岩木君が腕ひしぎを決めたところで終了。総じて、技術的にはまだまだの部分があるものの運動能力的にはとても高く、少し慣れれば問題なく空道ルールに対応できるだろうと思われました。

その後は歓談及び打ち合わせ。雑誌の編集者のお名前はイッポリー氏。マスコミ関係者にありがちなタイプでなく、見るからに人の良さそうなおじさんです。ご本人も長らく伝統空手をされているのだとか。スキルチェックを受けた彼の名はマッシモ氏。そしてもう一名、今回ここには来られなかったが、以前より空道に興味を示し問い合わせをしてきていた人にイタロウ氏という人がいて、その人はイタリア全土に32の道場ネットワークがあるとのこと。それで今回の先方からの要望は、イッポリー氏が両者を仲介し、マッシモ氏を日本に送って修行してきてもらい、イタロウ氏の各道場に空道のクラスを作りたいとのこと。何と言うことでしょう! これが実現すれば、空道のイタリア普及が一気に加速することになります。こちらとしても願ったりかなったり。成田を出発するときにはどうなることかと思われた今回のイタリア遠征でしたが、まさに災い転じて福となす、逆転サヨナラ満塁ホールランの結果となったのでありました。アンビリーバボー!!

ローマでの仕事も全て終わって、塾長も上機嫌で我々を連れて日本食レストランへ。海外では日本食レストランは玉石混交。特に日本食の知識が何もない中国人が単にその方が金になるからと言って、やっているものも多いようです。そういったところで生ものを食べるのは非常に危険ですが、しかしここは本物、素晴らしいお味でした。ところがやっぱりその分お値段も・・・後日支払額を聞いてビックリ。アンビリーバボーなお値段です。タダ飯喰らいですみません。ハンガリーセミナーではその分頑張ります。押忍。

右が「自分は出来ないが」と希望者マッシモを紹介してくれたBushido誌のイッポリット氏
右が「自分は出来ないが」と希望者マッシモを紹介してくれたBushido誌のイッポリット氏 

10/29

今日も自主朝錬。最初うっかり時間を間違えたかと思ったが、今日からウインター時間で時計が一時間逆戻り、OKです。しかしこんな習慣のない日本人には何か違和感がありますねぇ。

今日は再びEuro-starでベネチアへと戻ります。しかし後ろに座った中国人団体客のうるさいこと。「女三人寄れば姦しい」との諺がありますが、傍若無人ぶりでは世界に名だたる中国人には遠く及ばないこと間違いありません。途中で下車してくれないかなぁとの願いもむなしく、ベネチアまで四時間半を共にしてしまいました。ため息。ホテルについてからは中華料理店へ。今度は一言も口を開かずかつニコリともしない中国人のおばさん店員(?)に閉口。彼女の態度も反日教育の賜物なんでしょうか? 今日は一日bad dayでありました。

10/30

さていよいよここからハンガリー編。
今日はベネチアのマルコポーロ空港からブタペストへと飛びます。全ての搭乗手続きを終え、ハンガリー航空ブタペスト行きの飛行機に搭乗しようと車で向かった先に現れたものは・・・
「えっ? 嘘。先生、プロペラ機がありますよ」
「おい、まさかあれじゃないだろうな」
「いやでも先生、そっちへまっすぐ向かってます」
なんと今時プロペラ機です。しかも国際線で。アンビリーバボー! ま、これはこれでgreat experience ではありますが・・・ハンガリーはご存知の通り旧共産圏の国。やっぱり国自体貧しいのでしょうか? しかしCAの二人は美人です。特にオードリー・ヘップバーン似の方は「ローマの休日」の後だっただけに、約一名の萌えポイントをいたく刺激したようでありました。その約一名が誰であったかは秘密です、押忍(笑)。

ベネチアから飛行機で一時間半ほど。ブタペストに到着です。寒いです。風が強いです。Tシャツ一枚で悠々過ごせたローマはおろか、ベネチアと比べても比較にならない寒さです。東京ならば完全に冬の気温です。空港には、先に到着していた土田フランスパリ支部長が出迎えてくれています。遠いところご苦労様です。押忍。そういえば、我々が行かなかったイタリアの大会結果はフランス支部から参加した二名が決勝を争ったということで皆拍手(大会の様子が載った空道大道塾パリのHPはこちら)。

土田支部長は運送会社で働く傍ら、支部活動に尽力されています。私は日本の多くの支部長と同じように土田支部長は2 pockets であるとばかり思っていたのですが、実際にはまったく違っておりました。フランスはsports instructor 制度が大変に厳しく、公共の体育館を借りてスポーツの指導を行う為には
1)空道をナショナルスポーツとして認可してもらい 
2)本人をそのインストラクターとして認可してもらう(つまり国家資格である)。必要があるのだとか。
しかもこの時点ではまだ報酬はもらってはいけません。インストラクターにもグレードがあり、
a:指導するのは良いが、報酬を受け取ってはならない
b:指導し、ある一定額までは報酬を受け取ってよい
c:指導し、無制限に受け取ってよい
といったランクが存在し、これらが全て法律で決められているそうです。
よって現在、この制度においては無資格となってしまう土田支部長としては、体育館利用もできず、高い民間の合気道道場を時間で間借りし、指導しても無報酬どころかその家賃の払いの為に全て持ち出しになっていながら空道普及の為に頑張られているのだそうで、そんな実情は初めて知りました。ただでさえ異国で男一匹戦うことの大変さ。加えてそのような悪環境。頭が下がります。土田支部長は本当にサムライです。

その土田支部長とともにブタペストの空港で私達を迎えてくれた人は、この度のセミナー主催者のコント氏とその奥さんのネリーさん。二人は実はハンガリー人ではなく共にセルビア人だそうで、内戦後にハンガリーに移住してきたそうです。今はセゲド(Szeged)市という街で伝統空手の道場をやっているが、この度空道に転向するとのこと。したがって今回のセミナーは、そのセゲドだそうです。私も含めてほとんど皆が初めて知りました(笑)。しかしそれでも岩木指導員にはかないません。岩木指導員はハンガリーに来る事自体を知らずに今回の遠征に参加していたのでした(爆)。さすがは世界チャンピオン、突き抜け方が違います。アンビリーバボー!

さてここで、ハンガリーの基本情報を少々。面積は97万平方キロで日本の約1/4。人口は約1000万で日本の約1/12。2004年にEU加盟を果たすも通貨統合は未だで、2010年の実現に向けて努力中。通貨単位はFt(フォリント)。今年6月の為替レートによると\100=192Ftというところ。
セゲドは昔のハンガリーの中心地だったというので、日本で言えば京都や奈良のような町だと思えばいいのかもしれません。

夜は完全に冬支度
夜は完全に冬支度

今日はこれから、車でセゲドへ向かいます。途中の高速道路、のどかな田園風景が続きます。というか他に何もありません。そのまま約2時間、ようやく街並みが見えてきました。歴史を感じさせる建物はイタリア同様ですが、何かとても暗い感じの町に思えてしまいます。塾長も「15年前くらいのウラジオストックが、ちょうどこんな感じの町だった」なんぞとおっしゃっています。これで人口約40万、ハンガリー第二の都市だというのは本当でしょうか? ショールを被った道行くおばあさんの顔にも、そのしわの一つ一つに人生の悲哀が掘り込まれているかのような哀しみが漂っている気がします。そもそも人の姿もポツリポツリとしか見えません。ほとんど戒厳令下かと見間違わんばかりです。因みにセゲド市のニックネームは「The city of sunshine」。看板に偽りがあるような気がします? 

ホテルに着きました。妙に暗いです。天井を見るとライトの半分以上が点いていません。大丈夫なんでしょうか? チェックインを済ませ、エレベーターを待ちます。すん〜ごく遅いです。「遅いなぁ」と思わず言う我々に、「ハンガリーは国自体がSlowだから」と笑って答えるコント氏。なかなか洒落た台詞です。この一言で私は彼を好きになりました。
(結局、滞在中、私は一回もエレベーターを使うことなく、常に階段で行き来をすることになりました。)

さてその後、皆ですぐに食事に行こうとしましたが、例によって東塾長のPCがうまくネットに繋がりません。私も手伝ってあれやこれやとやっているうちに、ようやく繋がったのですが、そのときにはもう時間が中途半端になり予定を変更。先にコント氏への個人レッスンと私達の練習とを兼ねて、彼の道場で一汗流そうということになりました。
彼の道場はホテルから車で10分くらいでしょうか? 新しくはありませんが、動けるスペースだけで35〜6坪くらいはありそうな立派な道場です。しかし彼は塾長に不安そうに「これで空道をやるのに大丈夫でしょうか? 狭すぎませんか?」と尋ねています。もちろん塾長は「充分すぎるよ。日本では自分の道場を持っていること自体が珍しいくらいなんだから」と答えておりましたが、彼にしてみれば、武道の母国日本では素晴らしい環境で皆稽古していると思っているのでしょう。

準備体操の後、基本、移動で1時間弱、汗を流します。コント氏はやはり伝統派の癖がなかなか抜けず、なれない動きに苦労しています。汗まみれです。そして蹴りの移動の途中でとうとうgive up。なんでも膝を怪我して数ヶ月前に手術をしたのだとか。まぁ嘘ではないのでしょうが、でももうちょっとダイエットもした方がよろしいかと、彼の樽のようなお腹を見て思いました。

さて腹ペコになったところで、いよいよ食事です。初めて食べるハンガリー料理に期待が膨らみます。「肉と魚とどっちがいい?」と聞かれ、ハムやチーズに飽きてきていた我々は魚を選択。しかし、了解、と連れて行かれたレストランには・・・なんと壁に巨大なナマズの絵が描かれています。ということは、これから食べるのはナマズ料理? アンビリーバボー! 席に着くと確かにメニューに「catfish」と書かれてあります。しかも壁の絵から容易に想像ができるとおり、この店の名物料理のようです。どうしましょう? ついつい目が「meat」「beef」「chicken」等と書かれたページを追いかけてしまいます。同席するネリーさんは肉料理を注文。「魚は食べないの?」と聞く我々に「淡水魚の料理はあまり好きじゃないの」とあっさり一言。そ、そんなぁ・・・とうとう覚悟を決めた東塾長の「俺達が魚を食べたいって言って連れてきてもらったレストランで肉ばっか食うわけにいかないだろう」との一言でナマズ料理にチャレンジとなりました。これも大道無門です。押忍。

ところが出てきた料理は意外なまでに口に合いました。ハンガリーは、ヨーロッパの中で唯一アジアの血が入っている民族だそうなので、口に合うのもそういった部分があるからなのでしょうか? 因みにそのアジア人の血故か、ハンガリー人(マジャルー人)はヨーロッパの他国からは「あいつらは宇宙人」と言われているそうです。
更についでに、宇宙人といえば、このレストランに入ったとき、先に店にいた少年が食事の手を休め、まるで宇宙人でも見たかのようにポカ〜ンとした顔で私達を見ていました。こんな異国の遠い町に日本人が来ることなどない為なのでしょうが、宇宙人と呼ばれる人達から宇宙人のような目で見られる私たちって、いったい何者なんでしょう???

10/31

今日はセミナー当日です。昨夜は結局2時間くらいしか眠れませんでした。海外遠征に出かけると、アドレナリンが出まくるのでしょうか? いつも(遠征では)4時間くらいしか眠れない私ですが、さすがに2時間というのは初めてです。
道場に行くと、既にセミナー参加者達が待ち受けています。午前の部に集まったのは30名程度でしょうか? 成人男子が中心ですが、小学生くらいの子供、中学生くらいの少年少女や女性もいます。各人の経歴は、色とりどりの道着から察するに、伝統空手、フルコン空手、柔術、カンフー、合気道などのようです。
皆の見守る中、塾長とコント氏で新しくスタートする道場に対し、テープカットを行います。昨日の時点では赤い布で隠されていた「空道大道塾ハンガリー支部」の看板もお披露目されました(拍手)。

空道ハンガリー発進!!
空道ハンガリー発進!!

さてセミナーの開始です。昨日の予定では、今日の午前のセミナーは、ざっと基本をやった後、初級と中級以上とに分け、東塾長、孤崎支部長、神山支部長の御三方が初級クラスを見て基本と移動をやり、私、土田支部長、岩木指導員の三名で中級以上を相手に組み技を指導するというものだったのですが、柔術の人達がいたため急遽予定変更。中級クラスは打撃の攻防と寝技をやれということになってしまいました。

しかしそう急に言われても・・・三人で「どうしようか?」と相談しますが・・・う〜ん、どうしましょうかね? と、ここでハタと気がつきました。三人の中では私が一番上。つまり私が仕切らざるを得ないということです(←気づくのが遅すぎるって!)。しかし自分が決断しなければならないとなれば、すぐに方針は決まりました。もともとこの道場は伝統派の方達。顔ありも顔なしもコンタクト方式の組手自体を知らないのですから、完全に初心者を相手にするのと同様のプログラムで進めればいいということです。念の為それでOKかどうか塾長に確認したうえで、Ready, go!

方針さえ決まれば後は簡単。まずは顔なしから。英語の説明まで自分でやろうとするとパニクりそうなので、通訳は土田支部長に任せ(土田支部長は日本語、仏語、英語のトリリンガル。Cool!)、私は岩木指導員と実演。回し蹴りに対する脛ブロック、両手ガードから始まり、前蹴りに対する下段払いの捌き、胸腹パンチに対するディフェンス。顔なしライトスパー、顔面パンチに対するディフェンスと反撃と指導して〆。

そして次に寝技。ここは最初っから自分でやるつもりだったので、まったく問題ありません。英語の説明も自分で行います。ただし昨日の段階では一時間の予定だったのですが、もう残りは40分程度。しょうがない、できるところまで行きましょう。寝技の「Principle(原理、原則)」を強調して説明実演。抑えの実際、簡単な絞め関節、ディフェンス二種(エビ、肩ブリッジ)、ライトスパー、パスガードと進んだところでタイムアップ。短い時間ながらライトスパーまでこなして、皆嬉しそうです。本当はガードからの返しと絞め関節までいきたかったのですが、まぁこんなもんでしょう。

セミナー前の打合わせ セミナー前の打合わせ
まずは正座! まずは正座!

昼休み。牛スジ(?)の料理をいただきました。これも美味です。本当にハンガリーの料理は口に合いました。雑談の途中、各人の職業の話になりました。コント氏本人は専業者かと思いきや、道場の他にSP(要人警護)の仕事もされているとのこと。伝統派から空道に転向したいというのも、そういうリアルな環境、経験がある為かもしれません。孤崎支部長、神山支部長のお仕事を紹介された後、塾長は「He is a professional. He is a good trainer and has often made his students into champions.」と私を紹介します。要は「専業者だ」ということですが、ドキッとしました。
プロフェッショナル。私は以前から「皆プロにならなければダメだ」と主張してまいりました。「それで生計を立てるかどうかは別にして、専門家という意味でプロにならなければ」と主張してまいりました。そして実際に私は専業者への道に踏み込みました。(浦和・久喜・大宮西支部ホームページ コラム参照
しかし、今の私は本当の意味で「プロフェッショナル」という言葉にふさわしい存在なのでしょうか? 正直未だ自信がありません。
I’m a professional.
But, not the professional.
I want to become the professional.

さて午後のセミナーです。TVの取材も来てくれています。おのずと東塾長も気合が入ります。今回の遠征途中、自主トレ時に左膝を悪くし、昨日も号令掛けだけで大事を取り自分では動かなかった塾長ですが、“名医”神山支部長のキネシオテープのお陰で今日はもう大丈夫です。

午後のメインは投げ技です。東塾長が、パンチ連打から首投げ、堪えられたところで膝つきの巻き込み、相手のミドルをキャッチして大内刈り、そこからのアキレス、膝十字など、流暢な英語解説と共にノリノリの実演で進行。セミナー参加者達も充実の二時間を過ごし、セミナーは成功裏に幕を閉じたのでありました。

さて、「セミナーの後は、皆で温泉に入りに行きたい」と塾長はハンガリーに来た初日から申されておりました。ハンガリーは温泉で有名です。しかしいくら「hot spa」と言っても何故かなかなか通じません。今日の昼の時点でも、です。正直「こりゃ温泉はなしだな」と思っていたのですが、とうとう塾長の執念が伝わったのか(笑)今日はこれから温泉体験に行くことになりました。連れて行かれたところは「これは市庁舎か何かか?」と見紛うばかりの立派な建物です。
しかし温泉についたはいいが問題は水着です。ハンガリーの温泉は男女混浴。故に当然水着着用で入らなければなりません。実は日本でざっと立ち読みしてきたハンガリーのガイドブックにはそのことが書いてありました。「ハンガリーに行ったら温泉入ろうって話になるかな? 水着持っていったほうがいいかな?」とはその時チラッとは考えたのですが、「どうせ皆が持っていかなかったら一人だけ持って行ってもしょうがないだろ。特にこの本には『施設にはレンタル水着もある』って書いてあるから、ま、いいな」と持って来なかったという経緯がありました。しかし困ったことにこの店には「レンタル水着はない」と言います。「じゃ入浴は無理だな」一旦はそう思ったのですが・・・悪夢はここからスタートしました。
塾長が「そんなもん(下着の)パンツでいいよ」等と突然恐ろしいことを言い出します(かく言うご本人は下着自体を忘れたということで、コント氏に水着を買ってもらっています)。「えぇ〜、そんな先生、無理ですよぉ」と抵抗する私達ですが、一切容赦のない塾長。最初は冗談だと思っていたが甘かった。「お前らコントにこれでいいかってパンツを見てもらえよ」。東塾長、完っ全にマジです。しかしそういわれても私のパンツはニットトランクスです。普通のトランクスではありません。“ニット”トランクスです。しかもあろうことか、しま○らの特売セールで買った¥○のペラッペラの品です。普通にはいている分には薄く柔らかい生地が実は結構「お気に」の品ですが、さすがにこんなので水に入るなんてありえません。ほとんどミッション・インポッシブルです。
他の人の下着に対しては即座に「ok,ok」なんぞと笑って言っていたコント氏(実際、私の目から見ても、普通のトランクスないしはボクサーブリーフですので、まぁあのくらいなら何とかというレベルです)でしたが、私に対してだけは一瞬の沈黙。そして出た台詞は「not too bad」です。「not bad」ではありません。「not “too” bad」です。しかもあらぬ方向を見ながら言ってます。私と決して目線を合わそうとはしません。世界広しと言えども、ハンガリーのスパーに、し○むらのパンツで入ろうなどとする人間は私一人でありましょう。中で水着姿のsexyなハンガリー美女にさげすみの目で見られでもしたらどうすればいいのでしょう? もう一生のトラウマになりそうです。しかし温泉に完全に心を奪われている塾長はまったく耳を貸してはくれません。
「しょうがない、ヒンシュクを買ったときには『I’m a Chinese.』と言おう!」
北京に聞かれたらほとんど国際問題になりそうな台詞と共に、押忍の心で私達は入浴の覚悟を決めたのでした。

入ってみると、中は温泉のイメージとは違い、ほとんど温水プールのような湯温です。なるほど塾長がhot spaと言ってもなかなか通じなかったわけが分かりました。中では私はなるべくコント氏の巨体の陰に隠れて過ごしました。湯温が低く寒いので、本当はすぐにも出たかったのですが、なかなかコント氏は出てくれません。ようやく上がれたときには、塾長はとっくに上がって着替えた後でした。「なんだ、慎二。一番ダメだダメだって言ってたくせに、一番長く入ってるじゃねぇか」と笑う塾長。違います。出られなかったんですっ!(涙)

帰りの車の中で「でもおばさんばっかであんまり目の保養にはならなかったですねぇ」と土田支部長。うーん、確かに。ホッとしたのが半分、残念なのが半分かな等とと思っていると「いや、結構いましたよ。特に青い水着の子は可愛かったです」とあっさり答える岩木指導員。えぇっ、どこでそんなの見つけていたの?あんな状況下で、この冷静な周囲への目配りと判断力。さすがは世界チャンピオンと言わざるを得ないエピソードです(笑)
この後、イタリアンレストランで、美味しいスパゲッティボンゴレをいただいて、激動の一日は幕となったのでありました。

11/1

今日はコント氏が自宅に呼んでくれるそうです。
が、その前にセゲド市内を軽く観光。町のシンボルとも呼べる大聖堂を見ます。ここのパイプオルガンはヨーロッパで二番目の大きさだそうです(因みに一番はミラノの大聖堂)。今日11/1はヨーロッパの休日。何でも亡くなられた方を偲ぶ日ということらしく、ということは日本で言えばお彼岸のようなものなのでしょうか?(※正しくは諸聖人の日と呼ばれる、主としてカトリック系キリスト教の祝日。)大聖堂の中にも入れていただきましたが、まさに荘厳の一言です。神父さんのお話に敬虔に耳を傾ける人達。元来無宗教な私(ただし無神論者ではない)ではありますが、このような場所ではキリスト教の偉大な力に圧倒されそうな気持ちになります。外に出るとゴォ〜ン、ゴォ〜ンと森厳なる鐘の音が聞こえています。暗く寂しいハンガリー。長らく厳しい歴史に耐えてきたハンガリー。ハンガリーの国歌名は「神よ、ハンガリー人を祝福したまえ」というそうですが、神はハンガリーを祝福してくれてきたのでしょうか?

その後、英雄の門などを見て、コント氏の自宅へ。コント氏の自宅は共産時代に建てられたapartmentです。びっくりすることに、玄関で靴を脱いで入室です。さすがkarate-man、もとい、昨日からkudo-fighter=kudistです。
ここでは超巨大な宅配ピザ(推定、直径55〜60cm!)とパリンカというお酒とで歓迎してくれました。このパリンカはウォッカに似ていますが、フルーツから作った蒸留酒。今もセルビアに住むネリーさんのおじさんの手作りだそうで、なんとアルコール度数は約50%。強烈です。しかしそのパリンカを孤崎支部長は一気飲み。凄いです。サムライです。この一件で孤崎支部長は「パリンカ孤崎」の異名を取りそうになりましたが、「弱そうでいやだ」との一言の元に却下。代わって4杯飲んだ私が「パリンカ慎二」の名前を拝受することになりました。

一息つくと、ネリーさんと東塾長は旅費の清算などのお話を始めます。それを見たコント氏は一言「She is a boss.」。「日本でもsameだよ」と返す私と大笑い。しかし、ちょっと意外だという感じで「でも日本じゃみな男がbossなんじゃないのかい?」と問うコント氏。日本女性は皆、男を立て、従順に尽くすイメージが強いのでしょう。「いや、そんなことないよ。どこでも同じ」と答えておきましたが、イマイチ信用してなさそうです。そして「でもbusinessのbossは彼女だけど、lifeのbossは俺だぜ」と胸を張るコント氏。ハイハイ、そんなに見栄を張らなくてもいいからさ(笑)インターネットで各支部のHPを開き、コント氏に我々の支部を紹介している間に、いよいよお開きの時間となってしまいました。

巨大ピッツァ! 巨大ピッツァ!
巨大ピザ
「こんなに大きなの食べたことないですよー」

その後、ホテルへ戻ってチェックアウトの準備。このホテルでの最後のメールチェックをする東塾長を待ちます。今日はこの後ブタペストまで送ってもらい、そこでいよいよ彼らともお別れです。「お別れかぁ」改めてそう思ったら何かセンチな気分になってきました。そういえば彼ら自身も、私達が彼らの家から失礼するとき、何か名残惜しそうな悲しげな表情を見せていました。そんなことを考えていたら・・・あ、ダメだ。思わず泣きそうになってしまい、一人ホテルの外に出ます。しばらくすると、様子が変だと思ったコント氏が出てきて「どうしたんだい?」と尋ねてきます。いい奴です。

先に述べていたように、もともと彼は伝統空手の道場をやっていました。今回、それを空道に替えるということで、実はお弟子さんの半分が辞めてしまうことになってしまったそうです。しかしそれでも、「どうしても空道がやりたい」との熱意での今回の転向劇。更に言えばハンガリーの成人男子の平均収入は400Euro(約\60,000)位だとか。今回日本から塾長他私たちを呼ぶに当たっては精神的のみならず、金銭的にもかなりの負担があったことでしょう。彼とネリーさんにとって今回我々を招待してのセミナー実施は、ある意味人生を掛けた大決断、大イベントだったに違いありません。彼らの主催した今回のセミナーは成功裏に終わったことは間違いないでしょうが、しかし本当に大変なのはこれからです。頑張ってほしい。成功して欲しい。心の底から、痛切に思いました。
「このままここに残って彼らの手助けができたら・・・」そう思ったら最後、感情が沸騰してきて、日本語では恥ずかしくて言えないような台詞がつい口をついて出てきてしまいました。
「I miss you.」
「I miss you, too」
涙でウルっている私を、コント氏がhugしてくれました。ほとんど世界ウルルン滞在記リアル版です。

皆がそろそろ外に出てきました。泣き顔を見られたくないので、また私は一人その場を離れます。十字路の真ん中に立ち、四方の通りを眺めます。いつの間にかしとしとと雨が降っています。私の涙雨かもしれません。
なぜでしょう。初めて来たとき、暗く寂しく感じたセゲドの街並みが、今は何故かとても懐かしいものに感じます。涙が流れて止まりません。アンビリーバボーです。「あなたの前世はハンガリー人です。セゲドで生まれ育ったんですよ。」インチキ占い師にそう言われても、今の私なら信じてしまうかもしれません。

例えばサッカーでは、代表監督に外国人を雇って、チーム強化に励んだりするのは、普通のことです。将来、空道でもそういう日が来るのでしょうか? 私が将来、空道ハンガリーチームに迎えられて、選手を育て、チャンピオンを出す。そんな日が来ることはありえるのでしょうか? この町から、この国から空道のヨーロッパチャンピオンが出たら、暗く寂しく見えるハンガリーの人達も、元気に明るくなってくれるでしょうか? その為の力に、もし私がなれるのなら・・・
しかし私には日本には大事な家族、弟子、仲間がいます。そんなことは不可能であることは百も承知です。馬鹿な夢想はいい加減にして、自分ができること、やらねばならぬことに集中しなければなりません。

今回の遠征に連れて行ってくださった東塾長、ありがとうございました。いろいろとお世話を掛けました孤崎支部長、神山支部長、岩木指導員、土田支部長、ありがとうございました。更に10日間もの長きにわたって日本を留守にすることを許してくれた家族と道場生たち、ありがとうございます。皆様方のご好意に報いられるように、今後もまた一層の努力させていただきます。本当にありがとうございました。
I’m a professional.
I’ll be the professional, I swear.
押忍!

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