2001散打遠征 CHINESE KUNGFU KING CHALLENGE

試合結果

長谷川朋彦
3Rまでは若干優勢に試合を進めていたが、後半スタミナが切れサイドキックで顔面を蹴られポイントを失う。結果は判定負け。


北出雅人(東京散手クラブ)
ボディスラムのような形で頭から落とされたことで、反則勝ちになるはずが、試合続行不能ということで、なぜか相手選手の勝ちとなった。


渡辺正明
ローキックを的確に決め、相手のサイドキックをつかんでからローキックで倒す、などしてポイントをとり優勢に戦った。最後は相手がだしたローキックを膝受けしたところで、相手が足を痛め倒れ、試合ストップ。TKO勝ち、日本勢で唯一の勝利を掴んだ。

 

浜松新一郎
グローブ戦は初めてであったが強豪相手に互角に打ち合った。後半ローキックのポイントをとられ、判定負け。

散打遠征始末記

東孝

6月30日から4日まで中国・北京へ散打の試合に行ってきた。これはほぼ決まっている2008年北京オリンピックで採用される中国の武術、「散打」の、10月にアルメニアで開かれる第6回世界大会の日本予選の意味があった。

中国武術協会の最高責任者李傑(りけつ)氏によれば、中国全土には12,000の練習場があり300万人(!)の競技人口と600人の散打専従の選手(数字が白髪参千丈的表現としても凄い!)がいて選手引退後は国の警備関係や公安業務につくという、社会体育を標榜する大道塾にとってはなんとも羨ましくなるような環境から選ばれた選手達であるから、その身体能力はすばらしい。

日本側の選手は、渡辺正明,長谷川朋彦,浜松新一郎,それに東京散手クラブ(木本泰司代表。大道塾はそこの協力団体で日曜日には総本部の二階で練習が行われている)の北出雅人選手の合計4人。

試合は結果的に1勝3敗と負け越したが、2試合目は北出選手が反則技である頭から投げられ危なく大怪我になるところでドクターストップ。常識的に考えて無効試合か反則勝ちのケースだから1勝1敗1無効試合か、2勝2敗という所か。相手が3回戦を勝ち進んできている選手達と考えると、グローブが初めてで「グローブで殴られるってどういうもんか味わってみたいっす」という恐るべき(?)若手と、体力別から1ヶ月半しか経っていないのに受けて立ったベテラン選手達での構成で臨んだ試合としてはまずまずのところだろう。

試合については、“地元贔屓”はどこでもあることであり、それはそれで面白い緊張感があるのだが、それとは又違った、案の定とも言えるのだが、中国との歴史に根ざす重苦しさを感じた試合が根底にあった。しかし日本の新聞やテレビで読み聞く単調な観念論的なそれではなく、さすが“六千年の歴史”を持つ、黒猫(本当は黄色と今朝の新聞で知った)白猫論争もある現実的発想の国民性なんだなとも感じさせられた進行だった。それは例えば、テレビ局の要望で選手はみな白のカンフー着なのだが、なんと、日本側はそれに日の丸の鉢巻をして出てくれと、日本のLeft Wingの人達がその場にいたなら腰を抜かすようなことを平気で言ってくる。

チョットどうかなーとも思ったが、それならそれも一興(?)と生来のアバウトさで、そのままにしたが、その反響の凄さはとにかく中国選手の時の耳を劈(つんざ)かんばかりの歓声と日本側へのブーイングが同じ位と言えば分かってもらえるだろうか。

考えてみれば,このTV局も、日本やアメリカに勝るとも劣らない視聴率本位の結構派手で露骨な制作姿勢だ。あの中国がか!?とマスコミを通じてしか知識のない我々にはまさに“目から鱗”状態である。中国では今、国の全体的姿勢と民間の現実感覚とのセメギ合いが多いらしく、このような「エッ!こんなこと、そんなこと、をしてイイのかよ!?」ということが随所にあった。

それとも招待した選手だろうが何だろうが、歴史教育通りに敵役をさせようと、国側も(中国武術協会はれっきとした国の機関である)ストレートに考えてたのだろうか。それならスポーツ(運動)の世界ではそれは逆効果にしかならないことを今回は感じたのでは?終わってからの選手同士の、又、日本選手に対するに対する観客の“好意”はひしひしと肌で感じ、感動したほどである。

とは言ってもそこまで至るにはハラハラドキドキが結構あった。
初戦の長谷川選手はさながら特攻隊の顔つきで入場。(本人は自分への歓声だと思って戦ってたというのだからこれもスゴイ!)
2番手の北出選手は太極拳の型(トウロウと言う)を披露し中国選手の顔色なからしめるし(私ももいささか講談調になってる?かな ? ) なんせ選手も全員“号(ごう)”を持っているという、“水滸伝”の世界だから―ちなみに長谷川は“桜花格闘士で、中国側も特攻隊のイメ―ジを持ったのか”、北出君は“富士鉄拳”である。
3番手の“鉄手” 渡辺選手は髭も剃らずに、胸をはって堂々と入場する姿はまさしく歴史の悪夢、旧日本軍の将校そのまま!私が彼等の立場でも(特に50歳代以降なら)ここは「殺せ−」と叫ぶところだろう。完全に「空手バカ一代」の東郷ブラザースの役回りである。

4番手の“一郎拳“浜松選手(ラグビー出身の現代風なところををうまく捉えてる? )はそんな会場の反日感情丸出しの雰囲気なんか馬耳東風とブーイングに対し、両腕を回して歓声を要求するものだから…。良く無事帰って来れたものだ。それでも試合後四方に向かってお辞儀をするとそれなりの拍手が帰ってきたのは形的には、“にっくき”日本に勝ったという余裕とスポーツの世界だからだろう。

試合内容は長谷川選手が、膝の怪我で2週間ばかり練習をセーブしてたのが影響し、3ラウンドまでは五分か攻勢だったが、4,5とスタミナ切れで僅差の判定負け。「若造に負けてしまいました・・悔しいっす。次のアルメニアでは必ず」と特攻顔で意気軒昂。2試合目は冒頭でも述べた様に“変な判定”実は試合前のルールミーティングで反則の取り方に付いては、北斗旗でも度々物議をかもす点であり参考までに、選手が反則をして相手が続行不可能になった時の取り扱いについて正した所「心配ない我々は経験が豊富で(この野郎俺達は20年も先から経験してるんだ!)どんな事にも対処できる」と自信満々で議論が噛み合わなかったのだが、あっさりと相手の勝ちにされてしまった。抗議して選手の引き上げも考えたのだが、正直ここでそれをしたなら暴動になるなと感じそれは思いとどまったが正解だったと思う。3試合目は渡辺正明選手が相手の足刀(向こうでは足タンといい散打の特徴的な技となっている)を払い下段を度々決めダメージを与えた所、相手は3ラウンドで自分で蹴りながらも脛を痛めTKO勝ち。日本人選手として散打から(中国本土で)の歴史的初勝利!。4試合目は昨年、ハノイの第5回世界選手権で準優勝した藤松が苦杯を喫している強豪で2回りほど大きい選手だが浜松怯むことなく前へ前へと攻めたて一時はパンチでぐらつかせるも詰めが甘く、その内無造作にもらっていた下段が効きだし、玄人目にやっと動きが重くなったのが解るぐらいのダメージだったが、最後まで戦いこれまた僅差判定負け。それにしてもグローブ戦始めてで25試合の経験者とこの闘いは立派。試合後「極真ルールの大事さがわかりました」とは本人の弁。

その後宿舎のホテルのレストランで彼等と遭遇、閉店時間お構いなしで例によっての大道塾ワールドが朝まで展開された。試合の模様は2時間にわたって中国全土に40%という視聴率で流された。渡辺選手の時は60%とか!

又渡辺選手は勝った事により9月の試合も強く要望されているが仕事(これなら何が来ても怖くないだろう、銀行員である)との兼ね合いで未定だが、「行くとなったなら私も応援団で」という人は今後の情報に注目。その他の3選手は10月始めのアルメニアでの世界大会への出場が、体協傘下の日本武術太極拳連盟から認められている。

以上 北京での“散打VS.日本空手道”の報告まで。リポーター 大道塾世界“SHU席”師範 。

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