モスクワ遠征レポート

五十嵐祐司(三沢支部)

昨年無差別の副賞で海外支部視察ができると聞き、どうしてもロシア選手権を見たいと思った。やはり競技人口"ウン千・ウン万"超(?)からくる選手層の厚さは絶対にあると思っていたし、間違いなく日本勢にとって一番マークしなければいけない国の状況を見たかった。ロシアは、この大会で代表選手を絞り込み、残り10ヶ月磐石の体制で世界大会に望むことや、毎年、全日本のビデオを入手して日夜研究を欠かしていないことも聞いていたこともある。それと、まずは4年振りに来た"お祭りイヤー(?)"に対する現地の熱気を肌で感じることが絶対に自分の精神的な部分にもプラスになると思い、先生にお願いしたのが昨年末。年明け許可の返事頂き、今回は藤松と3名で行くことになった。

解説者みたいに言う身分ではないので、あくまでも私見ということで述べさせてもらいたい。

全体的に見た大雑把な感想。
1.ファイトスタイルは左右のフック連打中心に相手を休ませないラッシュが多い。組んでは背負いなど使う選手はほとんどいないが、強い背筋を持つからこそできる半ば、
2.強引な投げ(スープレックス系)やタックルが多いのも目立った。寝技はどうだろうか?
3.関節技(腕ひしぎ、腕がらみ)は強引な力で返してくる。むしろ絞め技の方が有効ではないかと思ったが、いかんせん北斗旗は30秒ルール。あまり固執せず、やはりスタンド勝負でいかに主導権を奪うかといったところか?先生とも話していたが、単なる打撃だけなら黒人などの方が優れている。しかし、大道塾の様に殴って・蹴って・投げて・絞めて・間接もOKとなる総合ルールならロシア人が世界で一番向いているのではと。基本的に野蛮な(?)人種なんだと・・(笑)。
個別には選手の名前と顔が一致しないので、興味ある方は藤松レポーターが塾長の高画質ビデオでしっかり撮影しているので見させていただくと良いと思う。

軽量級は前回の世界大会で日本にも顔なじみのデニス・シニューチン(前回・世界大会軽量級2位)の力が前回以上に安定しており、年齢的にも今が一番『旬』を迎えているのでは感じた。準優勝の選手や中量級のファイナリストだってそれに勝るとも劣らない。当然といえば当然か・・?
軽量・中量級については現時点では日本の方が有利かと観戦前は思っていたが、そんな甘くはなかった。
軽重量・重量級は、連中にとっては日本で言う中量級的な存在なのだろうか?ラフファイト+テクニックも備わっており侮れない。

私は自分が一番可愛いから、やはり己の階級「超重量級」は特に見入っていた。極端にデカイのは1人いたが、それは予想ハズレの試合。しかし280クラスの選手に現時点で自分が勝る部分は少ない。素直に認める。今回、欠場したモスクワ創設期から頑張っているエース、フィリポフとアージャコフのどちらかも当然、出てくるものと思われる。試合運びがどうの?カウンターがどうの?そんな世界じゃない。まず『地力』。一言でいうと簡単だが日々の積み重ねのみ。フック連打だって簡単に書いたが、よほど強いリストがなければ打ち続けられない。具体的に、やらなければいけないと感じたことはあるが、明言は避ける。見て本当に良かった。

試合以外の所感

ロシアにおける大道塾の政治力は現地入りしてから驚嘆の連続。スポンサー企業の大きさ、多さからくる支援体制の凄さ。今回もアエロフロート航空やマリオットオーロラホテル(モスクワNo1の5つ星ホテル)、地元マス各社、がスポンサーについて国のキーマン的政治家が多数、会場に来場していた。「空 道」という武道競技名の理解に共感を覚えている観客の姿は目にすることが多く、確実にこの国で大道塾というより「空道」の知名度が上がっていることを感じていた。アナスキン支部長はじめ幹部生の普及活動に対する尽力、大道塾に対する忠誠心は日本人も見習うべき点多々。2001年より決定した組織の方針『空道の社会的浸透、市民権の確立』を何の迷いもなく邁進している姿には敬服。しかし、どの国でも組織が大きくなればなるほどいろんな柵や課題が多くなり、それに比例してストレスもあるのだろう。我々は参加しなかったが、全ロシア支部長会議を終えた先生の顔色が物語っているように感じた。

日本は武道発祥国であるからこそ、例えどんな素晴らしい理念やルールを持って立案・活動しても、保守的な体質を持つため受け入られにくい国なのは周知の通り。しかし、この国は歴史的に見ても外圧あって初めて変化をもたらす体質もあることも確か。大道塾ロシアが勢力拡大するのは確かに日本にとって脅威ではあるが、これからも益々、頑張って欲しいと思う矛盾した気持ちも持った。外敵の支援体制や環境にひがむ気持ちはさらさらない。与えられた環境で、しっかり結果を出す。一生懸命頑張るなど甘えた気持ちではやられてしまうと帰り路は考えて戻ってきた。

最後に、まず年明け早々こういった機会を与えて頂いた先生に感謝致します。ビザ手続き等々、奥様はじめとする総本部事務局スタッフの皆様ありがとうございました。そして藤松、ご苦労様。

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