(台湾)散打大会参加レポート

植田毅(総本部)

散打2005_1
(編集部注:最前列右が植田選手)

今回、台湾の華義盃第1回全国散打摶撃錦標賽に出場させて頂きました。実は僕と散打とは不思議な縁があり、まずその経緯から説明したいと思います。
僕はもともと中国武術も好きで、大学は台北の中国文化大学で、体育系國術組で中国武術を学びました。その当時は散打には興味はなく中国武術は一つの文化、演武のための物という意識がありました。台湾で套路の試合は何度か出場しましたが、日本人として特別視されてか不当に点数を下げられたりしていい結果を残せなかったという苦い思い出があります。
そして台湾の武術套路コーチの張氏(もと台湾の套路代表選手。今回の大会の主催者、張恩煌さんは別人で友好関係にあります)といろいろ話すにつれて張氏は中国で急成長してきた散打の強さを主張するようになり、日本の武道、特に空手には偏見を持って、日本の空手はダメだと批判ばかりするようになりました。僕は中国武術も好きですが、その前に日本人として日本の武道に対する誇り、尊重する気持ちも持っています(僕ももとは空手をしていました。格闘技としては日本の空手の方が強い、という思いもありました)。また中国武術の国際大会で散打が種目に入っても日本から選手は出てきません。それで張氏は再三、僕に「なぜ日本は套路だけやって、散打はやらないのだ!」と挑発するように言ってきました(僕に言われても関係のないことなのに…)。ただ中国の選手は本当に強いらしく、それは気になってきました。日本の空手で対抗できるのはやはり大道塾の格闘空手(現在は空道)かな、とも思うようになりました。

1998年のバンコックアジア大会には台湾チームと一緒に観戦しに行き、初めて生で散打を見ました。翌年の香港の世界選手権大会では初めて日本(しかも大道塾!)が散打に参加しました。そこで初めて東先生とお会いしました。そんな縁もあって、その後僕は日本へ戻り大道塾に入門しました(ただその時は僕が実際に散打をするとは全然考えていませんでした。散打に限らず世界の様々な格闘技と比較されても大道塾の空道は見劣りしない日本武道だと思ったからです)。ただ久々に帰って来た日本では他にもいろいろやりたい事があり、他の仕事も忙しく、それほど大道塾に専念していたわけではありませんでした。しかし大道塾を中途半端で終わらせるのももったいないと思うようになり、一昨年くらいからまた大道塾を中心に置いて稽古しだしました。そして去年はミャンマーで行なわれた第6回アジア武術選手権大会の散打の種目に出させて頂きました!かつての台湾の友達が出ていた同じ国際大会に出場できると言う事で興奮しましたが、自分はベトナムの選手と当たりました。日本の散打コーチの木本さんからは再三、「散打の選手のレベルはすごく高い、基礎体力が違う」と半ば脅かすように言われていましたが、実際やってみて思ったほどの体力差は感じませんでした。ただ蹴り技などは上手く、やはり散打の技術、試合運びは熟練していると思いました。それと試合開始後1分くらいで左目のコンタクトレンズが落ち、見えなくなり、審判にアピールしましたが言葉も通じず、そのまま続行され判定負けとなりました。いい結果が出せなかった悔しさとともにもう一度チャレンジしてみたいという気持ちも出てきました。それで散打の試合の経験を積みたいと思い、木本さんから木本さんの先生である張恩煌さんの主催する台湾の散打全国大会に出場するという話が来たので(毎年、台湾の友達から来る年賀状で台湾に次いつ来るのか、と言われていたのでもともと今年、台湾に行こうとも考えていたので)、その大会に出場をする事を決めました。
そして石巻支部から鈴木先輩、そして東先生も来られる事になりました。それと東京散手倶楽部の選手も3名出場しました。

今回の大会は張恩煌さんの主催する華義盃第1回全国散打摶撃錦標賽という大会です。台湾はもともと独自のルールの擂台の試合がありますが、今回は中国と同じ国際ルールによる大会で、全国大会だけあってかなり手強い選手もいました。しかし去年の試合の経験もあるので、今回勝てなければまずいと思いました。またコンタクトレンズが落ちると思い、スペアも用意して行きました(案の定、決勝で一度落ちました)。

僕は体が小さいので(大道塾の大会でも大体、軽量級の中でも最軽量になります)いつも体の大きい人に圧力を感じていますが、散打は階級が多いので減量し、56KG級で出たので特に体力差も圧力も感じず、今回は比較的落ち着いて試合が出来ました。中国の選手のように側?(横蹴り)を出す選手もなく、技はほとんど見えたと思います。散打は投げのポイントが高いので主に投げを狙い、試合の判定も比較的公平だったと思います。各階級、大体8名前後のエントリーで、3勝して優勝できました!

散打2005_4 散打2005_4

試合後の翌日は5年ぶりに会った台湾のクラスメートが中心に同窓会のような形で食事をしましたが、僕が優勝した事を喜んでくれ、いい形の再会となりました!
かつて台湾の一部の心無い人から、自分は套路ばかりやっていたので散打はやらないのか、と挑発されたこともあり、また日本の空手はダメだ、と批判する者もいましたが、今回の試合に勝てた事で少しは日本の空手、空道の力を示すことが出来たと思いホッとしたという感じです。ただ鈴木先輩は石巻支部で初出場であり、散打の情報もあまり無いためか、散打のルールも階級の話も何も聞かされず、ほとんど準備が出来てないまま試合に出場する形になったので惜しくも判定負けしてしまいました。

日本では散打はまだまだ知られていません。一昨年の北京で、中国の前衛から無理に頼まれて応じた中国対日本の対抗試合に出た大道塾のほとんどの選手も散打を知りませんでした。やはりいきなり知らないルールの格闘技の試合に出るのは不利だと思いました。今後も他の大道塾の塾生が散打の試合に出場する可能性があります。出来れば僕個人としては、大道塾の中で散打対策用のマニュアル、試合のビデオ、DVDを作り、散打の出場が決まった選手に送ることが出来ないかと思いました。そうすれば散打が初めての地方の選手でもそれを参考にある程度準備が出来るので、もっといい結果が出せるようになるのでは、と思います。
散打は大小様々な国際大会があり、大道塾も散打の賛助団体として選手が出ているので試合経験を積むには一つのいい機会だと思います。
最後に今回、優勝できたのは東先生を始め、日頃指導していただいている先輩方、道場の仲間、みなさんのおかげです、本当にありがとうございました!

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