「あずまカップ」極東シベリア体力別大会報告

レポート:A. コノネンコ
2002年11月23日ウラジオストク

今年のウラジオストクの秋は長老でも覚えてないほど寒かった。10月から吹雪に追われ11月の気温は1月並に氷点下15−20℃まで下がって、毎日強い風が吹いているという無愛想な天候で熱い戦いが始まった。「2002年あずまカップ」極東シベリア体力別大会が行われた。

最初の予定で東先生と日本の選手の来着が期待されたが塾長の予定は他の行事と重なって、そして行けそうな若手の日本の選手はほとんど「北斗旗」に出た為日本からの選手団が来られなくなった。「北斗旗」は全日本大会になってロシアの選手出場できなくなってから、ロシアの選手にとって海外の選手と交流する機会がほとんどなくなった。それに今回の大会日本からだれも来ないと聞いた時は皆はがっかりした。それに日本と同じような傾向で今回の大会では、世界大会とその予選の経験を持つべテランの選手は殆んど出なかった。大会が始まる前に若手の選手が本当に大会を盛り上げるのか、お客は本当に集まるのか、という心配が職員の頭を悩ませた。

大会前日に帯審査が行われた。昇級審査は現地で行われるようになったが、昇段審査は基本的に東先生がくる時とか、大きな大会か合宿の時しか行われない。従って、年に1回か2回です。今回を機会にして選手を含めて18人が昇段審査を受けた。次の日に大会があるとに関わらずに皆は基本、移動、ジャンプスクワット、拳たてをやって選手だけ組手をやらなかった。

次の日、土曜日、朝10時から大会が始まった。5階級で選手40名。同時に別の会場で全ロシア超重量級ボクシング大会が始まった。「タイミング悪いな、客はほんとに来るのか?」と思ったが、あっという間に会場は一杯となってやはりロシアで格闘技の中で大道塾は人気がありとても高く評価されている。

軽量級(−230)

軽量級で8名の選手が出場した。この階級で特に目立ったのはレオノヴェツ選手とズロービン選手。レオノヴェツ選手はボクシング出身で数々のボクシング、キックの試合で輝かしい勝利をあげた。彼は現在、ボクシング、キック、大道塾で極東シベリアNO.1といわれている。一方、ズロービン選手は少年部から大道塾を習っていて一般部に上がってまもなくだが大道塾の基本をしっかり身につけている。両者は準決勝で対決した。レオノヴェツ選手はほとんど蹴りを使わずにキレのある素早いパンチのコンビネーションで攻めた、それに対してズロービン選手は相手の攻撃を流してローと左フックで返したり、攻められたら掴んでクリンチで相手のパンチを避けたりした。本戦と延長でほとんど差がなくどっちかというちズロービンのほうが的確だったが、再延長でスタミナ切れレオノヴェツに押されて判定で負けた。決勝はレオノヴェツがスタツエーンコ選手とあたって再延長で僅かなパンチの差でレオノヴェツが優勝。

中量級(−240)

中量級で7人の選手がでた。この階級で注目を引いたのはクラット選手。クラット選手は多くの大会でバランスのいい総合的な技を見せ、テクニシャンのタイプの選手だ。彼は昨年モスクワ大会で世界大会の中量級準優勝したダシャエフ選手に決勝で敗れて準優勝した。今回も決勝まで楽勝で一本勝ちで進んで決勝でバラショーフ選手とぶつかった。本戦の第1分目でクラット選手が腕十字で一本をとって見事に優勝した。表彰式でベストテクニック賞を与えられた。本人は次の世界大会にでられるように頑張るという。

軽重量級(−250)

 この階級は、人数が一番多くて10人もでた。この階級の層は一番厚くて選手の中で沿海州キック王者、極真会沿海州大会優勝、松涛館ヨ-ロッパチャンピオン、世界キック青年大会準優勝という経験のある選手がでた。ここで名前あげたのはオニプコ選手だった。彼は打撃系の選手で世界キック青年大会で2位になった実力を持つ。キレのある重いパンチに重いローキックで、全体的にいいバランスの構えをとっているから動いてもバランスが崩れない。組技あまり得意ではないようだがパンチの強さでカバーしている。準決勝でボルヂュゴフ選手と対決。ボルヂュゴフ選手は伝統派の名手、ヨロッパで色んな大会ででたことあるそうです。彼は動き素早くてまわりの空間を完全にコントロールしているが技の連続性が足りなくてオニプコ選手の確実なパンチからローのコンビネーションにまけた。オニプコ選手は決勝でシュリャ−コフ選手と拳を交わして延長で的確な右ストレート−左フックで効果をとって優勝。これから期待できる選手です

重量級(−260)

この階級で7人がでた。決勝戦はワフルーシン選手とヴェリミーツキ−選手があがった。本戦でヴェリミーツキ−選手は関節技を行って一本勝ちとなった。両者は若いからこれからもっと伸びる選手に間違いない。

超重量級(+260)

この階級は当然一番注目を引いた。8人の選手は優勝を目指した。決勝まであがったのは192cm96kgのバランヂュック選手、なんと6級だった!彼はボクシングをやって手技以外にほとんど使わないで、典型的なボクシングのテクニックで次々相手を下した。準決勝での彼の相手は17歳のポルボヤ−リノフ選手、延長で打撃で「効果」を取られて敗退したがこれから楽しみできる選手に間違いない。一方バランヂュックの決勝の相手はベテランのポポフ選手。ポポフ選手は昔から大道塾を続けていつもウラジオストクの大会で決勝で世界大会圧倒のパワーで優勝したグリゴリエフ選手と争った。今回の大会で引退すると宣言した。決勝は始まるとお客の応援でなにも聞こえなくなった。試合は再延長までいってバランヂュックは打撃で1回効果をとってマウントパンチで2回取られて、再延長でポポフが効果の差で優勝。試合が終わっても会場はしばらく落ち着かなかった。とても面白い試合になった。勝つためにはやはりボクシングの技だけでは足りないと皆に明らかに証明された。

表彰式

全体的に大会は良かったと言える。ベテランは引退しても次の世代が交代にくる。ちょうど次の世界大会まで選手として成り立つ時間があるし。ただ一つは、良い選手を養うには国際大会の経験が足りない気がする。世界大会は大道塾の人間にとって、勿論目指すトップの大会になっているが「空道」、「大道塾」の発達と共に他の国際大会、例えば、「アジア大会」、「ヨ-ロッパ大会」、が出来る事を願いたい。
技の面で今回のウラジオストクの大会と、この間行われた「北斗旗全日本大会」を比べると現在日本の選手は組み技、寝技に傾いて、ロシアの選手は打撃に傾いていると気付いた。ほとんどのロシアの選手はパンチ、蹴りで勝負をつけようとしていた。組んでも立ち技のきれいな投げは殆んどなかった。相手を力でグラウンドに持ち込んでグラウンドで一番使われた技は腕十字だった。トナーメント表を見ると関節技で一本勝ちが多いと見えるがそれは勝った人が上手かったからではなく、殆んどの場合負けた人がグラウンドに入って確実なガードの方法を知らなかったからであった。打撃をいまのレベルで保って組み技と寝技をもっと発達させるのはウラジオストク支部のこれからの課題だと思った。

オソーキン支部長。右胸のバッジは、スポーツや体育への貢献のため、ロシア連邦プーチン大統領から与えられた勲章です。大道塾の「社会体育」概念はロシアで全国的に高く評価されている。

ウラジオストク支部の事務室。右にロシア選手は国内、海外大会でもらったトロフィーです。

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