「19 Festival des Arts Martiaux Bercy 2004に参加して」

五十嵐祐二(三沢支部)

≪今回の日程≫
初 日:AM8:00池袋集合→成田12:00発
2日目:現地時間PM4:00着(日本時間AM4:00)
     土田支部長と合流後、チェックインしフランス支部道場へ行き定時稽古見学
3日目:「第19回武道の祭典」へ招待参加
4日目:オープン参加による大道塾セミナー実施(午前:少年部、午後:一般部)
5日目:パリ市内観光(高松先輩、フランス支部塾生の3名で)
6日目:AM:塾長とパリ市内観光→PM2:00パリ発
7日目:PM3:00成田着(現地時間 AM7:00)

今回、事前に聞かされていたのが、何やらパリ市内で複数の団体を集めた国際的な演武会に参加するのでアンドレ・ストッパ(伊)支部長と組手をやれと。後は次の日現地セミナーを行うこと。日程は1週間。詳しいことは当日と大道塾的 (?)な伝言がきたのが1ヶ月前。急いで会社に有休申請出したのはいいが、2週間前くらいから「日程は4日間かも?」だのなんのと流動的な連絡。仕事もたまたまその週が新商品発売に重なっていた為、「実は4日間ぐらいになりそうで・・」なんて逐一上司に報告すると「おまえー本当は国内にいるんじゃないのかー?」なんて言われる始末。とにもかくにも「当初予定通り」の連絡が1週間前にきたのはいいが、なぜか旅に行く雰囲気が自身の気持ちで盛り上がらないまま適当に仕度をして東京入り。翌日早朝の池袋集合に備えた。

初日
先生、高松先輩と池袋のバス停で合流し成田へ。バスの車中で極真の木山さんが先生へ挨拶にこられた。「どこ行くのー?パリの演武会?一緒か!」どうやら先生自身も初耳で日本からは大道塾と極真の2団体が招待された様子。日本時間12:00に成田を出た。先生の長年の経験と御好意で3人縦に分かれたうえ、横3列シート誰もいなかったためエコノミーで10時間?も何とか何とか。

2日目
シャルル・ド・ゴール空港に着くと土田支部長と幹部塾生ジャンメルの出迎えあり車でパリ市内ホテルへ。主催者用意の3ツ星ホテルだが隣にスーパーなどもありマズマズ。チェックイン後、フランス支部の定時稽古見学へ向かう。この日の指導は土田支部長が迎えに出てくれたので、イタリアからきたストッパ支部長の特別指導。190cm100kgの大柄な体格は目立つ。しかし、今日車で着いて、早速指導している姿、熱意には敬意を表する。日本も熱くならないと・・。

稽古終了後、幹部塾生と懇親会をするも時差ボケで眠い。深夜12時でお開きは良かったが考えてみれば脳ミソは日本時間で深夜12時に起こされて(空港着)朝8時まで飲んでるようなものだから当然か?

3日目
朝から、今回の最大目的である『第19回武道の祭典』参加のため会場へ向かった。到着してまず会場の大きさに驚いた。アリーナである。演武会と聞いて「どうせ来ても200人ぐらいだろう」とナメていたらとんでもなく勘違いだった事を、時間が経つにつれ目の当りすることになる。このイベントはフランス国内No1格闘技雑誌『カラテ・ブシドー』主催による毎年恒例の演武会で、フランス国内及び海外からの招待を含め約30団体を集め、各団体別に試し割りや演武・型などを披露していくという内容でまとめられている。会場の「パリス・オムニスポーツ・デ・ベルシー」は、過去にも「大相撲パリ場所」「K−1パリ大会」なども行われており、最大収容人数2万4千人可能な中、当日は主催者発表1万9千人集まった!その模様はフランス国内衛星TV(chユーロスポーツ)で3時間ライブ放送され、後日、現地ではDVDまで発売されるという!

お国柄といえばそれまでだが、フランスは武道母国「日本」以上に武道に対する独特な価値観を持っており、「演武会」に2万人近くもチケットを買って人が集まりそれがライブ中継されるなど日本では到底考えられない。ちなみにVIP席が42ユーロ[約5600円]、自由席が27ユーロ[約3600円]で売られていて日本ではホント、演武はタダで見るものという感覚があるだけに驚嘆した。

又、このような伝統あるイベントに数多く存在する日本の武道団体の中から大道塾が選ばれたことは大変光栄に思うと同時に、大道塾・空道スタイルに対する関心の高さ、今後ヨーロッパ圏内における急激な発展の可能性を肌で感じ脅威さえ覚えた。

演武会当日の内容は、各団体5〜10分の持ち時間を与えられ、大道塾は初参加ということもあり?6分と言われていたらしい。初めに東塾長と高松先輩が実戦で使える大道塾流の護身術的なデモを、後半は私とアンドレでスパーリング(組手)を行い終えるという形をとった。朝9時半に会場入りして午前、午後と2回のリハーサルを行う。各国様々だ。我々の時には、本場、中国からきた少林拳が丁度やっていて、ストッパがそれを見て感動したのか横で同じポーズを見真似でズッーとやっていたら、向こうが段々馬鹿にされてると思ったのかイヤな顔になっていったのには笑ってしまった。

午後7時には開場。演武前には大道塾の試合模様を両サイドのオーロラビジョンに流してから演武に入るという恵まれた演出。ホント、「ハー?ここまでやるか」といった感じ。完全終了まで待たず(それでも11時くらいだったが)外に出た。我々大道塾10数名と極真会館・松井館長一行10数名で美味しいレストランで懇親会を行い、それからカラオケに移り朝まで、果てなき戦い(?)が続いた。

4日目
演武会の次の日行った現地セミナーではオープン参加で行ったせいもあるが流派問わず100数名の参加に昇り、中には今後の世界大会などですぐに名をあげてくるような逸材も当然いた。基本、簡単な約束組手中心に行い盛況の中、終了。「ちょっとスパーリングさせてくれー」なんて荒くれ者は出てこなかったが、大道塾・空道スタイルに対しての質問が多いのには困った。一番感じたのは、先生の話や著書の中で、「世界的なレベルで『空道』ほど実戦性・安全性・大衆性を兼ね備えた武道スポーツ(競技)はない」とは聞いていたとはいえ、現場でその熱気に直面すると、改めてその言葉の意味の深さを知る。繰り返すが、やはりフリースタイルでこれだけ安全で且つ世界規模で競技を行っている団体だからだと連中は言う。土田やストッパのような人材がしっかり継続していけば、近い内にヨーロッパ大会などそれなりの形が出来上がる日も遠くはないと感じた。

夜の懇親会は全員、この遠征、日本・現地組共に最大の疲れでピークを迎えていたので、幹部塾生が気を使いトルコ料理の店に行き名物料理「クスクス」を頂くも、私には「おからの山盛り」にしか感じなかった。トルコ的には炭水化物の1種らしいが、肉汁を添えたり色々、アレンジしても「おからの山盛り」は疲れのせいか口の中でパサついていた。

5日目
午前中、少し簡単な身の回り整理などでゆっくりした後、先生と一緒に昼食をとる。先生は執筆作業の為、午後は高松先輩とフランス支部塾生の案内で市内観光。今回の旅は本当に天気には恵まれない。終日快晴という日は一日もなかった。パリ市内の印象は数多い建築遺産が多いため景観を非常に大事にしており、日本やアメリカのように各業種、派手なネオン・看板の店はほとんどない。高層ビルなどもないため眼が疲れなくて、田舎者の自分にとってはちょうど良い。唯一、シャンゼリゼ付近に行くと表山道のようなブランドショップが建ち並び周りから浮いているのが目立つ。又、その付近なると日本人が多いのも目立つ。特に世間で言う中年女性、単身OL、女子大生の卒業旅行風が名所に行くと多かった。帰りの空港でもそうだがホント、日本人のブランド好きと「お金持ってまーす!」的な平和な笑顔は、いいのか悪いのか。

あと気が付いた事だが、犬のうん○が多いのには困った。中心部はまだ良いが、我々の泊まったホテル周辺などは、さほど中心部から離れていないが、まるで地雷のように道の真中に数多い。聞くと清掃業者が朝片付けるそうだが、悪びれることもなく、あんなに多いと「午前中は歩くな!」というサインなのか?確かにこっちは何事も焦る習慣がないのは感じられるが・・。

最後に、現地で土田支部長には本当にお世話になった。改めて御礼を言いたい。本当に有難うございました。歴史的にも西洋人のプライドが高く、特にオリエンタルを蔑すむ環境の中、言葉の壁なども含めて本当にたくましく頑張っていると思う。『大道塾空手・空道』が精神的なバックボーンになることは確かだが、しかし、それでも時には様々な葛藤があると思う。その中で成功者となり日本の塾生にも希望を与えてもらえればと今後も陰ながら応援したいと思う。

海外普及のスピードは著しいが、裏を返せば、そのスピードに中身が果たしてきちんとついていっているのか?という不安もある。お家日本はこれから益々「信」が問われてそれに応えていかなければならない。そのことが国内の繁栄にもつながることなので私自身、自分の中でできることはしっかり行わなくてはと強く感じさせられた旅となった。

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